赤枯れマットとは

 

赤枯れマットとは赤枯れ材という褐色腐朽菌という総称の菌類によって赤褐色や暗褐色に腐朽した材を粉砕し、加水・熟成させたものです。ツヤハダ・マダラ・ネブト・マルバネなどの幼虫は野外では赤枯れ材を摂食していることが多いため、それらの種の産卵・飼育に使用します。

 

  作成方法

 

 採取

 

赤枯れ材は人工で生成することが不可能なため、野外から採取する必要があります。樹種はスダジイやイタジイといった照葉樹、ナラ科、ニレ科、カツラ科、バラ科などの広葉樹が適していますが、腐朽具合や菌種によっては使用できない場合があります。

マルバネクワガタを例にとると、照葉樹の赤枯れ材は現地ではスダジイの樹洞内のフレークを摂食しているためほとんどの場合使用できます。広葉樹の場合はツヤハダクワガタの幼虫が入った赤枯れ材であればほぼ確実に使用できるでしょう。

ちなみに私がマット作成に使用する樹種は桜です。

※赤枯れ材は多くの昆虫が住処として利用するため、採取する量は必要最小限に留めるようにしてください。また私有地に入って採取する際は必ず持ち主の許可を得てから採取してください。

 

 

・採取した桜の赤枯れ材. 

 

 

 乾燥

 

採取した赤枯れ材は大まかに砕き、天日で完全に乾燥させます。

 

 

・乾燥中の赤枯れ材.
 

 

 粉砕

 

乾燥を終えた後、材を金槌やペンチなどで細かく砕き、ミキサーにかけて粉末状にします。この作業は屋外でかつ無風の日に行うことをお勧めします。なぜなら粉末状の赤枯れ材は粒子が非常に細かく、宙に舞いやすいためです。一度屋内で作業したところ粉末状の赤枯れ材が部屋中に舞い散り、掃除が大変だったことがあります。そのほかにも粉末状の赤枯れ材がエアコンやストーブなどに入り込んで支障が出る可能性もあるため、そういった意味でも屋外で作業を行った方が良いでしょう。また、マスクを着用しないと鼻から体内に赤枯れ材が侵入するため、作業の際はマスクを着用してください。

 

 

・細かく砕いた赤枯れ材.
 

・ミキサー. 大きいものを選ぶと作業効率が上がる.

 

・ミキサーにかける前の赤枯れ材. 粉砕後は大量に粉が舞うためマスクは必須.

 

 篩掛け・加水

 

粉砕した赤枯れ材を篩にかけて微粒子にします。湿り気が多い状態だと粉砕した材が篩にこびり付いて作業効率が下がります。乾燥はしっかり行ってください。この作業も屋外でかつ無風の日に行うことをお勧めします。マスク必須です。

篩掛け終了後水分を加えて混ぜ合わせます。分量は粉末状の赤枯れ材が宙を舞わず、赤黒く変色する程度が適量です。

混ぜ終えたら赤枯れマットの完成となります。

 

・篩掛けの様子. 大きな篩だと作業効率が上がる.

 

・加水後混ぜ合わせた後.

 

 保管方法

 

完成した赤枯れマットはチャック付きの袋に入れます。コバエが侵入しないよう洗濯ネットなどに入れ、環境の変化が少ない場所で保管してください。

 

・完成した桜赤枯れ材.

 

 

  備考

 

 

以上が赤枯れマット作成の様子です。

赤枯れマットは市販品を入手するのもいいですが、量が少なく、高価です。なので手間はかかりますが自分で赤枯れ材を採取した方が充分な量を得ることができます。

ここで紹介した作成方法はあくまで私流です。

なので真似する場合は自己責任でお願いします。

 

 

  参考文献

 

・上極健介 (2021) 「マニアの(ほの暗い)穴 その五 外国産ネブトクワガタの飼育法」『BE・KUWA』34. pp. 44-49. むし社

・織部利信 (2021) 「日本産マルバネクワガタの飼育」『BE・KUWA』78. pp. 52-58. むし社