■はじめに

 

卵巣がんは大きくなるまで、なかなか見つけにくいと言われているそうで、私の場合も、時々腹痛があって、お腹が張っているのかな、便秘かなと思っていた程度で、近所のクリニックにも行ったのだし、便秘薬ももらえたし、すぐに精密検査をしなければならないとは思っていませんでした。乳がんや子宮の検診はしていましたが、まさか卵巣の病気になるなどとは、思ってもいませんでした。

 

卵巣腫瘍が見つかったひとつのきっかけになったのは、人間ドックでした。卵巣腫瘍の検査をしたというわけではありませんし、直接の関係ではないかもしれませんが、血液検査の炎症反応の数値に異常があったので、再検査のために近くの病院に定期的に通っていて、その検査の流れでCTを撮った時に、思わぬ形で卵巣腫瘍が見つかったのでした。

 

~過去の経緯

 

■「人間ドック」 (2020年8月下旬。卵巣がん手術の11か月前)

 

人間ドックでリウマチ因子の高値が続き、CRP (体内で炎症が起きている時に血液中で上昇するタンパク質) も高くなり、3ヵ月後に要検査とされたので、内科(リウマチの専門)の先生に診てもらうことになりました。この時はなにも自覚症状もなくて、元気でした。

 

■「内科を受診」 (2020年12月~)

 

再検査として内科の診察を受けましたが、自分ではリウマチや自己免疫疾患の自覚症状がなにもないので、とくに心配ごとはなく、先生も「このあとどうしようかな」というかんじでした。ただ、このまま放っておいても、次年度の人間ドックで、また数値がひっかかるかもしれないので、この先生のところで数か月ごとに血液検査を受けながら、様子をみてもらえることになりました。この時、診察を終了させずに、念のためにフォローを続けていてよかったです。後日、診察の流れで、思わぬ形で、卵巣腫瘍が見つかることになります。

 

■「突然の強い腹痛」 (2020年8月~9月)

 

一方、突然強い腹痛に見舞われることがありました。発熱はないものの、1時間ほどエビのように横になり、お腹を押さえて我慢しました。ところが1時間経つとけろりと治ります。治ったので就寝すると、寝入ったところで、真夜中に痛みで起こされます。波があるようです。腸の動きに関係しているのでしょうか。そしてお腹が張っている気がします。便秘かなと思いました。ガスが抜けて、排便があるとラクになるようです。

 

コロナ禍の巣ごもり生活で太って運動不足が原因なのかなと思いました。ぎっくり腰や肩こりもあったので、ダイエットして暴飲暴食をやめようと思いました。近所の診療所で便秘薬をもらって、聴診器を当ててもらうと、あまり腸が動いていないそうです。コロナ禍で自律神経が乱れたのかもしれないと思いました。食べ過ぎや辛い物を食べたあと、その後も、数回腹痛は繰り返しましたが、食を細くしたので、徐々に腹痛の回数は減りました。当時の日記によると、お腹の右の下に痛みを感じており、食後に腹痛が起きています。お腹の右の下の痛みはその後も続くことになります。(この痛みは卵巣がんに関係しないのか、単なる便秘なのか、わかりません)

 

■「腹痛がいったん改善する」 (2020年11月~2021年3月)

 

当時の日記によると、「あまり食べていないはずなのにお腹が張る」、「辛い料理を食べてしまってまた腹痛になった」という記述はあるものの、ダイエットが順調に進み、食べる量が減ったので、そのぶん腹痛の回数は減りました。というよりも、食べたらお腹が痛いので、自然と食べる量が細くなったのです。しばらくは気になる症状もなく過ごしました。内科の診察は継続して受診しましたが、リウマチ関連で症状は出てきません。内科の先生も、数値異常の原因がわからないと首をひねっています。

 

■「突然、足が腫れて痛い」 (2021年4月)

 

右足ふくらはぎが急に痛くなりました。ぶつけて腫れたような痛みですが、どこにもぶつけていません。見た目も普通です。歩くと大丈夫だけど立ち止まると痛い。横になると大丈夫で、立ち上がって足をおろすと短時間でも痛い。ドラッグストアで圧力のあるストッキングを購入して履くと改善しました。右足の痛さは1週間で消失しましたが、次は右足の付け根が痛い。腫れているようです。その次は右足のひざの裏が痛い。痛い場所が変わる。なんだこれは、と思いました。次は左足首の辺りが痛くなりました。そして、あいかわらずお腹も少し痛い。

 

■「足の腫れがひどくなる」 (2021年5月下旬)

 

左足が腫れて歩けないほど痛く、丸3日間外出できませんでした。痛みのレベルが上がったことと、お腹もまだ痛いことを先生に伝えました。造影CTを取ることになりました。この造影CTで大変なものが見つかります。

 

この足の痛さはなんだったのかわかりません。後日、卵巣がんの手術前検査で両足とも血栓がたくさんあることが判明しました。がん治療において血栓がみられることは、よくあることだということです。痛みを伴うこともあるということでした。

 

続く

2021年6月

 

■「造影CTの結果で、卵巣がんの疑いを告げられる」

 

内科の診察室に入ると、先生が造影CTの結果を伝え始めました。「卵巣が腫れています。表面がまだらで、腹水もあります。手術が必要になると思います。少しでも早く、ご家族と一緒に婦人科を受診してください」と言われました。卵巣!?かなりびっくりです。まったく予期していませんでした。まさか自分が婦人科系の病気になるかもしれないなんて、考えたこともありません。卵巣という単語を聞いたことに多少驚きつつ、この時点では卵巣がんについて何も知らなかったので、「卵巣を摘出することになるのかな。取れば大丈夫かしら」と思っていたため、先生の話は落ち着いて聞いていました。とにかく詳しいことは精密検査を進めてみないとわからないようでした。

 

■「いったん、婦人科では、なごやかなムードに」

 

翌日、家族と婦人科を受診しました。婦人科の先生は、CTの画像を見る限りは子宮内膜症かもしれないし、まだ詳しくわからないので、今日は家族が同席するほどではないかもよ、ということを言われたので、気持ち的にいっきにトーンダウンしました。「なんだ、まだがんと決まったわけではないんだ」と思いました。卵巣腫瘍は手術で摘出してみないと詳しくはわからないので、確定できないということを知りました。次回のMRIを予約して、帰宅しましたが、がんのことはしばらく忘れて、「がんじゃなかったのかもしれない」という気楽さのほうが大きくなりました。

 

■「いっきに深刻なムードに」

 

翌週、MRI撮像して、同日、予約した婦人科の診察に家族と行くと、血液検査の結果も出ていました。腫瘍マーカーのCA125が1000を超えていて、これは大変な数値のようでした。画像でみると両方の卵巣が腫れていて、悪性の可能性もあるとのことでした。両側性の場合は消化器系からの転移も多く、転移ならステージ3以上になるということを聞いて、ここで前回とは打って変わって、ムードが深刻になりました。とはいえ、悪性か良性か、転移があるのか、ないのか、詳しいことは、精密検査したり、手術をしないとわからないということでした。淡々と検査を進めるしかありません。

 

このあとどうするかですが、悪性だと思われる卵巣を摘出してしまうこともできるようですが、それより優先すべきは、全身を入念に調べてから治療方針を検討すべきという話になり、がんの専門の病院に紹介状を書いてもらうことになりました。この判断はすばらしく、翌日には紹介状を作っていただいて、専門の病院のほうにお世話になれることになりました。

 

ひと昔前は、がんといえば不治の病とされて、テレビの印象もあって、怖いイメージでしたが、どうやら最近は治療も進化して、痛みや吐き気にひたすら我慢して耐えるというかんじでもなさそうです。不治の病というより、いまや慢性疾患という人もいるようです。インターネットで検索すると「致死的」、「予後不良」という言葉も多くみかけましたが、よくみると情報が数年前の古いものもあるようでした。紹介状を書いてもらった先の専門の病院の最新データの5年生存率を聞いたりすると、治療成績が上がっていて、「思ったよりすぐ死ぬわけじゃないんだ」という印象に変わりました。

 
翌週すぐ、紹介先の病院で診察を受けました。その日のうちに種々の検査が手配されました。(子宮の細胞診、採血、採尿、X線、負荷心電図、肺機能、下肢超音波)。病院に到着したのは1時過ぎで、すべての検査を終了して、院外薬局で薬をもらったのが、5時過ぎというという長丁場でした。初めて足を踏み入れたがんの病院でしたが、とても良い病院です。専門だけあって流れもスムーズですし、皆さん親切で、とても丁寧でした。院内の連携が強くて、必要な検査を効率よく受けられるのもありがたいです。
 
■「血栓が見つかる」
 
下肢の超音波検査が終わって、やれやれ帰ろうと思ったら、技師さんが奥から出てきて、「婦人科の受付に戻ってください」と言われました。婦人科に戻り、診察室に呼ばれると、両方の下肢に血栓がけっこうあるということを伝えられました。最初に聞いた時は知識がないので、「ふーん」としか思いませんでしたし、それより早く手術をしてほしいなあくらいにしか思いませんでしたが、術前に血栓があるのは、よろしくないらしいです。治療方針にも影響するかもしれません。手術中に血栓が飛んで、肺やら心臓に当たったら一大事です。そこで、血液をサラサラにするお薬を処方してもらって服用することになりました(抗凝固療法)。電子カルテには「深部静脈血栓症(DVT)を認める」と書いてあるようでした。
 
2021年7月
 
■「消化器には問題なし」
 
同じ週に胃カメラと大腸内視鏡も実施しました。両方とも検査は初めてで、鎮静剤を使ったので快適でした。大腸内視鏡は鎮静剤なしでも大丈夫かなと思ったのですが、受付で聞いてみると、「半数以上の方は使われますよ」とのことだったので、お願いしました。胃や腸は問題なく、きれいでした。食事制限もあるので、連日の検査は疲れますが、体力のある比較的若いうちでよかったかもしれないと思いました(40代)。検査と結果説明に通院するだけでもなかなか大変です。最初はいろいろ勝手もわからないですし、待ち時間が長引いて、今か今かと待機しているうちに知らず知らず緊張してしまっているからかもしれません。
 
PET-CTも受けました。PET-CTの検査自体は音もうるさくないし、20分ほど横になっていると終わります。保険適用ですが、会計で表示された金額を目にしたときは、さすがなかなかの金額になるものだなと気づいて、あらためて特別な検査を受けているのだと実感しました。
 
■「手術まぎわまで検査が続く」
 
薬のおかげか、幸いにも血栓は減少傾向でした。血栓の様子を知るためのD-dimerという値も低下しました。それでもまだ残存があるので、手術で静脈フィルター(体内に留置して飛んできた血栓をキャッチする人工物)を使うかどうかを検討するために循環器の検査が追加されました。心エコー、胸部X線、血液検査を実施しました。検討の結果、静脈フィルターはそれなりにリスクもあるし、術後に回収する必要もあるので、使わない方向でということになりました。医療用弾性ストッキングの購入も教えてもらって、帰宅後ずっと履いて、足を動かしました。先生の説明がすごく丁寧で感動しました。
 
■「手術の内容は直前まではっきりわからない」
 
卵巣は、切除して、病理検査しないと、良性か悪性か、確定にならないようですし、どの範囲をどのように手術するか、なかなか即座にわかりません。複数の科の先生方が連携されていて、事前にいろいろ検討してくださって、さまざまな可能性を主治医が伝えてくださいます。そのような状況で入院日と手術日だけは確定しました。退院までは2~3週間かかるそうです。退院日は手術の内容や、術後の状況によって変わるようです。施術時間も長くなる可能性があり、家族はほぼ一日中、院内で待機していなくてはならないそうです。家族の負担も大変です。
 
入院の前日には、このご時世なので、コロナの検査を受けました。
 
続く