『龍潭寺』にいらした菩薩さま。

『ほほえみ観音菩薩』
江戸時代はじめの頃のお話です。近江の国(今の滋賀県)琵琶湖で投網をしていた漁師が湖底より次々と三体の仏像を引き上げました。それはそれは尊いお顔をした観音菩薩さまでした。びっくりした漁師はすぐに御領主である彦根のお殿さまへ差し出しました。お殿さまは傷んだ仏像を修理させ、井伊家の菩提寺に寄進されました。その一体がこの十一面観音菩薩像です。
話は戦国時代にさかのぼります。元亀二年(1571)九月、織田信長は比叡山を攻め、湖畔の寺もことごとく焼き払いました。火をつけられたお寺では、御本尊様を湖底に沈め火災より守りました。そうした仏さまのなかには、引き上げられることなく、湖底に眠ったまま江戸時代にいたった仏さまがあったのです。
この十一面観音様は、火難・水難にあいながら、奇跡的に再びこの世に出現されました。
合掌し、静かに拝顔ください。仏さまの口もとにかすかな笑みが現れてきます。モナリザの微笑を連想させる神秘的なほほ笑みです。ほほ笑みのある日暮しを大切にしたいものです。