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UWC ISAK 生活日記

UWC ISAK Japanの生徒による非公式ブログです。
「一度しかない人生。自分の個性を生かして思い切り生き、自らの立つ場所から世界を変える。(UWC ISAK Japan Webより)」

おはようございます!インド洋カジキフライ、泳いでまいりました。

 

私の育ったパダンという街はインドネシアの首都のジャカルタとは違って、やっと経済的に進んできたスマトラの地方都市です。みなさん知っての通り、インドネシアは経済成長の真っ盛りでGDPは上がりつつあるけれど、ゴミの処理は全く追いついておりません。日本であるような焼却設備もなく、生ごみも電池も一緒に出されたものをトラックで運んでゴミ集積地に積み上げている状態です。ゴミの排出量はうなぎのぼり。問題解決に何か手がかりが欲しいというわけで、夏休みパダンの実家に帰って訪れたのが、プラごみのリサイクルをはじめた団体と会ってきました。

 

その名もTrash 2 Move。若者3人で始めたこの団体はポリエチレンやポリプロピレンなどのプラスチックをおしゃれな家具や雑貨に変えてしまいます。まだスタートして1年の、試行錯誤で小さなNGOです。パダンやるな!まだ未来はあるな!と思いました。このような団体が、希望を失っていたコミュニティにもう一度希望を与え、人々の日常生活に気づきを与える役割を担っているんだなと思いました。

 

お話を聞かせてくれたのはTrash 2 Move代表、常にニコニコでまだ20代、生まれも育ちもパダンのRovanさん。州知事のオフィスで働く本業とTrash 2 Moveの仕事の他にもビデオコンテンツ作りに興味があり、周りがどうであろうと、純粋に自分のクレイティビティを発揮できるような人柄を持ち、街ではあまり見ない魅力のある人です。

 

彼は仲間とTrash 2 Move を立ち上げる中で、経験から色々なことを学んでいて、話していてとても面白かったです。

 

彼らと出会って、おかしな表現の仕方だと思いますが、本当にホッとしました。パダンのサステイナビリティに問題意識を持っているのは自分一人じゃないと分かったからです。

 

私がISAKにいたこの1年の間に私の実家(今は両親と1番下の小学生の弟の3人家族➕犬2匹)から出たプラごみの量にびっくり。これが生ごみも加わってゴミ集積所に積み上げられて自然界に出ていくのかと思うとさすがに心臓が震えます。人口95万人のパダンでは大変な量です。これらのプラごみが環境に最低限の負荷で処理できる場所や団体はないかと探すと、パダンというのは小さい町ですので、インスタで彼らのアカウントを発見!

 

うちのごみの量は次の通り!ペットボトルはゴミ銀行に出しましたのでここには入っていません。(ゴミ銀行についてはまたいつか)

使い終わったら捨てられるプラスチックたち

 

(中にはドッグフードの袋、果物についてきた容器、他にもクッキーが入っていたトレイ、スムージーの容器、ストロー、パッケージに入っていた気泡緩衝材、ティッシュの袋、アイスクリームの容器、洗剤の入れ物など、使い捨てプラスチックがたくさんありました)

 

メンバーの動機になったのが、パダンはインドネシアの他の街と比べても美しい自然を持ち、ユニークな民族カルチャーもあり、インドネシア中で有名なパダン料理の本拠地でもあり、と観光資源は豊富なのに、観光客があまり来ない!という問題です。西洋人が作った近くの離島リゾートでは一週間に15万円以上消費する観光客も来るのに、僕らの街にはどうしてやってこないのか。

 

家の近くから見られるパダン独特の夕日

 

問題はゴミです。

 

確かに、ビーチに行っても、川に行っても、山奥でも、残念ながらこの街ではどこにでもゴミが散らかっています。それでも自分達の育った街をもっとたくさんの人々に楽しんでもらえたら素敵だなと思い、悔しさと願望がきっかけでこの運動を始めたそうです。

 

彼らはペットボトルのキャップやシャンプーのボトルなどを家庭やビーチから集めて色ごとに粉砕しカラーチップを作ります。そしてポップなカラーのコンビネーションでいくつかの色のチップを混ぜてオーブンで溶かし、固めて板状にして、適切な大きさにカットして、テーブルや椅子、時計などの雑貨を作っていました。

 

 

なんと言ってもすごいのは、彼らは物質的には日本ほど満たされているわけではないのに、早くも地球のために人間の活動の無駄を省こうとしているところです。これからインドネシアの経済成長がもっと進んで人々の購買力が高くなり、日本人のように不必要な商品を買い始める前に、サステイナビリティの概念を理解して今世界中で起きているような地球に負荷のかかる無駄な生産、無駄な消費という社会活動を予防しようというわけです。

 

今は1日に100 kgのプラごみを溶かして商品にしています。私がお邪魔した日は市長さんや市長夫人をお迎えして、活動を説明し、今の生産量を10倍の1トン/日に増やすべく行政援助の相談をしたのだそうです。

 

ペットボトルのキャップを溶かして作った椅子

 

地元の高校生も興味を持って訪問してくれるそうですが、やはり問題は、あるコミュニティの中で「誰が一番に始めるのか」ということでした。

 

Rovanさんは、“Memang harus ada yang berkorban di awalnya”「いつでも新しいことを始めるには誰かが’犠牲’にならなくちゃいけないんだ。」と笑いながら言っていました。試行錯誤の連続だったからです。でも重要なのは、おなじ目標がある仲間となら全然大丈夫ということ。Rovanさんも仲間と一緒にスタートして、このように試行錯誤を重ねて成功しているわけですから。彼の話を聞くと、本当のチェンジメーカーを見つけたとしか思えません。

 

2時間語ったRovanさん

 

彼はこう忠告します「ゴミ問題は他のいろんな問題に絡んでいるんだ。例えば街の経済、人々の健康、教育のように広く繋がっている。けれど政府や人々は豊かになることにしか興味がなく、ゴミ問題はいつでも見逃されている。」

 

Rovanさんの理想は、パダンが他の街と観光客の取り合いになるくらいきれいな街になることですが、その目的を通してコミュニティが繋がり、積極的に問題解決に目を向けた街になっていくことでもあります。

 

「運動を進める中で僕が学んだのは、人々は環境問題に対して興味は一切無いない人がいても、商品にしてお金を得ることができると聞くと、非常にモチベが高くなるということ。」笑っちゃうけれど、確かにインドネシア人ってそんなだったなと思い出しました。ビジネス化することで経済的に人々を動かし、助け、また私が最近興味を持っている貧困問題の解決の道の一つにもなる、と大きな気づきになりました。そこでRovanさんがサステイナブルビジネスを行う中で大事にすることは、”Kita harus melakukan pendekatan bukan secara ekonomis, namun dengan cara humanis.” 「経済的なアプローチではなく、いつでも人間的なアプローチを」ということです。なるほど、これが本物のソーシャルインパクトか、と思いました。

 

彼らがこのような新しいムーブメントを進める中では困難もありますし、行政も簡単には手を差し伸べてくれません。しかし、助け合える仲間もいるし、試してみるべきものも山ほどあることはRovanさんの目の中にはっきり映っているようでした。Trash 2 Move、これからもよろしくお願いします!

 

彼らのインスタチェックしたい人、どうぞ:@trash2move_

今回も読んでくれてありがとう!Terima kasih!!

 

インド洋カジキフライ