記憶にない暴飲暴食は続いていたが、おかしな出来事はそれだけではなかった。


LINEを開くと、やり取りした覚えのない友人の女の子の名前がでてきた。

トーク画面を開く。


なんだ?これ?俺、告白してるじゃんか。

ただの友だち…全く異性として意識したことのない女の子。

慌てて、酔っていたと謝りのメッセージを入れると、やっぱり〜?と笑って許してくれた。


おかしなLINEは他にもあった。

知らない名前がある。

トーク履歴を見ると明らかに友だちのようだけど、いつ友だちになったんだ?

10歳以上年上の人、同年代、年下、男性も女性もいる。

俺ってこんなに社交的だっけ?

どんな人か興味が湧き、あってみることにした。

年上の人に会ってみた。いい人だ。

同年代にはない会話の幅。

俺の出身地や住んでいる町、仕事内容も知っている。

きっと前に会った時に話したんだろうな…

なんだか映画でも見ている気分で、初対面のおじさんと会話を楽しんだ。


仲良くなったきっかけを聞きたい。

でも、なんて聞けばいいんだろ…

そう考えていると、偶然相手が話しだした。

「そういえば、初めて会ったあのお店も美味しかったよな。あんな店で1人で飲んでるから俺が話しかけてさ。」

「あー。あの店なんていう店でしたっけ?」

店の名前は聞き出したが、やっぱりそんな店知らない。

馴染みのある街でもない。

そんな場所の聞いたこともない店で1人で飲んでたのか。

ホントに俺、いったいどうなってるんだ?

記憶喪失ではなく、もう1人の俺がいるのかな…

そう思い始めた。


混乱しつつも、そのおじさんとの食事は楽しかった。

美味しい食事とお酒をご馳走にもなった。

もう1人の俺、人を見る目はあるんじゃね?

そう思って笑うことしかできなかった。