【後半勝負の明暗くっきり!!城福トーキョー、タレント力の差を見せ付けられ、完敗を喫す!!】


 J1第8節、アウェーのG大阪戦を三日後に控えた4月21日、小平グランドには、元気に全体練習に復帰した「東京の10番」梶山陽平の姿があった。膝の痛みからようやく復帰のメドが立ち、G大阪戦でベンチ入りする事が決まったのだ。

 この所、単調な攻撃に終始し勝ちだったチームにとって、タメを作って攻撃に変化をつける梶山の復帰は、攻撃力のアップもたらしてくれるものと期待された。これはまた、東京が依然として「梶山頼み」である事を示しているのだが、この際そんな事を言ってはいられないだろう。


 ただ、G大阪側もこの試合でルーカス、そして遠藤というチームの大黒柱が復帰して来る。果して、梶山と遠藤・ルーカスのどちらがチームに勢いをもたらすか?その点が、この試合の大きなポイントと言えた。

 試合に臨む東京の布陣は4-4-2。顔触れは後ろからGK権田、長友・森重・今野・金の4バック、羽生・徳永の2ボランチ、石川・中村の両サイド、平山・リカルジーニョの2トップである。


 キックオフ後、東京はいつも通り、前線から厳しくプレッシャーをかけて行く。そうしてG大阪のDFラインからFWやボランチに入るクサビのボールをカットして攻勢に転じ、3-4-1-2の布陣を採るG大阪の3バックの両サイドを突くと、ゴール前にクロスを上げる。だが、ゴール前に飛び込む人数が少なく、人数をかけてゴール前を固めるG大阪を崩し切れない。


 一方、東京の守備の前になかなか思う様にボールがつなげず、リズムが作れなかったG大阪だったが、前半終了間際から徐々にG大阪らしいパスワークが見られる様になる。

 だが、それも決め手とはならず、そのまま双方とも突破口を見出せないまま前半は0-0で終わった。



 盛り上がりを欠いた前半だったが、現地のファン・サポーターは誰も不満には思わなかっただろう。なぜなら、この試合での前半はあくまで「序章」でしかないからだ。そう、両チームが主力を注ぎ込む後半こそ、いよいよ勝負所となる!!


 その勝負所で、西野監督が早速動いて来た。後半頭からルーカス、遠藤をピッチに送り込んだのである。

 そして、この二人がボールに絡み始めた瞬間、G大阪は変わった。ポゼッション率が一気に跳ね上がり、本来のG大阪の姿に戻ったのだ。


 それに対し、東京は中盤での積極的な守備からカウンターを狙う。そして50分、決定的な場面が訪れた。徳永が自陣でのパスカットからドリブルで攻め上がり、縦にボールを出す。それに呼応して右サイドの裏へ抜け出した石川は一気に加速し、ゴール前に絶妙のクロスを送った。そこへリカルジーニョが飛び込む。が、ここで何を思ったのか、リカルジーニョは難易度の高いヒールシュートを狙い、空振りしてしまう。目の前で展開された思いもよらない光景に、東京陣営は一様に唖然とした表情を浮かべた。ここが、この試合のターニングポイントとなった。以後、東京に勝機は訪れなかったのである。


 ボールを支配して優位に立ったG大阪に対し、東京はちぐはぐな攻撃を繰り返し、ペースを奪い返す事が出来ない。そんな中、59分にようやく城福監督は梶山をピッチに送り出した。西野監督の選手交代に比べて遅い様に感じられるが、梶山のコンディションを考慮したギリギリのタイミングなのだろう。しかし、後から振り返れば、時既に遅かった感がある。61分に敵陣右サイドで同じく途中交代で入った重松、そして石川等との連携からゴール前に飛び出してシュートを打つなど「らしさ」は見せたが、流れを引き戻すには至らなかった。


 逆に、G大阪はその直後の66分、遠藤が落としたボールを二川がサイドチェンジで左サイドに展開。そのボールを受けたルーカスは、一人かわしてブレ球のミドルシュートを放つ。そしてこのシュートは、キャッチしようとした権田の腕をはじき、ゴールイン。G大阪が遂に均衡を破った。


 その後、東京は71分に鈴木を投入して同点ゴールを狙ったが、またもその直後に宇佐美にJ初ゴールを許してしまい、万事休した。ファイナルスコアは0-2。両チームが共に企図した後半勝負は、G大阪に軍配が上がったのであった。



                               


 城福監督の試合後のコメントにもある通り、前半の東京はほぼゲームプラン通りに試合を進める事が出来た。だが後半、ルーカスと遠藤の登場によって、ゲームプランはもろくも崩れてしまった。これはやはり、「役者の違い」としか言いようがないであろう。東京も切り札である梶山・重松を投入したが、アジアを制覇し、マンチェスターUと白熱の激戦を展開したG大阪の二人とは格が違った。若手、特にユース出身の生え抜き選手が軒並み伸び悩んでいるのは、東京が長年抱え続ける大きな問題である。本気で日本人若手選手主体のチーム構成で覇権を目指すのであれば、この点を何とかしなければならないであろう。その点が解決されなければ、クラブサポートメンバーをたくさん集めて多額のお金を下部組織に提供しても、何の意味もなくなってしまう。


 得点力不足も深刻さを増すばかりだ。特にこの試合では、クロスが上がった時のゴール前の人数の少なさが目についた。まずは、日頃の練習から、GKとCBコンビ以外の全ての選手が点に絡む意識を持ち、ゴールのイメージを持つ必要があるだろう。ただ、梶山の復帰は大きなプラス材料であり、今後梶山がコンディションを上げて行くに従い、攻撃面はある程度好転して行くだろう。

 もう一点、G大阪が3バックという事もあってか、この試合では石川がサイドに切り込んでクロスを上げるシーンが多かった。今季、得点力不足の原因で最も大きなものは、石川が第8節を終了した時点で依然としてノーゴールだという事である。本人の不調による所もあるだろうが、石川の使い方にも問題があるのではないか。不調とは言え、チームで最もゴールが期待出来る選手なのだから、サイドでのチャンスメイクよりもゴール前に顔を出させてシュートを打たせるべきだと思う。

 もちろん、石川自身も、今の成績に責任を感じるべきだろう。そして、決定的なシュートを外してしまったリカルジーニョもまた、自分にゴールが期待されている事を強く認識する必要がある。



 深刻なゴール欠乏症に陥ってしまった城福トーキョー。次の相手は、J屈指の智謀を誇る「謀将」ペトロヴィッチ監督率いるサンフレッチェ広島である。今や「西国の雄」と言える程にまで強くなった広島は、東京からすれば実力において優位に立つ厳しい相手と言える。

 しかし、それなればこそ東京の戦いぶりに注目したい。なぜなら、シーズン前に掲げた目標である「上位越え」こそ、今現在の深刻な不振を脱する最高のモチベーションになるだろうからだ。

【「専守防衛」京都にまたも苦しめられた城福トーキョー!!「新星」重松、殊勲のPKで敗戦の危機を救う!!】(承前)


 キックオフ後、東京は前線からしっかりプレスをかけ、ボールを奪うとシンプルに平山、リカルジーニョの2トップに長いボールを入れる、或いは京都DFラインの裏へボールを入れて行き、京都を押し込んで行く。攻めのバリエーションが少ない京都は防戦を強いられた。


 しかし、試合は思いがけない展開を見せた。11分、京都は敵陣右サイドでスローインを得ると、これを柳沢が受けて落とし、そのボールを西野が拾って前線に飛び出し、ゴール前に折り返す。すると、ニアサイドに中山が飛び込んでシュートを打つ。これが森重に当たってファーサイドに流れ、フリーの角田の下へ渡ってしまう。角田は「頂き!」とばかりにシュートを打つと、ボールは身体を張った権田の下をかいくぐってゴールイン!劣勢だった京都が先制に成功した。


 こうなれば、京都は自陣に引き籠って貝になってしまう。東京としては、避けたかった展開だ。それでも、こうなってしまえばやむを得ない。FWへのクサビから両サイドへの展開を狙って行く。が、京都の中盤での激しいプレッシャーやゴール前に人数をかける守備の前になかなか突破口を開けない。何度かあったセットプレーもうまく行かず、東京はどうにも手詰まりになってしまった。その中で26分、徳永とのワン・ツーから森重がドリブルで攻め上がって京都DF陣と競り合い、そのこぼれ球を松下が拾ってゴール前の石川につなぐと石川はすかさずシュートを打つ!しかし、GK正面を突いてCKになってしまった。前半の東京のチャンスらしいチャンスはこの一回だけで、この後東京は前半終了まで苦しみ続けた。


 逆に京都は落ち着いて試合をコントロールし、守備からピッチをワイドに使っての速攻狙いで東京を苦しめ続けた。また、随所で露骨な時間稼ぎを行い、焦る東京を翻弄した。


 そのまま、京都の思惑通り前半は0-1で終了。冷たい風に耐えながら声援を送っていた東京ゴール裏サポーターは終了と同時に怒りを爆発させ、大ブーイングと「シュート打て!」コールをチームに浴びせた。



 後半が始まると、ハーフタイムに気合を入れ直した東京が攻勢に出る。51分にリカルジーニョのクロスのこぼれを、そして松下のクロスのこぼれを拾った石川が立て続けにシュートを打つ。が、ゴールネットを揺らすには至らない。東京は後半頭から松下と長友を入れ替え、京都にサイドからの圧力を増して行くが、もう一つ功を奏さない。


 こうなれば、後は選手交代で勢いを増すよりない。そして、東京ゴール裏の声援を一身に受けて、まずリカルジーニョに代わって重松が登場。労を惜しまぬ走りで京都にプレッシャーをかける。更に城福監督は63分に中村、69分に赤嶺を投入。前線にフレッシュな選手を入れて京都DF陣にプレッシャーをかけ続けた。


 そして、この采配が功を奏したのが28分の事だった。東京は敵陣右サイドでスローインを得ると、スローインをのボールを裏に抜けた赤嶺が受け、ゴール前に折り返す。これは郭がカットしてクリアしたが、これが味方に当たり、クリアミスになってしまう。PA内にこぼれ落ちたそのボールを、重松は見逃さなかった。すかさず拾うとゴールの方を向く。これを見て慌てた水元は重松を倒してしまい、ファールの判定を受ける。こうして、東京はPKを得、遂に同点に追い付くチャンスを掴んだのだった。

 このPKを蹴るべくペナルティスポットに向かったのは、何と重松だった!重松はルーキーらしからぬ落ち着きでボールを蹴り、東京に貴重な1点をもたらした!


 同点に追い付いた事で、東京に勢いが戻った。まだ時間は十分あるだけに、東京陣営は逆転勝ちに向かって勢い付いた。そして、74分の赤嶺のヘッド、77分の中村のFKと、次々にチャンスを作って行く。だが、どうしても京都ゴールを割る事が出来ない。京都もカウンターで反撃するものの単発に終わり、双方決め手を欠いたまま時間は過ぎて行った。

 結果、試合は1-1のままドロー決着となったのである。



 前節、鹿島戦、ナビスコ大宮戦と手応えを感じられる試合を展開した余勢を駆って、下位に沈む京都を叩きたかった東京だったが、結果はドロー。今季、東京を悩ます「得点力不足」は、深刻さを増すばかりである。ただ、京都は2節で鹿島の猛攻を耐え凌ぎ、ドローに持ち込んだだけに、東京が勝てなかったからといって「不甲斐ない」とまでは言い切れない。しかし、やはり京都に苦戦している様では「優勝」は遠いだろう。とにかく攻撃のバリエーションが少なく、リズムも単調なのを何とかしなければならない所だ。その意味で、独特のリズムをスタイルを持つリカルジーニョに期待が集まったが、京都が引いてスペースを消した事もあって、力を発揮出来なかった。

 それに対し、重松は再び評価を上げる事に成功した。労を惜しまぬ走りでチームを勢い付けた上、積極的にゴールを狙い、遂には貴重な同点PKを決めてチーム最多得点に並んだ。思う様に点が取れていないものの、重松に対する期待は依然として大きい。まずは、スタメン復帰を目指して頑張って欲しい所だ。


 積極采配が功を奏して引き訳には持ち込めたものの、「得点力不足解消」の決め手は見つからない。そんな風に行き詰った城福トーキョーに、遂に「あの男」が戻って来た!!

【リカルジーニョ、待望の東京初ゴール炸裂!!数的不利を跳ね返した城福トーキョー、ナビスコカップ初勝利!!】


 鹿島戦から中三日置いて、東京は大宮アルディージャとナビスコカップ予選リーグ第2節を戦うべくNACK5スタジアムに乗り込んだ。主力不在のチームにとっては厳しい過密日程ではあるものの、アウェー大宮戦は現在公式戦6連勝中と抜群の好相性を誇るだけに、東京の勝利が期待された。

 そしてこの試合、東京は主力の大半を休ませ、実質「Bチーム」と、言っていい陣容で臨んだ。そのメンバーは、後ろからGK塩田、椋原・森重・今野・金英権の4バック、田邉・松下の2ボランチ、中村・鈴木の両サイド、赤嶺・リカルジーニョの2トップである。何と言っても注目は、昨年7月のナビスコ名古屋戦以来のJ1との対戦となるGK塩田だ。今季はキャンプから順調に調整を進め、いつチャンスが来てもいい状態に仕上がっていただけに、プレーぶりが期待された。


 キックオフ後、双方とも厳しい守備から速攻を狙い合う、激しい攻防が展開される。が、サブメンバー主体の東京はなかなか連携がうまく行かず、リーグ戦の雪辱を狙う大宮に押される展開が続いた。


 が、32分に大宮ゴール前でこぼれ球を拾ってリカルジーニョがシュートを打った辺りから、東京が反撃を見せる様になる。そして39分、敵陣右サイドの深い所で鈴木のパスに反応し、裏へ抜け出したリカルジーニョがDFをかわして一気に大宮ゴール前に突進。立ちはだかるGKを嘲笑うかの様なループシュートを放つと、これが見事にゴールネットを揺らし、東京に貴重な先制点をもたらした。


 これでリズムに乗ったのか、リカルジーニョは勢い付いてプレーも切れ味を増し、44分には右サイドから一気に中央に切り込み、強烈なシュートを放つ。が、これは惜しくもポストに嫌われてしまった。

 その後も東京は押し気味に試合を進め、1-0のままいいムードで前半を終え、後半に臨んだ。



 後半が始まると、前半の流れのまま東京が優位に試合を進める。が、55分、思いがけないアクシデントが東京を襲った。中盤の競り合いから大宮MF内田にDFラインの裏へスルーパスを出されると、これに反応して飛び出した石原を椋原が後ろから追いかけてPAで倒してしまい、レッドカードをもらって退場処分を受けてしまったのだ!

 椋原がピッチを去ると、東京PAのPKスポットにマトが立った。東京ゴール裏は、大「シオタ」コールを送る。やがて主審の笛が鳴ると、スタジアム内は一瞬静寂になった。その中、マトはPKを蹴る!ボールは、必死に伸ばされた塩田の手をかすめると、左ポストを直撃、そのままゴールマウスを逸れて行った!!すかさず、両チームが動き出すが、ここは東京イレブンがいち早くボールをクリアし、CKに逃れた。このCKからの攻撃も凌ぎ、東京は最大のピンチを脱したのだった!


 これを見た城福監督は、すぐに動いた。田邉、中村に代えて徳永、長友を投入、守りを固めて逃げ切る手に出たのだ。

 それに対し、数的優位に立った大宮だったが、「縦に早く」という攻撃を身上とするだけに、引かれてスペースを消されるとたちまち手詰まりとなってしまった。

 更に東京は、前半ロスタイムに足の付け根を痛めたリカルジーニョを下げて羽生を投入、中盤の運動量を増やして大宮の攻撃を封じにかかった。本来の先発メンバーを続々と注ぎ込む城福監督の采配に、平日のアウェー戦にもかかわらず超満員となった東京ゴール裏も沸き返り、10人で必死に戦うチームに熱い声援を送った。

 大宮も選手交代で状況を打開しようとしたが、東京の集中した守りを崩せない。


 結局、1-0のままゲームは終り、東京はナビスコカップ予選リーグ初勝利を飾ると共に、対大宮アウェー公式戦の連勝を7に伸ばしたのだった。



 気迫を全面に押し出して激しくぶつかって来た大宮相手に苦しい試合を強いられ、後半には数的不利な状況にも追い込まれたが、先制点がモノを言って何とか逃げ切る事が出来た。

 新戦力についてだが、殊勲のゴールを挙げたリカルジーニョは、公式戦初スタメンのチャンスにきっちり結果を出してみせた。来日初ゴールに気をよくしたのか、この試合では本来のテクニックを発揮してくれた。まだ、周囲もどう活かせばいいかはっきり把握するまで至っていない様にも見受けられるが、これは時間をかける以外にない。

 同じく、今季初スタメンとなった田邉のボランチは、「可もなく不可もなし」と、言った所だろうか。今後、ものになるかどうかについては、まだ何とも言えないと思う。ただ、ここ数年東京のアキレス腱となっている「梶山頼み」脱却へ向けての解答の一つであるだけに、何とか可能性を追求して欲しく思う所だ。

 そして、新戦力とは言えないが、これまた今季初スタメンとなった塩田については、何も言う事はないだろう。実戦勘はまだ十分とはいえないものの、クロスへの対応など「らしさ」は十分に見せてくれた。今季、権田が時折り不安定なパフォーマンスを見せるだけに、ポジション奪回のチャンスは十分にあると言えよう。今季タイトルを狙う上で、塩田の存在は心強い限りである。この試合の最大の収穫ではないだろうか。



【「専守防衛」京都にまたも苦しめられた城福トーキョー!!「新星」重松、殊勲のPKで敗戦の危機を救う!!】


ナビスコ予選から中二日置いた417日、城福トーキョーはホーム・味の素スタジアムで京都戦に臨んだ。ミッドウィークのナビスコ予選において、石川、平山等主力を温存出来た事もあり、チームのコンディションは決して悪くない。下位に沈む京都相手にホームで何としても勝ち点3を手に入れたい所である。

 しかし、京都はここ最近勝利を挙げていない嫌な相手である。「堅守速攻」に徹するチームで東京にとってやり難い相手である上、なぜか決まって東京の状態がよくない時に当たる為であろうか。今回もまた、東京の調子が今一つ上がらない所での対戦となった。


 東京の布陣は4-4-2。後ろからGK権田、長友・森重・今野・金の4バック、羽生・徳永の2ボランチ、石川・松下の両サイド、平山・リカルジーニョの2トップという顔触れである。(この項続く)

【重松、キム等新戦力を抜擢した城福トーキョー!!王者鹿島に挑む!!】


 J1第6節、城福トーキョーは川崎戦に続き、上位チームとの対戦に臨んだ。今度の相手は前人未到のJ1三連覇を達成した「王者」鹿島アントラーズである。

 川崎戦に敗れ、攻守両面に渡る上位クラブとの実力差を突き付けられた城福トーキョーは、鹿島戦で上位の壁を打ち破るべく、異例の二日間に渡る非公開練習を行った。この非公開練習では、鹿島対策はもちろん、チームの課題の修正も徹底的に行われた事だろう。そうして、城福トーキョーは以下の様なメンバーで鹿島戦に臨んだのである。

 後ろからGK権田、長友・森重・今野・金英権の4バック(以下右から)、徳永。羽生の2ボランチ、石川・松下の両サイド、平山・重松の2トップ。

 川崎戦では無得点に終わったものの、勢いを買われたのか、重松が待望のスタメン入りを果たした。また、順調に出場時間を伸ばしていた金もリーグ戦初のスタメン入りを果たした。これは、やはり内田対策だろうか!


 こうして始まった試合は、すぐに動いた。ロングボールを多用し、キックオフ直後からアグレッシブに鹿島を押し込んで行った東京は、2分に右CKからの鹿島ゴール前での混戦でPKを得る。これを平山が決め、東京は早い時間帯に先制に成功した。

 鹿島は猛然と反撃に出る。7分から10分の間に立て続けにCKを得ると、何度も東京陣営をヒヤリとさせる場面を作る。

 ここを凌いだ東京も、負けじと反撃に出る。11分に重松が敵陣でFKを得ると、そこからボールを回し、金がロングシュートを放つ。14分には得意の左足でゴール前にクロスを上げるなど、この日の金は積極的な攻め上がりを見せた。


 東京は前線からのプレッシングで鹿島の攻勢を抑え、押し気味に試合を進める。重松は精力的に前線からボールを追うと共に、平山がロングボールを競ると、常に裏を狙って行った。だが、平山が再三のチャンスを逃し、東京は追加点が奪えない。

 すると、鹿島は左SB新井場が高い位置取りをし始め、そこを活かしてチャンスを作る様になる。そして39分、鹿島が敵陣左サイドでボールを回すと、中央で小笠原がフリーになる。そこでボールを受けると、小笠原はすかさずミドルシュート!これは権田が何とかセーブしたが、こぼれ球にいち早く反応した興梠がシュートを決め、東京は同点に追い付かれてしまった。


 こうして、試合は1-1で折り返した。



 後半、なかなかピッチに姿を現さず、東京イレブンを焦らした鹿島は逆転を狙って東京ゴールを狙う。当然、東京も反撃し、48分に鹿島DFがクリアしたボールを徳永が拾い、羽生がそれを受けると、すかさず右サイドに展開。このボールに反応し、飛び出した石川はボールを拾うと、ゴール前にクロスを送る。これを鹿島GK曽ヶ端が手ではじくと、ボールはファーサイドにいた重松の下へ。重松はボールを拾うと狙いすましたシュートを打ったが、惜しくも枠を外してしまう。これが、重松のこの試合唯一のシュートとなった。


 やがて、両チームは勝ち越しを狙い、選手交代を行う。オリヴェイラ監督がフェリペ・ガブリエルを送り込めば、城福監督はリカルジーニョを送り出す。そして、ガブリエルは64分に興梠の落としを受けてシュートを放ち、リカルジーニョは平山が落としたボールを拾い、羽生→長友とつないだ後に右サイドで再びボールを受けると、裏へ絶妙なスルーパスを送る。これに抜け出した長友がゴール前にクロスを送るが、DFに阻まれて石川はシュートを打てなかった。


 やがて、両チームは勝ち越しを狙い、選手交代を行う。オリヴェイラ監督がフェリペ・ガブリエルを送り込めば、城福監督はリカルジーニョを送り出す。そして、ガブリエルは64分に興梠の落としを受けてシュートを放ち、リカルジーニョは平山が落としたボールを拾い、羽生→長友とつないだ後に右サイドで再びボールを受けると、裏へ絶妙なスルーパスを送る。これに抜け出した長友がゴール前にクロスを送るが、DFに阻まれて石川はシュートを打てなかった。


 その後も、両チームはアップテンポの激しい攻防を展開したが、共に決め手を欠き、1-1のままタイムアップの笛を聞いた。



 ドローとは言え、双方共に持てる力を出し切ったいい試合であり、東京の戦いぶりを称える声も多かった。だが、それではこれまでと何一つ変わらない。鹿島はこの日、大黒柱のマルキーニョスが出場停止でおらず、攻守両面で迫力を欠いていた。まさしく、今回の鹿島戦は東京にとって、勝ち点3を拾うチャンスであったのだ。この様なチャンスにきっちり勝ち点3を奪えたならば、「東京は成長した」と、いう評価を得られただけでなく、サポーターに期待感を持たせ、盛り上げる事が出来ただろう。

 しかし、今の東京には何ら「成長」が感じられなかった。ただ、それは多分に「主力の故障・不調」や「新メンバーの連携の未成熟」など、チーム状態の悪さから来ている所が大きい。なので、一概に「東京は成長していない」とは言い切れないのが難しい所だ。


 さて、チームの成長を促す要素として期待される新戦力だが、この試合では各々明暗を分けた形となった。サポーターの期待を一身に受けてスタメンに名を連ねた重松は、川崎戦に続いてのノーゴールに加え、打ったシュートも一本きりと、またも期待に応えられなかった。ただ、前線からのプレスや平山が競ったボールに対して常に裏を狙い続けるなどして相手にきっちりプレッシャーをかけ、チームのゲームプラン遂行に貢献した。肝心の攻撃面では期待に応えられなかったが、出場を続けて周囲との連係を改善して行けばよくなるものと思われる。

 それに対し、金英権は守備面だけでなく、攻め上がって得意の左足からいいクロスを上げたり、チーム最多タイとなる3本のシュートを打つなど、まずまずのプレーを見せた。フィジカルも強く、今後が期待される。また、途中出場のリカルジーニョはまだ周囲との連携が噛み合わず、やや空回りする面もあった。が、それが鹿島をも混乱させ、終盤に東京が鹿島を押し返す要因となった。技術はそれなりにあり、使いようによっては十分力となるだけに、いかに起用して行くかがポイントとなろう。この辺り、城福監督の腕の見せ所と言えそうだ。

                           


 川崎の勝因は、何と言っても鄭大世、稲本に尽きるだろう。鄭大世の活躍により、川崎は常にリードを保って得意のカウンター狙いに徹する事が出来た。そして、選手交代で反撃を計った東京を、稲本が中盤を制して抑え込んだのだ。こうした試合を決定づけられる「個」の力は東京にはないものだった。


 逆に東京は、卓越した「個」を打ち破る術もなければ、川崎の卓越した「個」の存在に対抗出来る「個」の力も持ち合わせなかった。

 前半はいい形で攻め、何度となくチャンスを作ったが、後半に川崎がバイタルエリアをしっかりケアし、稲本が中央に入ったクサビのボールをどしどし潰す様になってからは、なかなか攻撃の形を作れなくなり、川崎のカウンターを雨あられと浴びる事態を招いてしまった。東京としては、ここで攻撃に変化をつけたかった所なのだが、重松、大竹はそうした起用の意図に十分応え切れず、中央を固めてカウンターを狙う川崎を崩し切れなかった。結果、ロスタイムに1点を返すのがやっとという体たらくであった訳だ。

 この辺については、やはり梶山の不在が堪えていると言えようか。


 また、迫力ある攻めを仕掛け、数少ないチャンスを高い確率でものにした鄭大世に対し、東京のアタッカー陣はチャンスをものに出来なかった。これは鄭大世に対する、石川、平山、鈴木、中村、羽生、大竹、そして重松等の敗北である。

 重松にとっては、W杯に出るアジアの代表クラスのFWがどれだけのものであり、リーグで常に優勝を争うチームの守備がどれだけのものであるかを知る、いい機会になった事だろう。確かに、この試合ではゴールを狙うのはもちろん、前線でボールを引き出したり、前線や中盤でボールを受けて起点となる、或いはキープしてタメを作るなど、FWとしては十分な働きをしてくれた。ロスタイムの得点も、大宮戦同様平山の裏に潜み、平山が競ったボールを拾って重松が打ったシュートが起点となったものだった。「ユースからあがったばかりの若手にしては、競合川崎相手に善戦した」と、いう見方もあるだろう。

 だが、今回の「多摩川クラシコ」の様な大舞台で結果を残せない様では、重松の将来は明るいとは言えないだろう。ピッチに立つ以上、「ルーキーだから」と、いうのも関係ない。現に、昨季米本はルーキーながらスタメンで出続け、東京に5年ぶりのタイトルをもたらした原動力の一人となったのだ。石川がまだ昨季の得点感覚を取り戻せないでいる今、重松にかかる期待は大きく、その責任はますます重さを増している。城福監督が試合後に言った通り、重松はそうした自己の立場や自分に対する周囲の期待などを十分弁えてピッチに立つ必要があるだろう。次の鹿島戦、決死の覚悟を持って試合に臨み、点を取ってチームを勝利に導いて欲しく思う。



 「東京有利」の予想の下、昨季2敗した分のリベンジを期して多摩川を越えた東京の選手・スタッフ・サポーター。が、そこで目にしたものは、常に優勝を争うチーム―川崎フロンターレ―との圧倒的な戦力差であった。今後、梶山が戻る、或いは松下やリカルジーニョ等がチームになじんで力を発揮出来る様になればまた変わって来るだろうが、少なくとも現状の東京では、優勝を狙うには質量共に戦力不足である様に思える。

 その様な所へ持って来て、この川崎戦で今野が負傷。「左足側底筋挫傷」で全治1~2週間と診断された。次節鹿島戦には出場が難しい。現状で、決して調子が万全とは言えない鹿島相手に果してどれだけやれるか?――次節もまた、「多摩川クラシコ」に続き、東京の真価が問われる試合になるだろう。


 先日、「W杯ベスト4」という目標を掲げておきながら、Bチームといっていいセルビアに惨敗し、罵声とブーイングを浴びた岡田ジャパン。その姿は、もしかしたら明日の城福トーキョーの姿であるのかも知れない。