鯨肉には鯨の種類ごとに様々な味わいがあるといわれる。しばしば「鯨肉」として同一に扱われるが、クジラが生物学的にはクジラ目に属する多くの種の総称であることを考えると、マグロもサバも同じ『サバ亜目の魚』として同一に扱うのに近いと言える[15]。もっとも美味・不味の判断は個々人の主観や文化・環境などによるところが大きいので、以下に述べるのはあくまで一般論である(さらに部位ごとにも味は異なるが、これは後述の#鯨肉の名称を参照)。

食味は、まず大きく「ハクジラ(マッコウクジラ、ツチクジラ、イルカ類など)」と「ヒゲクジラ(シロナガスクジラ、ナガスクジラ、イワシクジラ、ミンククジラなど)」で異なる。これは食性が根本的に異なる為である。更にそれぞれの種で生態も異なり、それに伴い食味も異なっている。

このうち、ハクジラに属するマッコウクジラは、日本では鯨油目的で捕鯨が行われた地域の食材として使われたことはあるものの、きわめて強いクセを持っていることから、基本的には食用には適さないとされる(世界的にもインドネシアの一部などを除き、ほとんど食用とはされない)。もっとも、日本では鯨皮から鯨油を絞った残りかすの「コロ」については食用の習慣がある。なお、油脂の成分(ワックス・エステル)が消化しにくいので、油抜きをしないで一度に大量に食すると下痢を起す可能性がある。

また、同じくハクジラに属するツチクジラやイルカ類も、マッコウクジラほどではないがクセが強く、地域や個人により嗜好が強く分かれるとされる。例えば、和歌山県の太地では、主たる捕獲対象種はヒゲクジラ類だったがハクジラ類のゴンドウクジラも伝統的に食用として好まれてきた。古くからツチクジラ漁で知られる千葉県の外房地域では、基本的に「血抜き」をせず「血を味わう」と表現されたりもするものであり、あえてクセの強さが強調されている。また沖縄においても血と共に肉を炒めるといった積極的に血を利用する料理もある。

これに対して、ヒゲクジラに属する鯨類の肉は、ハクジラ類よりは味のクセが少なく牛肉などに近い食味であるとされる。赤身については特に馬肉に近いとの評があり、実際に馬肉を鯨肉と詐称して販売していた例が報告されている。ただしヒゲクジラ類の中でも、鯨種によってかなりの差がある。例えば、現在最も多く流通するミンククジラ[16]は、肉の繊維が細やかであると評される一方、小型のため脂肪の乗りが少なく尾身などの珍重部位はあまり採れない。イワシクジラやニタリクジラは江戸時代から食用にも供されてきた種類で、鯨肉の生産効率が高い。大型のナガスクジラの尾の身やサエズリは、脂の乗りが良く高級品として扱われる。

参照元:Wikipedia「鯨肉

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鯨肉は、食用以外の工業資源としても利用された。鯨由来物の工業資源としての利用としては鯨油が代表例ではあるが、鯨肉も例外ではない。(クジラ#クジラの利用も参照)

日本では鯨肥と呼ばれる肥料の原料として使用された。鯨肉・鯨骨・鯨皮などを煮て石臼などで粉砕したものであり、鰯肥などと同様の海産肥料として使われた。江戸時代から鯨油の絞り粕の再利用等として行われている。明治時代以降に近代捕鯨基地として使われた宮城県牡鹿町鮎川浜(現石巻市)などでは、鯨肥生産が地場産業として栄えていた。鮎川浜の場合、食用に適さないマッコウクジラが対象鯨種であったことなどから食用とされた鯨肉はごく一部であり、余剰鯨肉が生じていた。これらは当初は海洋投棄されていたが、周辺海面を汚染するとして地元漁民の反発を受けたこともあって工業資源化され成功したものである。

参照元:Wikipedia「鯨肉
生物濃縮により人体に有害な重金属やポリ塩化ビフェニル(PCB)類などがクジラの体内に蓄積されているので、鯨肉は汚染されているとの指摘があり、一部の国では摂食制限が行われている。日本でも、水銀の含有濃度が高いハクジラ類については、キンメダイなど他の魚介類と並んで、妊婦を対象とした摂取量に関するガイドラインが定められている[18]。他方、ヒゲクジラ類については比較的有害物質の含有濃度は低く、特に南極海で捕獲されたものに関してはほとんど蓄積が無いことから、特段の制限は設けられていない[19]。ハクジラ類についても、あくまで妊婦のみを対象とした一定量への制限に留まっており、一般人の摂食については幼児や授乳中の母親なども含め問題ないとされている。なお、調査捕鯨副産物については調査の一環として試験が行われており、一定の安全基準を超えた個体は流通させない措置が講じられている。

環境省の国立水俣病総合研究センターは、2009年から2010年の調査で、沿岸捕鯨が行われている和歌山県太地町の全住民の3割にあたる1137人を調査し、全国の他地域と比べて平均で4倍超の水銀濃度を毛髪から検出したと発表した。これは鯨肉摂取との関連性があると見られている。ただし、同時に実施された健康影響調査では、特に健康被害は確認されていない[20]。水銀濃度がWHOの基準を超えても健康被害がないという事実に関しては、様々な要因を指摘する声はあるものの、現状では未解明であり、継続調査が必要とされている。

参照元:Wikipedia「鯨肉