これぞヴィクトル・ユゴーと想わされざるを得ない展開でした。アニメ版とはかなり異なったフロローのキャラクターが興味深く感じられ、四季のストレートプレイが得意とするフランス文学の雰囲気が強く醸し出されていて、フロローの居方は『ひばり』に登場する聖職者たちのそれでした。
そして演出。人を物に見立てたり舞台上で早替えをする等、歌舞伎テイスト満載の手法が逆輸入された感じで非常に楽しめました。
さて、観劇後、四季よりも東宝向きの作品では?という思いがよぎりましたが、その考えは数瞬後には改められました。作品の主役は人ではなく大聖堂であること。その荘厳さ、圧倒的な雰囲気を表す聖職者たち。その代表であるフロローの立ち居振る舞い、そして何よりセリフは四季のメソッドこそが相応しいと感じたからです。抽象的ですが『聖なる雰囲気』を表現するのに一音も落とさない喋り方が、この作品に最も適しているのです。この喋り方を必要とする役はフロロー大助祭、『ひばり』のコーション司教、大審問官、『ライオンキング』のラフィキ等、枚挙に暇がありません。大聖堂の石たちのアンサンブルも統一感が必要以上に必要となりますので、これもまた得意とするところ。結果として四季の新ディズニー・レパートリーとして申し分ないものに仕上がったというわけです。
その名はミュージカル『ノートルダムの鐘』。