山本は、転んだりぶつかったりして人に笑われると、真顔で


「いや、今、誰かに足をつかまれて…」


とか


「今、ここに誰かがいたからよけたら急に消えた」


というごまかし方をしていた。


寝てる時に足がガクっとなっても霊のせい、道でつまづいても霊のせい、階段を踏み外しても霊のせい、水をこぼしても霊のせい、とにかく何でもかんでも自分のドジで笑われるシーンでは全部霊のせいだ。


ちなみにドラッグはやっていないので幻覚ではなく、何でやっていないかどうかわかるかというと、私がうちの猫に

薬を飲ませるときに使うシリンジ(注射器の針がついてないやつ)を、部屋で見つけた時、山本は覚醒剤用の注射と勘違いして、顔を青ざめて


「か、か、か、かく、かく、覚醒剤…やるんだ…」


と、どもりながらタジタジで聞いてきたので、面白いから


「うん、そうだよ」


と言ってみたら、どもりながらも粋がって


「お、お、俺の周りも、み、み、み、みんなやってるけどね…」


と言ったので、超大笑いして


「それ猫に薬あげるときのシリンジだよw」


と言うと、「ふーん…」と安心したようで、ドラッグをやる度胸も無さそうだった。


話は戻って、何でもかんでも幽霊のせいにして決して自分がドジったわけではないとごまかす山本が、ペンを落としたり物忘れをしたり、ささいなミスをするたびに


「それも幽霊のせい?w」


と聞くと、馬鹿にされてることをわかっていないのか、真顔で


「んー、んっと、これは違うかな」


と、普通~~~に答えていた。


虚言癖の人は自分の嘘が周りにばれていないと本気で思っているらしいが、こうして馬鹿にされていることがわからないなら本当に本気で思ってるんだろうなと思う。


小学校の時、クラスでいつも1人だった子がある日突然


「私は光ゲンジのかーくんと親戚だからサインをもらってきてあげる」


という明らかな嘘を言って、最初はそれを信じたクラス中の女子が全員その子の周りに集まって、他のクラスの女子まで集まって来て、かーくんは普段どんな人なのかとか質問すると、その子は全部妄想の答でかわして、サインが欲しい人は色紙に何て書いて欲しいか言ってとか言い出した。


それが何日か続いて、でも一向にサインを持ってこないのでみんなが嘘なんじゃないかと疑い始めて、集団で問い詰めたら


「親戚なのは本当だけど忙しくて連絡が取れない」


と言って終業式の日までそれで言い逃れていた。学年が上がって別のクラスになると、その時に流行っていたアイドルの名前を出しては親戚だと言って一時的な注目を浴びていたがすぐに嘘がバレていじめられていた。


山本も子供のころ、そうゆう奴だったんじゃないかと思う。