私は自分から山本に電話やメールをすることは一切無く、あっちから来れば適当に対応するようにしてた。だからたぶん私が食いついてくるような話を作ろうと思ったんでしょう、ある日、動物好きな私に捨て猫をひろったという嘘話を言うために電話をかけてきた。

「店の前で子猫が鳴いてて、今抱いてる」

と言うわりに全く猫の鳴き声もしないのですぐ嘘だとわかり「ふーん」とだけ言うと、

「おい、かわいそうな奴め。迷っちゃったのか?
 なんでしゅか、ははは、か~わい~w
 ミャーミャー言ってるw」


いや全然言ってねーよ。
電話の向こうなのに嘘だとわかる見え見えな1人芝居がスタートしたのでウザいからすぐ電話を切った。

それでその虚言は終わりかと思ってたのに、まだメールでは続いていて、

「通行人に次々声かけてこの猫飼いませんかと言って飼い主を捜している」

とのこと。ふーん…。もう「ふーん」以外の返事が思いつかない。そのうち私が全然食いついてないのがわかったのか1人芝居に飽きたのか、

「行きつけのスナックのママに電話したら欲しいって言うから今から届けに行くことになった」


とのこと。ふーん…。

このスナックのママというのは、山本なりにかっこいいと思いこんでいるフレーズで、何かと「よく行くスナックのママがこのまえ~」という話をするが完璧な嘘。虚言癖の特徴で、この「スナックのママ」というフレーズだけが気に入ってる場合、そのフレーズを言うことに意義があるのでその話自体は全く面白くもない何のひねりもオチもないどーーでもいい話なことが多い。

それで猫の続きですが…、通行人に猫いりませんかと聞いて回っていたと言っていたのに、いつのまにかワープして超遠いとこにあるはずのスナックにいるという電話がかかってきて

「今、ママに猫を渡した。ものすごく喜んでくれてるよ。
 いい飼い主が見つかってよかったな~おまえw
 にゃんだ、おまえも嬉しいのか、しょうでしゅかーw
 ははは、すげーかわいいw」


とまた1人芝居が始まってうざかった。

でも最初の電話から最後の電話までたぶん寮の部屋にいたと思う。外にいるか中にいるかなんて電話でも音ですぐわかる。でもバレバレの嘘を言ってばれてないと思いこんでてほんと悲惨で痛々しい。