虚言癖の特徴でもある「職を転々とする」のは、虚言のせいで嫌われたり相手にされなかったりで長続きしないからだろう。でも辞めた理由はたいてい「やりたいことは全部やったから」とか「しばられるのが嫌だから」とか「誰かをかばって俺が辞めてやった」とかかっこいいことを言います。なんでもかんでもドラマチックな台詞が超大好きなので。

岩尾は、もう何十回バイト先が変わったか数えられないが、今度は友達が店長のグッチの店でバイトすることになったと言い出した。どうせ嘘だろうと思って、どこの店だと聞いてみると、○○駅のデパートの1階にあると言ったので、私が住むところからは結構遠かったのでその近所に住む友達にデパート1階にグッチがあるか見てきてもらうと案の定なかった。なので、

「友達がそこ行ったけどグッチ無いって行ってたよ」

と言ってやると、

「いや、あるよw
 てゆうかルーズソックスとかワンピースも売ってるから
 別にグッチの専門店じゃないしw」


と笑って言うので、

「じゃあまた友達に見に行ってもらう」

と言うと、今度は

「俺はだいたい買い付けに行ってるから店にはいない」

と言い出した。買い付け!?∑( ̄□ ̄ ;)

で、そこの店の店長は友達だと言っていたのに、何度か話すうちに年いったババアだと言い変えて、そのババアと遙か遠い県に橋を渡ってまで車で買い付けに行き、そのたび車内で口説かれると言い出した。

さらに、その店でバイトする女子高生が自分のことを好きで、ものすごく仲良くてデートに誘われたと言いだし、他の従業員はモデル並のスタイル抜群の超美人でそいつらも自分のことを好きで、みんなで取り合いになっていると言い出した。そんで常連客がワンピース試着するときに後ろのファスナーが届かないからやってくれと言ってくるとか言って、自分が接客すると何でも売れるとか…。

虚言癖のやつはたいてい、自分がモテると言い出すが顔見りゃ嘘だってわかるw

そんである日、岩尾が今日は仕事休みたいから電話するとかいって奥の部屋で小さい声で電話しはじめて、また無人相手に1人芝居かと思ったら、そのときはちゃんと声がして、おばさんの声で「え~休む?急に困るよ~ちょっと~」という声が聞こえた。

電話が終わった岩尾はこっちに来て、

「簡単に休めた。明日も休みにしてもらったから遊ぼう」

と言い出した。翌日も翌日もうちに居て帰ってくれないので、たぶんその電話でクビになってたんだと思う。

結局本当は数年間何の仕事をしてたか全く不明で、でもいつもおごってくれたし、誕生日じゃない日でもプレゼントをくれたり、自分の洋服もそこそこの値段のを買ってたし、もしかしてアコムとかで借りてたのかな?∑( ̄□ ̄ ;)