今週はハロウィンウィークということで、商店はどこもオレンジと黒で飾りつけられ、子どもたちも仮装の準備に余念がありません。わがBUローでも、生徒会(?)主催のパーティーのチケットがあっという間に売り切れたりしてるようです。

というわけで、今回は少し前にIPの授業で取り上げられたCAFC(連邦巡回区控訴裁判所)の判例(In re Dembiczak, 175 F.3d 994 (Fed.Cir. 1999))をご紹介しましょう。


本件では、ある「発明」に特許を与えるべきかが、問題となりました。

その「発明」とはなにかというと、ま、見ていただいたほうがよいでしょう。

ひとことで言うと、オレンジ色の地色に黒で顔と線が描かれた、ハロウィンのカボチャ風のゴミ袋なわけですね。
アメリカ特許法では、有用性(utility)、新規性(novelty)、非自明性(nonobviousness)という要件があります。ハロウィンの時期、アメリカ北部では歩道が埋まるくらい落ち葉がつもります。これをそうじして黒のゴミ袋に入れて並べておいたのではいかにも殺風景。そうだ、ゴミ袋をハロウィンパンプキンにしたら街が楽しくなるじゃないか!というアイデアだったらしいです。この点で、生活に密着した課題を見事に解決しており、有用性の要件を満たします(判決文によれば、1990年だけで7万個売れたと言いますから、かなりのものです)。また、いままで無かったという点で、新規性の要件も満たします。

問題は非自明性、つまり「これってすぐに思いつくんじゃないの?」というのが争われたわけです。


非自明性の判断においては、長いあいだ、「出願された内容は、発明の前にすでに文献などにおいて教示(teaching)、示唆(suggestion)、動機づけ(motivation)されたものではないか」という基準が使われてきました(ただし、最近になって重大な修正がなされている)。

特許商標庁は、「ゴミ袋そのものはどこにでもあるものだし、袋を利用してハロウィンパンプキン(判決文では"a Halloween-style pumpkin, or jack-o'-lantern"と呼んでいる)を作る方法は「小学校の先生のためのハロウィングッズの作り方」のような本に紹介されている」として、この出願を拒絶しました。

ところが、裁判所は、「たしかにゴミ袋は珍しくないし、袋でハロウィンパンプキンを作る方法も珍しくないが、それらを組みあわせることは教示、示唆、動機づけされてない」として、この発明の非自明性を認めました。

つまり、特許として有効に成立すると判断したわけです。

判決文では、非自明性を後づけ(hindsight)で判断することをいましめてるのが、今となっては興味深いです。


ちなみにこのハロウィンゴミ袋、判例を読んで以来ぜひ見てみたいものだと思っていますが、まだ街中で実物にお目にかかったことはないです。

お菓子買っとかなきゃ。。。