はじめに③


ふと振り返ると、我ながら何の脈略もない29年間だった。


とくに7年前まで。つまり、このライターという職に就く直前の23までは、何一つとして「将来、役に立つ努力」をしてこなかったように思う。


「できることなら、ライターという職業を一生涯つづけて行きたい」と考える身としては、7年前までの時間の過し方に、相当、後悔していたりもするワケで、のちにそうしたビジョンを思い描くことを、かつての自分の中に「将来のビジョン」として映し出すことができていたなら、少なくとも今よりナンボかマシなライターになっていたのではないかと、最近、しきりに後悔している。


しかしながら、その無駄があったから今の自分があるのもまた事実なワケで、そう考えると過去の無駄に少なからず価値を見い出せなくもない。


これは希望的観測以外の何者でもないのだけれど――30を前にしてはじめて、そうした過去を振り返ることで、今までの自分が過してきた時間に対する「価値」を認識できないものだろうかと考えるようになった。


だから――


振り返ろうと思う。


自分にとって、最も多くの無駄と向き合い、そして、最も多くの価値を手にしたであろう…


「あの頃から」振り返ろうと思う。