@落語 #生田絵梨花 #水瀬琴音#レースクイーン 「まん丸な目とアルバムの重み」「デカ盛りギャルと世間の腹八分」 「まん丸な目とアルバムの重み」 えー…どうもどうも。 世の中ってのはね、便利になりすぎると、だいたいロクなことがない。 昔は「会いに行く」なんてのは命がけですよ。江戸から上方まで歩くんだ、恋文ひとつ届けるのに命削ってる。ところが今はどうだ、スマホ一つで「いいね」だの「かわいい」だの…指一本で愛を語る。軽いねぇ、愛が。 でね、その軽い「いいね」が、妙に重くなる瞬間がある。 今日はそんな話でして―― 最近の若いもんは、アルバムを頭に乗せるらしい。 いやいや、冗談じゃない、ほんとだよ。ほら、あの…えーと名前なんだっけ…そう、生田絵梨花。あの子がね、自分のアルバムを頭の上に掲げてニコッと笑ってる。これがまた、まん丸な目でね、「どうだい?」って顔してるわけだ。 で、世間はどうなるか。 「かわいすぎ!」「綺麗!」 ……バカか、お前らは。 いや、違う違う、褒めてるんだよ俺も。かわいいよ、そりゃ。 でもね、「かわいい」って言葉をそんなに安売りしてどうする。昔はね、「かわいい」ってのは一大事なんだ。近所の娘が一人言われるかどうか。それを今や、ボタン一つで何万人が「かわいい」。インフレですよ、感情の。 で、このアルバム。 「I.K.T」って言うらしい。 なんだそれ、暗号か?スパイか?って思うけど、違うんだな。中身は本人が悩んで、考えて、作詞作曲までやってる。これがまた、真面目なんだ。えらいねぇ。 ただね、ここで問題がある。 頭の上にアルバムを乗せるってのは、どういうことか。 昔の噺家はね、芸を頭に乗せるって言ったんですよ。 つまり「芸で食う」って覚悟だ。重たいんだ、その重みが。 ところが今はどうだ。 アルバムを頭に乗せて、「かわいいでしょ?」ってやる。 これが現代だ。 いや、責めてるわけじゃない。むしろ逆でね、時代ってのはそうやって変わる。重いものを軽く見せるのが芸人であり、軽いものを重く見せるのがまた芸人だ。あの子はね、その両方をやってる。 ミュージカルもやる、芝居もやる、歌もやる。 で、朝ドラにも出るってんだから、こりゃ忙しい。 風、薫るだってさ。優等生の役らしい。 ……ぴったりじゃないか。優等生ってのはね、だいたい裏で悩んでるんだよ。 表じゃニコニコ、裏じゃ「これでいいのか」って。 それが芸だ。 でね、ここからが本題。 ある日、そのアルバムを買った男がいる。しがない会社員でね、毎日満員電車に揺られて、上司に怒られて、家に帰れば誰もいない。典型的な現代人だ。 で、その男がふと思う。 「俺の人生、何なんだろうな」って。 そこで目に入るのが、あの写真だ。 頭にアルバムを乗せて笑ってる。 「なんでこの子は、こんなに楽しそうなんだ」 男は考える。 自分は何かを頭に乗せたことがあるか? 責任、仕事、義務……全部背負ってるつもりで、実はただ引きずってるだけじゃないか。 そこでね、男はやるんですよ。 コンビニで買った弁当を頭に乗せる。 ……バカだろ? でもね、やるんだよ人間ってのは。 で、鏡を見る。 「……なんだこれ」 そりゃそうだ、ただのバカだ。 でも、その瞬間、笑っちゃったんだな、自分で。 「ああ、俺、笑えるじゃねぇか」って。 ここがミソでね。 人間ってのは、笑えなくなった時に終わる。 芸人も同じだ。笑わせる前に、自分が笑えなきゃダメだ。 その男はね、それから少しずつ変わる。 仕事も相変わらずきつい、上司も変わらない。 でも、帰り道でちょっと空を見る余裕ができる。 で、またあの写真を見る。 「かわいい」じゃないんだな、もう。 「ああ、この子も戦ってるんだな」って思う。 アルバムってのはね、ただの音の集まりじゃない。 その人間の時間だ。悩みだ。迷いだ。 それを頭に乗せて笑う。 ――これが芸だ。 だからね、俺はこう思うんだ。 「かわいい」って言う前に、一回考えろ。 その笑顔の裏に、どれだけの重みがあるか。 で、最後に一言。 今の若いもんは軽い軽いって言うけどね、 軽く見せるために、どれだけ重いもの背負ってるか、年寄りは忘れちゃいけない。 ……え?俺か? 俺はもう何も背負ってないよ。 全部、ネタにしちまった。 だから軽い。 羽みたいに軽い。 でもな、その軽さで、今日も一席やってるわけだ。 ――どうも、ありがとうございました。 おあとがよろしいようで 2幕目 「デカ盛りギャルと世間の腹八分」 えー…世の中ってぇのは、まあ不思議なもんでございましてね。昔はね、「腹八分目が医者いらず」なんて言ったもんですが、今はどうだい。「映え八分目」なんて言い出しやがる。食う前に撮る、食った後も撮る、で、腹はどうなってんだってぇと…そこはまあ、本人次第でございましょうな。 で、最近の若い衆は「平成ギャル」だって。平成だよ?ついこの間まで現役だった時代が、もう懐かしがられる。これが世間のスピードってやつでしてね。わたしなんぞは、昭和をやっと飲み込んだと思ったら、平成が消化されて、気がつきゃ令和で胸焼けですよ。 その平成ギャルをね、今どきのべっぴんさんがやるってぇんだから、これがまた妙な具合で。名を聞きゃ、水瀬琴音。レースクイーンだってぇんだから、速いのは車だけじゃない、流行の取り込みも速い。で、「似合ってる?」なんて聞く。聞くってのがいいね。聞かれりゃ人は褒めるんですよ。褒めりゃまた伸びる。伸びりゃまた出る。出りゃまた食う。食うから“デカ盛り”だってぇんで、話が一周して元へ戻る。これが現代の循環型社会でございます。 ところがね、この「デカ盛り」ってのが、昔と違う。昔はただ量が多いだけ。今は“夢”が盛られてる。「デカ盛りドリームマッチ」なんてぇ番組に出て、「食べるのが特技」って言う。いや、特技ってぇのはね、できる人が少ないから特技なんだ。誰だって食うよ。違いはね、量と見せ方だ。つまり、世間は腹じゃなくて“物語”を食ってる。 で、平成ギャルの格好で、パンツだのハーフアップだの、ワイルドだのかわいいだのってぇ評価が飛び交う。評価ってぇのは便利な言葉でね、中身を見なくていい。ラベルだけ貼っときゃ、なんとなく分かった気になる。これが今の世間の“時短”ってやつでございましょう。 しかしね、あたしゃ思うんですよ。「ワイルドかわいい」って何だい。ワイルドなのか、かわいいのか、どっちかにしろってんだ。ところがどっこい、今の世の中は両方じゃなきゃ売れない。辛くて甘い、硬くて柔らかい、古くて新しい。全部乗せだ。まるでデカ盛りだね。味が分かんなくなる?いいんだよ、写真が良けりゃ。 で、この水瀬ってお嬢さん、食べ歩きが趣味で食べるのが特技。これ、筋が通ってるようで通ってない。だってね、食べ歩きってぇのは歩くのが主で、食べるのは従だ。ところが特技が食べること。歩くほうはどうした。世の中ね、主と従が入れ替わると、だいたい話がややこしくなる。 でもね、そこが面白い。人間ってぇのは、ちょいと矛盾してるくらいがちょうどいい。まっすぐ過ぎると、折れる。曲がってるくらいで、しなやかになる。だからこのお嬢さん、デカ盛り食ってギャルやって、レースクイーンで賞まで取る。なんだかんだ言って、世間がちゃんと拾ってる。 ただね、ひとつだけ言わせてもらうと―― 世間ってぇのは、持ち上げるのも早いが、飽きるのはもっと早い。今日は「超かわいい」、明日は「誰だっけ」。この落差がね、いちばん胃にくる。デカ盛りより重いのは、評価の山ですよ。 だから最後にね、こう言っておきましょう。 「似合ってる?」って聞かれたら、こう返すのが粋だ。 「似合ってるよ。ただしね――その“似合ってる”は、今だけだ。だから今のうちに、思いっきり食っときな。」 …え?何を食うのかって? 決まってるじゃありませんか。 “世間の目”でございます。