家の近くの桜が、いつの間にやら散ってしまった。

あの、薄紅の花びらが風に舞っていたのは夢だったのではなかろうか、と私は己の記憶を疑う。






人は桜を見て笑い、写真を撮り、酒を飲むが、散るとなると誰もが急に無口になる。








私はというと、ただ呆然と枝を見上げていた。



残されたのは、無遠慮な青空と、冷たくなった空気だけであった。





嗚呼、また今年も、春が過ぎてしまったのだ。