私が初めて観た東京サンシャインボーイズの舞台は、1989年11月~12月に下北沢駅前劇場で上演された「眠りラクダのはじける音(再演)」です。
 
当時私は、週末になるとふらっと新宿、下北沢、池袋あたりに行って、ちょっと気になる舞台を観る、ということをやっていました。
 
NHK教育の「芸術劇場」で放映された夢の遊眠社の「小指の思い出」を観て、「ヘンな世界があるもんだなあ」と感じ、夢の遊眠社の舞台を観たのをきっかけに、小劇場演劇にハマりました。
 
ショーマ、自転車キンクリート、キャラメルボックス、青い鳥など、少し名の売れた劇団を観つつ、特に目ぼしいものが無い場合は、ほぼ無名な劇団でも、面白いかも、と思えるような要素があるものを適当に選んで観ていました。
 
「眠りラクダのはじける音」もそのパターンです。
 
下北沢には、本多劇場、スズナリなど、いくつかの小中劇場がありますので、行けば何かしら観てみようと思う舞台をやっていたりします。
 
「眠りラクダのはじける音」というタイトルからはどんな芝居か想像も付かなかったのですが、ポスターのイラストがほんわかとしていて何となく好きそうだったこと、入場料も安かったことから、入ってみることにしました。
 
ただ、そのように、本当に勘だけで選んだ芝居というのは、大抵外します。
 
中には、一人か二人、華のある役者もいるのですが、総じてレベルが高くない場合が多いのです。
 
その時もそれほど期待していなかったのですが、舞台が進むにつれて、「この劇団、なんかみんな上手いぞ」と感じるようになりました。
 
そして、舞台の中盤、私は演劇を観て初めて涙しました
 
私が涙した理由を文章で伝えることは出来ないと思いますが、このブログを読む方が、これから改めてこの舞台を観る機会はまず無いでしょうから、ネタバレ的にストーリーを含めてご紹介します。
 
物語は、とある一軒家の2階のベランダと、それに続く屋根の上で進行します。
 
この家のおじいちゃん(西村雅彦)は、屋根の上で暮らしています。
 
そこで知り合ったギンガム星人のオーソン(ダックス小峰)が遊びに来るのを待っているのです。
 
孫のテルト(相島一之)やその妹のテトラ(宮地雅子)、ママ(松本理恵)やパピー(梶原善)は、当初、おじいちゃんがボケてしまったものと思っていますが、やがて、オーソンにも遭遇し、その存在を信じるようになります。
 
おじいちゃんの息子、しんちゃんおじさん(小林隆)は、昔テレビのヒーローもので「超人バロムファイト」を演じていた俳優だったのですが、志半ばで引退したことを、おじいちゃんや他の家族から非難されるたびにヘこんでいます。
 
そして、水亀もと子(かんみほこ)が現れ、オーソンは、病院から逃げ出した彼女の亭主の八百屋だったことが判明します。
 
もと子は亭主を連れ戻そうとするのですが、テルトは「おじいちゃんを夢の中で遊ばせてやりたい」と、なんとか「オーソンは宇宙人である」という設定のままにして欲しい、と懇願します。
 
そこで、みんなで一芝居打とう、ということになるのですが、ここでしんちゃんおじさんは「俺はいいや」と帰ってしまいます。
 
そして、王妃ドルシネア姫がカリマンタンからの侵略に対抗するために、戦士としてオーソンを連れ戻しに来た、という設定で、オーソンとおじいちゃんを納得させようとするのですが、だんだん話にぼろが出てきます。
 
お前たち、さては偽物では無いか、となった時に、「オーソン、よくぞ見破った!そいつらは真っ赤なニセモノだ!」と登場するのが超人バロムファイトなのです。
 
この時、私の目には自然と涙が溢れました。
 
物語の前半で、しんちゃんおじさんが、始終「情けないやつ」のような扱いをされていたのはこのためだったのか!しんちゃんおじさんの本当の出番はここだったのか!という伏線の張り方に感動し、なんとなくしんちゃんおじさんに感情移入してしまったのです。
 
笑いながら、結構ぼろぼろと涙を流してしまいました。
 
ただ、これで万事解決となるのかと思いきや、バロムファイトもその場を収めることができず、さらに話は続きました。
 
結果的には、ハッピーエンドでファンタジックなエンディングを迎えます。
 
この舞台を観て、私はすっかり東京サンシャインボーイズの大ファンになってしまいました。
 
以来、1994年9月の「東京サンシャインボーイズの『罠』」まで、ほとんどの作品に足を運びました。
 
運の良いことに「眠りラクダのはじける音」はローカルのケーブルテレビで放映されたらしく、その時のビデオがごく短期間だけ公演時に販売されていましたので、次の公演の時に購入しました。
 
その後、同様に、「ブロードウェイの生活」「天国から北へ3キロ」のビデオも入手しました。
 
いずれの作品も、映像、音声ともにかなり品質は低いので、視聴するのは結構大変なのですが、かなり希少な映像だと思いますので、いつか息子にもみせてやりたいと思っています。
 
一方、「ラヂオの時間」「ショウ・マスト・ゴー・オン 幕を降ろすな」「東京サンシャインボーイズの罠」の3作品は、2016年にDVD化されていますので、これらは誰でも観ることが可能です。買えば。
 

 
いずれも、NHK教育の「芸術劇場」で放映されたものをDVD化したものだと思います。
 
もちろん、この3作品も持っていますので、次の機会には、これらの作品をご紹介したいと思います。
 
またしばらく先になるかも知れませんが。
 
おしまい