寝ぼけ声に、はっと我に返った。
どうやら考えに没頭していた間、無意識に託生の髪を撫でてしまっていたらしい。
「ごめん。起こしちまったか?」
眠りを妨げて悪いと思いつつも触れた指先を離すことは出来なくて。
託生の体温を感じたくて、その頬に指先を滑らせた。
「・・・ねむれないの?」
眠たげな声で小さく尋ねてくる託生に咄嗟には応えられず沈黙が落ちる。
「・・・さむいでしょ?こっちにおいでよ。」
託生の頬に触れているオレの指先が冷たいからか。
ベッドサイドに立ち尽くしていたオレに託生の眠気に潤んだ瞳が向けられる。
自分がくるまっている羽毛布団の端を持ち上げながらのこの言葉に。
オレは息を止めた。
ーーーまったく。
普段はぼんやり、おっとりしてるくせに。
人が弱ってる時にこんな風に男前になるのだから。
だから、そういうところが諸悪の根源なんだ!
酷く柔らかくて酷く優しい。
誰もを受け止めて、誰もから求められてしまう。
そんな託生にオレはいつだって言い様のない想いを抱いていた。
ーーー自分だけを見て欲しい独占欲?
ーーー誰かに連れ去られないかという不安?
ーーーいつか。
自分から離れていってしまうかもしれない。
誰か他の奴の傍に行ってしまうかもしれない。
・・・そんな焦燥?
いつもは見過ごしていた想い。
あえて見ないで通り過ごしてきた想いが今、圧倒的な質量で迫ってくる。
促されて潜り込んだ布団の中。
託生の温もりが冷えきったオレの身体にじんわりと伝わってきて、オレはほぅっと息を吐く。
「・・・あったかくなったら、きっとねむたくなるよ?」
オレの冷えた指先を握り込んだ温かな掌。
その温もりと、見上げてくる黒い瞳に鼓動が否応なく高まる。
息を止めたままのオレの視線の先で託生の黒く潤んだ瞳がとろりととけていく。
再び眠りへと落ちていく託生に、オレは声を潜めて囁いた。
「ずっと一緒にいる。託生の傍に、ずっと。絶対に護るから。」
ーーーだから。
どこにも行かないで欲しい。
口に出来なくて呑み込んだ言葉。
それを決めるのはオレではなく、託生だから。
唇を噛み締めた時、オレの指先をくるんでいた託生の掌にキュッと力が込められた。
ーーーあったかいーーー
伝えられた温もりに、不安に凍えそうだった心が溶かされていく。
「・・・ぼくも。ぼくも、ずっといっしょ・・、ね?」
眠たさにとろけた声で返された約束に、胸の奥から満たされていく。
「ずっと?」
確かめたくて問い返したら。
「うん・・・ずっと・・・」
確かな肯定。
「約束、だからな。」
「うん・・・やくそく・・・」
今度こそ眠りに落ちていく託生の、それでもしっかりとオレの指先を握る掌の強さを感じつつ。
満たされた心で繰り返す。
離れない。
ーーー離さない。
傍にいて必ず護る。
誰からも、何からも。
それは聖夜の誓い。