高齢者施設に入所中の母がコロナに感染して亡くなり、お葬式は、できませんでした


火葬は、 一般の火葬が終わって、1番最後の午後6時に、行われました


遺族の収骨もできず、母の遺骨は、翌日の午前中に、弟の自宅に届けられたようです


遺骨が帰ってきたので、お奉りしないといけないのですが、

通常、葬儀会社さんが、仕切って、あれこれ用意してくださいますが、お葬式を行っていないため、葬儀屋さんもいらっしゃらず、何もありません


父が亡くなっていて、仏壇はありますので、弟は、仏壇の前に、台を置き、遺骨とお花をお供えしたようです


お寺の檀家にはなっていないのですが、法要の際に何度かお世話になっているご住職にご連絡をしたところ、すぐにお経を上げに伺います、

と言って頂けたようです


その時、白木の位牌が無い事に気づきました


お葬式をしてないので、その時まで必要なく、気づかなかったのですが、白木の位牌は、どこかに売ってる??もの??


ご住職に相談したところ、ご住職の方で、用意してくださる事になりました

良かった


そうやって、バタバタしつつも、ご住職に来て頂きお経をあげて頂いたそうで、初七日の法要となったようです


弟は、

「手作り感満載やけど、こういうのも、ええんかも」

と言っていました


葬儀屋さんに、お葬式は、お世話になりませんでしたが、火葬の際はお願いしました


弟によると、1晩棺を預かって貰った費用を含めて、22万円位かかったそうです


スタッフさん2人付いて、高いのか安いのかわかりませんが、このくらいの金額でしょうか


無事、母が帰ってきて、初七日の報告の電話をしてくれた弟、最後に、遺産の話をしてきました


これから、母の施設使用料など、引き落としがいくつかあるので、その引き落としが終わったら、遺産は折半しよう、

と弟は、言いました


葬儀屋さんが死亡届出した段階で、口座は、動かせなくなるんじゃないの?

と私は思っていたのですが、今はそうではないようで、


「2ヶ月くらいしたら、支払いも終るやろうから、そうしたら手続きしよう、それまで、お母さんの預金は動かさへんから」


と弟は、言いました


今度、私が遺骨になった母に会うのは、四十九日の法要の日、となりました


92歳の母

戦前生まれの昭和ヒトケタ


あっけないものだ、

と思いました




ゴロゴロ、ゴロゴロ


陽が傾き、辺りは、段々と薄暗くなってきた夕刻、真っ黒な中年女が、キャリーケースをゴロゴロ、ゴロゴロと引き摺りながら、墓場へと向かっていきます


ゴロゴロ、ゴロゴロ


「これじゃあ、ホラーだよ」


自分で笑いそうになります


コロナで亡くなった母は、通常の火葬ができず、一般の火葬が終わった後、最後にして頂くそうで、時間は、午後6時になる、

と言われました


弟によると、午後5時45分に火葬場の駐車場で、母の棺を載せてきてくれる葬儀屋さんと落ち合うそうで、

私も遠方から駆け付けるので、その火葬場の駐車場に直接行くから、

と弟に言いました


初めていく火葬場でした、Googleさんで見てみると、駅から歩いて行けそうです


「駅から歩いていけるなんて、めずらしいな」


そう思い、もっとよく見てみると、火葬場の周りはお墓がギッシリいっぱい建っていました


「ここに夕方、1人で.........」


その日は、寒の戻りで、どんよりとした雲がかかり、冷たい風が吹く寒い日でした


そんな夕方、お墓の中を行くのが怖かったのですか、

考えてみると、

「真っ黒の格好をした中年女がゴロゴロと墓場を歩く」

という方がよっぽど怖い、

と思い、可笑しくなってきました


無事、火葬場に着きました


建物の前に駐車スペースが10数台分あるので、葬儀屋さんと、ここで落ち合うのでしょう、

寒いので、ロビーの中で待たせてもらう事にしました


午後5時半過ぎていますから、あまり人は、いません

1家族だけ、収骨にやってきた方々がいらっしゃいました


すると弟から電話がかかってきました


「今、どこ?」


「ロビーの中」


「駐車場まで来て」


「ロビーの前にある駐車場の事でしょ?」


「そこやのうて、西側の、墓地のど真ん中にある駐車場で待ってるから」


「え?」


目の前の駐車場じゃないの?、

またまた、寒空の中、ゴロゴロと、お墓の中へ戻って行きました


墓地の真ん中にある駐車場には、弟の車と、葬儀屋さんの車の2台だけ停まっていました


葬儀屋さんは、男声が2人いらしていて、防護服と手袋をつけていらっしゃいました


母の棺は、葬儀屋さんの車の中にありました


どうやら、コロナで亡くなった人の棺は、火葬場へ直接乗り付けてはいけないようで、火葬場に連絡を入れて、許可が出たら、待機場の駐車場から向かうようです


葬儀屋さんは、

コロナのため、最期のお別れができませんが、花束を棺の上にお供えしてください、

と言い、花束を持ってこられました


そして、弟にも手袋を渡して付けてもらい、花束を棺の上に置き、手を合わせました


その後、火葬場から許可が出て、私達は、車に乗り込みました


すぐそばの火葬場へ行くと、職員の方が待っていてくれました


そのあとは、通常通り、というのか、棺は台に乗せられ、運ばれました


私たちは、手を合わせて、母を見送りました


火葬するのですから、コロナウィルス、死滅して、お骨上げできるのでは?

と思いましたが、

午後6時から火葬して、そしたら、収骨は何時になるのか?

職員さんは何時までお勤めしないといけないのか?

ウィルスが死滅する、といっても、治療薬のない伝染病なんだから、職員さん達も嫌だよなぁ、

とあらためて考えました


火葬した母の遺骨は、翌日の午前中に、弟の家へ届けて頂けるそうです


母の見送りは、ほんの数分で終わりました


お通夜もお葬式も、お線香をあげることも無く、コロナ感染の母は、翌日火葬されたのでした



弟のメールには、


母親が息を引きとった、

という事と、

今、お医者さんと施設のスタッフさんと話をしているので電話できない、


と書いてありました


そして、


「最後に会えてよかったね」


と、ありました


私が面会をして、その数時間後に亡くなったのです


母の容態が悪化してきた頃、


「お母さん、もう一度、もう一度、会おう」


と、何度も心の中で母に語りかけました


コロナに感染したら、回復するまで会えないだろう、

と思っていたので、なんとか治ってもらって、せめて1度だけでも会いたい、と思っていました


施設の方々のご厚意で、母には、なんとか会うことができました

施設の方々に感謝です


そして、

「神様が、会わせてくれたのかな」

とも思いました

私が会えるように配慮してくれたのかな、と


しばらくして、弟から電話がありました


お医者さんから、母は、コロナで亡くなったので、普通のお葬式は、できない、

と、言われた事

それでも、葬儀会社に諸々お願いしないといけないのだが、すべての葬儀会社が、コロナで亡くなった患者に対応してくれるわけではない、

との事

施設に、お願いして、対応してくれる葬儀会社を紹介してもらい、これから来てくれることになった、と


そうなんだ、どこの葬儀会社もやってくれる訳じゃないんだ、

とちょっと驚きつつ、弟に、

大変だけどよろしくお願いします、

と母の事を頼みました


お通夜、お葬式は、できないとして、火葬して、そして??


いろいろ考えていると、また、弟から電話がありました


コロナで亡くなった人を対応してくれる葬儀屋さんが来てくれて、母を棺に入れてくれることになった、

特別の袋に母を入れるという、

感染対策だと思うが、その袋に入れて棺に入れれば、二度と棺を開けることはできない、

と葬儀屋さんに言われたそうです


棺には、故人の愛用の品、個人へのお手紙、など入れますが、それを用意している時間もなく、蓋をされる事になってしまいました


弟は、急いで近くのコンビニに走り、母の好きそうなお菓子などを買ってきて棺にいれたそうです


「そうなん、そうなんや、

忙しい思いさせたね、ありがとう」


弟にお礼を言いました

すると、弟は、


「それで、棺は、葬儀屋さんの方で火葬まで預かって貰うことになったんや

で、火葬やねんけど、火葬する時間は、6時やねんて」


「は?

6時?

夕方の6時から火葬すんの?」


午後6時に火葬するなんて、聞いたことがありません


「そう、俺は、朝6時ですか?、って聞いてもうたけど、夕方の6時

コロナで亡くなった人は、1番最後に火葬するらしい」


はぁ、なるほど


「それで、時間は決まってるんやけど、何日になるかは、明日、葬儀屋さんが役所で確認せんとわからんらしい

火葬して、お骨拾いは、できひん、

遺族ができるのは、火葬するのをお見送りするだけ」


火葬場に私もお見送りに行く、と言ったら弟は、


お見送りは、ほんとちょっとの時間になってしまうので、今日来たばっかりで、また大変なのでは、

後で、四十九日とかでも、いいのでは、


と言いました

私は、お通夜もお葬式もないのだから、せめて行くよ、明日、いつ火葬するかわかったら、電話ちょうだい、

と弟に言いました


一体、いつになるだろう、火葬


私の住んでる地区の火葬場は、混んでいる時は、1週間先になるような事もあります


3日くらい先かな


お葬式の予定もないので、翌日、仕事に行きました


そして、午前9時半頃、弟から電話がありました


「今日、火葬することになった」


えっ?

ほんまに?!


「無理せんでええで」


「いや、行くわ、これから」


ダッシュすれば、午後6時の火葬に間に合います


上司に早口で早退を願い出て、事務所を飛び出しました