あの日、あの夜。

ここで遊んで、そして絶対みんなでデビューしようと違って。

盛り上がって楽しんで、疲れてそのまま寝てしまい、ここで朝を迎えた。

あの時、俺は翔君に何を言ったっけ？

「あ、この地形。石の形…あの時のまんまじゃん」

俺達５人は、ここに直接寝そべって、夜空の満点の星空を見たんだ。

そして、「デビューしたい」と呟いたはず。

それに即反応したのは相葉君。

「芸能界でてっぺん取りたい」って言ったら、ニノが「デビューもしてねえのに気がしはえーな！」と笑ってたっけ。

その時、大野さんは熟睡。

翔君は…

翔君はただ何も言わず、笑っていた。

「あーあ…俺何やってんだろ？」

なんとなく立ってられなくて、大きな石に腰を下ろした。

この歳だと、さすがに寝転ぶことは出来ないからね。

翔君はデビュー目的と言うより、親父さんへの反抗心で事務所に入ってた。

それがいつしかデビューしたいって気持ちに変わった聞いている。

だが、彼のお兄さんが亡くなり、家庭の事情で…親父さんの病院を継いで欲しいと要望され、俺たちから離れたんだ。

５人でデビューしてたら、俺たちの関係性って何か違ってた？

なんて、今でも思う。

メンバー内で恋愛なんて！って感じで避けられたかもしれないな。

もしくはメンバーを好きになるのはダメだと、俺の方が諦めたかもしれない。

……

いや、違う。

どんな状態になっても、どんな関係性になっても。

きっと俺は翔君を追いかけてたはず。

気がつけばとっくに日が暮れ、既に夜空になりかけている。

あの時は真夏だったけど、今は晩秋でかなり冷え込んできた。

車に乗り込み、エンジンをかけてハンドルに額を付けた。

今後どうするか。

どう行動したらいいのか。

どうしたら一番いいのかを考えた。

桜が散る頃-Ⅵ-425〜始動編〜