(8)
雨音が聞こえる。
目を覚ましたボクは彼女を見ている。
たぶん彼女は、いつも考えてる。
この恋はいつか終わる…って。
だからこの一瞬がすべてだと思ってる。
…好きって気持ちはどこからくるんだろうね。
そしてどこに行くんだろう。
まだ眠る彼女の耳にあるピアスをそっとはずす。
そしてベッドサイドのトレイの上に置いた。
…カラン
乾いた音がする。
彼女が目を覚ましていないのを確認して、枕の下に隠した小さな箱を取り出した。
ピアス。
ボクのストーンは黒。
彼女のストーンは白。
あとはお揃いのピアス。
さっき、ボクがつけてるのを見て<好き>って言ってたから、きっと気に入ってくれるだろう。
それにしても。
眠ってる彼女にピアスをつけてあげるのは、少し緊張する。
お願いだから、動かないで。
慎重に、そっと、そっと。
頑張ってつけ終わったら、今度は起こしたくなる自分勝手ぶりに笑ってしまう。
つけたピアスのすぐそばにそっとキスした。
彼女が小さく動いて、ゆっくり目を開ける。
『ユチョさん??』
『よく似合ってる。』
『え?』
ベッドサイドにもう一度手を伸ばして、彼女がピアスをつけるときに使っている小さな鏡を取った。
『気に入ってくれたらうれしいんだけど。』
『…あ。』
『どう?』
『これって…。』
『プレゼント。ボクなりに考えたお揃い。』
彼女は体を起こして、ボクのピアスを確認する。
そして鏡でもう一度自分のピアスを見てる。
…かなり無防備ですけど。
『ありがとう。』
『気に入ってくれたみたいでよかった。』
『うん。』
笑顔でうなづいて…ボクを見る。
そして視線に気づいて、慌ててベットに潜り込んだ。
『お礼のサービスかと思った。』
彼女が首を横に振る。
『だってうれしかったから。』
『そっか。よかった。』
窓の外の雨音が少し激しくなる。
『ユチョさん、明日は…。』
『朝には帰らなきゃ。』
二人の視線は時計の針に。
…午前三時。
もう少し、感じあっても大丈夫だよね。
朝が来れば。
ボクがずっと先まで彼女をつなぎ留めたいと願ってるなんて夢にも思わないまま、ボクの刻み付ける記憶を抱えて切ない時間を一人ですごす。
その切なさの闇の深さをボクは知ることはできないんだけど、それでもいつか彼女にも<永遠>を願ってほしい。
願ってほしいと、ボクは彼女を…。
『思いっきり、聞かせて。…声。』
今は、雨音が消してくれるから。
彼女はボクの背中にそっと腕をまわした。
夜の闇が、もう少し続いてほしい。
だけどほんとは、離れなくても許される朝がほしい。
☆☆☆つづく☆☆☆
訪問ありがとうございます。
気が向いたときに、気が向いたように…そんなお部屋です。
このお話の最後に書きたかったことは<フタリノジカン(50)>にあります。
いろいろありますが。
ユチョンが眠れていますように。
たった一度の人生。
思うように生きて、幸せでいてほしい。
気が向いたときに、気が向いたように…そんなお部屋です。
このお話の最後に書きたかったことは<フタリノジカン(50)>にあります。
いろいろありますが。
ユチョンが眠れていますように。
たった一度の人生。
思うように生きて、幸せでいてほしい。