さみしいうさぎ☆からの恋文(ユチョンに恋する時間)

さみしいうさぎ☆からの恋文(ユチョンに恋する時間)

書きたいと思ったことをただ書いてます。

訪問ありがとうございます。
気が向いたときに、気が向いたように…そんなお部屋です。
このお話の最後に書きたかったことは<フタリノジカン(50)>にあります。

いろいろありますが。
ユチョンが眠れていますように。

たった一度の人生。
思うように生きて、幸せでいてほしい。
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(8)

雨音が聞こえる。

目を覚ましたボクは彼女を見ている。

たぶん彼女は、いつも考えてる。
この恋はいつか終わる…って。
だからこの一瞬がすべてだと思ってる。

…好きって気持ちはどこからくるんだろうね。
そしてどこに行くんだろう。

まだ眠る彼女の耳にあるピアスをそっとはずす。
そしてベッドサイドのトレイの上に置いた。

…カラン

乾いた音がする。
彼女が目を覚ましていないのを確認して、枕の下に隠した小さな箱を取り出した。

ピアス。

ボクのストーンは黒。
彼女のストーンは白。

あとはお揃いのピアス。
さっき、ボクがつけてるのを見て<好き>って言ってたから、きっと気に入ってくれるだろう。

それにしても。
眠ってる彼女にピアスをつけてあげるのは、少し緊張する。
お願いだから、動かないで。
慎重に、そっと、そっと。

頑張ってつけ終わったら、今度は起こしたくなる自分勝手ぶりに笑ってしまう。

つけたピアスのすぐそばにそっとキスした。
彼女が小さく動いて、ゆっくり目を開ける。

『ユチョさん??』 

『よく似合ってる。』

『え?』

ベッドサイドにもう一度手を伸ばして、彼女がピアスをつけるときに使っている小さな鏡を取った。

『気に入ってくれたらうれしいんだけど。』

『…あ。』

『どう?』

『これって…。』

『プレゼント。ボクなりに考えたお揃い。』

彼女は体を起こして、ボクのピアスを確認する。
そして鏡でもう一度自分のピアスを見てる。

…かなり無防備ですけど。

『ありがとう。』

『気に入ってくれたみたいでよかった。』

『うん。』

笑顔でうなづいて…ボクを見る。
そして視線に気づいて、慌ててベットに潜り込んだ。

『お礼のサービスかと思った。』

彼女が首を横に振る。

『だってうれしかったから。』

『そっか。よかった。』

窓の外の雨音が少し激しくなる。

『ユチョさん、明日は…。』

『朝には帰らなきゃ。』

二人の視線は時計の針に。

…午前三時。

もう少し、感じあっても大丈夫だよね。

朝が来れば。
ボクがずっと先まで彼女をつなぎ留めたいと願ってるなんて夢にも思わないまま、ボクの刻み付ける記憶を抱えて切ない時間を一人ですごす。
その切なさの闇の深さをボクは知ることはできないんだけど、それでもいつか彼女にも<永遠>を願ってほしい。
願ってほしいと、ボクは彼女を…。

『思いっきり、聞かせて。…声。』

今は、雨音が消してくれるから。

彼女はボクの背中にそっと腕をまわした。

夜の闇が、もう少し続いてほしい。
だけどほんとは、離れなくても許される朝がほしい。


☆☆☆つづく☆☆☆



(7)

ボクたちは始まったばかりなんだけど。

ボクは時々、彼女は自分と出会わなかったほうがよかったんじゃないかと思ってしまう。
それは今日みたいにボクがあまり見たことがない彼女の中の<あたりまえの景色>を見たとき。
天気がいいのに外に行けないとき。
ほかにもいろいろある。

今は時々、夜のコンビニとかちょっと散歩とかしたりするけど、最近のボクたちの仕事の感じで、もう少ししたらそんなことも一切できなくなるんじゃないかと思っている。
そうなったら二人ですごす時間がこの部屋と志乃さんのお店以外になくなってしまうんじゃないかな…。

そう考えると苦しくなってしまう。

彼女のことを想うなら、引き返したほうがいいのかもという想いが頭から離れなくて。
だけど、どうしても手放したくなくて。
結局、彼女が<普通の時間>を望む以上にボクのことを忘れられないようにしようとしてしまう。

傷つけたくない。
変わってほしくない。
でも、刻みつけたい。

そして、今も。

もういろいろ考えすぎてボクはもういっぱいいっぱいなんだけどな。

おにぎりを食べてる彼女をさりげなく見ながら、気づかれないようにベットの枕の下にプレゼントを隠した。

『ユチョさん、飲み物飲まないの??』

彼女が床にペタンと座っておにぎりを食べている。
気のせいか…ゆっくり。

『今はいいかな。リンちゃん、おいしい?』

『うん。12時間ぶりの食べ物だし。』

『今日は大事な<おやつ>は食べなかったわけ?』

『だって、ディナーのためにおなかを…あ。』

『…あ。』

彼女があははってごまかし笑い。
そういうことか。

彼女のおにぎりを食べるスピードがさらに遅くなった。

今日のことは申し訳ないと思ってる。
思ってるけどもうボクは限界。

だから一瞬躊躇した後、あと一口になったおにぎりを取り上げてしまう。
ボクが食べてしまうのをみて、彼女はボクがふざけてるのかと思って笑って言った。

『ユチョさん、ひど…い。』

そしてボクの目を見て、そうじゃないことに気付く。

『ユチョ…さん??』

『ごめん。あと一口が待てなかった。』

『え?だって。』

そのままキスして、抱き上げた。
で、ベットの上に。

『おにぎりの件はディナーの件も含めてゴメンねって思ってる。』

『…うん。伝わってる』

『でも誕生日が来て、一つ大人になったから、どれくらい大人になったか確かめないといけないと思うんだ。』

『そんなに急に変わるわけないもん。』

『そうかな?』

『そうだよぉ。』

『どうかな?それは今からボクが決めるから。』

めちゃくちゃな理由をつけてる…かな?

『イチゴプリンもまだ食べてないし…。』

『デザートは後からって決まってる。』

ちょっと強引だけど。
ベットに抑え込んで深く長く唇を重ねる。
キスが長いと息ができなくなるみたいで、仕方ないから解放してあげた。

『おにぎり味。』

ボクが言う。

『ユチョさんもだもん。』

『そっか。』

見つめあって。そっと微笑みあう。
だけど、真面目な顔して先にシャツを脱いだら、ボクから視線をはずす。

『ユチョ…さん??』

『え?』

『ピアス。』

『ピアス?』

『初めて見る。たくさんもってるとは思うけど。』

『今日初めてつけたんだ。こういうの、好き?』

『うん。好き。』

『ふ~ん。ボクのことは??』

『…。』

『リンちゃん。』

『…大好き。』

『よかった。』

キスをしながら、彼女のブラウスのボタンをゆっくりと外していく。
彼女の吐息がボクを不思議な気持ちにさせる。
追い込まれるような、狂おしいようなそんな想いを少しずつ溶かしていくようなそんな感覚。
素肌で触れ合うとそんな感覚がどんどん強くなっていく。

オンナノコはどうしてこんなに柔らかいんだろう…。

首筋に唇を這わせながら、指先で探った。

『ユチョン…。』

彼女が優しくボクの名前を呼んだ。

『…大好き。』

『…知ってる。』

彼女はふわ…っと笑った。そして目を閉じる。

ここからは二人だけの時間。


☆☆☆つづく☆☆☆





(6)

地下鉄のホームで、彼が無口になってしまった。 

…怒らせちゃったのかな??

『ユチョ…さん。』

『え?』

『怒った??』

『怒ってない。』

ちょっと不安になってきた頃に次の電車がやってきた。

『行こっか。リンちゃん。』

そう声をかけられて顔をあげるといつもの笑顔があった。
あたしは差し出された手を繋ぐ。

空席の目立つ車内にならんで座る。

『リンちゃん、ほんとはスゴい混雑してた方がよかったとか?』

『なんで?』

『くっついてられるから。』

くっついて…。
それもいい気がするけど。

『ユチョさんじゃないもん。』

『あ、バレた??ボクはめったにのれないなら大混雑で密着したいかも。』

今度はあたしが無口になる。
なんて答えていいのかわからない。

『リンちゃん、怒った?』

『怒ってない。』

彼が前を向いて言う。

『ボクは、ちょっと苦しくなっただけ。』

『え?』

『ボクはリンちゃんがしたいと思ってる事、どれくらいかなえられてるのかな??って。』

『ユチョさん??』

『ただそれだけ。でも、今はいい。いっしょにいるから。』

あたしは彼に少しだけもたれかかる。
見えないけど、彼が笑顔になってくれた気がした。

『リンちゃん、降りるのどこだっけ?』

『3つ向こう。』

『3つしかないんだ。』

『うん。』

『もうちょっと、乗ってたいのにね。』

『うん。』

もっと。
当たり前の風景をいっしょに見たいね。

家の近くの駅で降りて、あたしの部屋への歩きなれた道を歩く。
穏やかになった空気にちょっと安心したら、おなかがすいてることを思い出す。
絶妙のタイミングで目の前にコンビニが…。


『ねぇ、ユチョさん。』

『え?』

『…コンビニ。』

『あ、寄る?』

『うん、あのね、ちょっとだけおなかすいた。』

控えめに言ったら彼はちょっとあせった感じになる。

『…ゴメン。』

『そっか、ユチョさん、おなかすいてないもんね。』

『そう…かな。』

あたしが笑うと、彼も笑った。
また少し空気が軽くなる。

『じゃあ、なんでも好きなの買ってあげる。』

『コンビニで??』

『まぁ、そうなっちゃうけど。』

『じゃあ、高級おにぎりにしよ。いくらかな?やっぱり。』

『いいよ。』

『あと、デザートも買ってっもらおうっと。』

『イチゴプリン??』

『うん。あるかな???』

二人でコンビニに入る。
普段は買わない<高そうな>おにぎりを手に取った。
彼がかごをさしだす。

『なんでもいれてください。』

『はぁい。ユチョさんも飲み物とか買う?』

『え?買っていいの?』

『え?なんで??』

『さっき<家まで送って>っていったから、玄関で追い返されるのかと思った。』

『そんなこと…。』

『なんだ。いいんだ。』

あたしは黙っていちごプリンをかごにいれる。
あと、ジュースとかお菓子とか目についたものを入れた。

『たくさん買うんだ。』

『だって買ってくれるんでしょ?』

『うん。』

レジで支払いを済ませる彼の背中を見ていた。
そしてまた歩き始める。

『リンちゃん。』

『なあに?』

『…ゴメン。』

『もういいよ。』

『でもなんか、おにぎり買ってたらますます申し訳なくなっちゃって。』

『イタリアンのコースがいくらのおにぎりに化けたから??』

『まあ、そういうことだけど。』

『いい。<おめでとう>って言ってもらったから。ある意味忘れがたい1日にもなったし。』

『うわ。ますますボクの立場がない。』

部屋の前についた。
鍵をあけて中に入ると、ドアをしめた彼が左手で眼鏡をはずした。

『リンちゃん。』

あいまいな笑顔で壁際に追いつめられる。
顔が近づいてくるから目を閉じた。

軽く唇がふれる…だけじゃない。

『ん…っ。』

『こんなの、ここでしかできないし。』

で、もう一回。

『リンちゃん。』

『…はい。』

『早く、おにぎり、食べちゃってくれる??』

そういってあたしの顔をじっと見る。
そして、笑顔になったけど、ちょっと胸が苦しくなる笑顔だった。


☆☆☆つづく☆☆☆