蔦と大穴蔦と大穴雲ひとつない空から幾つか蔓が降りていてわたしはそれらに掴まっている陰影の見えぬ大穴の上蔓は滑り易く昇れど昇れど安息の地は無く遠くに見える誰かのシルエットがわたしを静かに焦らせるわたしはその穴に落ちたことがないはずなのにそこからの景色を知っている心地がする雨が降っていた時も晴れていた時もあった空を見る気にはなれなかったが気付くと蔓に掴まったままのわたしいつも少しは昇っているものだ