おおみやものがたり by靖子

《晴れ、ときどき涙》

ニノと仲良くなってから、もう20数年?

アイツが入所してすぐ、オレになついてきた

ダンスのステップを教えて欲しいとせがんできたんだよな

かと言って、オレは世話焼きじゃないから、ステップを1つ2つやって見せる程度だった

それでもニノは嬉しそうに教わって、丁寧にお礼をいつも言ってくれた

京都にいるときは、毎晩アイツから電話が来たっけ
だから寂しい気持ちも忘れられたんだよな…

数年して、アイツには芝居の才能がすごくあることが分かった

天城越え、硫黄島からの手紙
映画やテレビに疎いオレだって知ってるクリント・イーストウッドがニノのために役を作ったって
(硫黄島からの手紙は嵐になってからだけど)

そんな大変なやつと同じグループでデビューしたなんて

踊れるヤツラが集まったって触れ込み
でも京都にいる間にすっかりJr.の中でも、ファンを大勢かかえてる他のメンバーに比べて、知名度の低いオレは行く先々で
「あの子は誰?」
と囁かれた

人知れず涙

もともとジャニーズを辞めようと思ってたのを踏み留ませてくれたのはニノのおかげ

アイツも実はジャニーズを辞めようと思ってたと聞いたから

だけどアイツは
「大野くんと同じグループなら!」
って…

ニノは昔からとても不思議なヤツだった

ゲームばかりして、それでいて人の会話もちゃんと聞いてる

何故かオレのケツを触ってばかりしてた
他にも何かにつけてちょっかい出してきてははしゃいでた

芝居だけじゃなく、ダンスもセンスがあって、すぐに難しいステップも覚えてたっけ

売れなくて辛い時期も、こんなオレがリーダーとして腐らずやってこれたのは、ニノはじめメンバーがオレを持ち上げてくれたから

やなことがあっても、ニノとじゃれあってたら、いつの間にか忘れてたような

雑誌とかの2人の仕事のときは、ただふざけあいながら撮影やインタビューを終えてたっけ
2人の仕事は仕事とは思ってなかった気さえする


ニノには何度か、スクープがあって、もちろん彼女がいた時期もあったんだけど

オレらのスキンシップは変わらずあった

子犬のようにじゃれあって、撮影用の高い衣装にドーランやなんかをつけて怒られてたな

そう、いつまでも、そんな仲の良い兄弟みたいでいられると思ってたんだよ

あのハワイブラストまでは

オレはほんのちょっと機嫌が悪かっただけなんだよ

あの日からニノからのスキンシップが無くなっちゃったんだよね

もちろん時期的に、ハワイのせいじゃなくて、ニノがいまの奥さんと付き合い始めたからかもしんない

だけど、スキンシップが無くなって、初めてオレの中でのアイツの存在意義が分かった気がするんだ

ケツを触られるのが当たり前だったのに無くなって寂しくなったオレはゲイなのかなと思ったり、

いや、オレだってスキャンダルのひとつやふたつあって、もちろん彼女がいた時期もあるし

それでも、ニノに触れられなくなって

寂しい自分に驚いた

結婚して、子供にも恵まれて、オレは心からニノの幸せを祝福してる

でも、やっぱり淋しいんだよ

一人でいるのは好きなんだけど

一人残されるのはやっぱり淋しいの

寂しい、淋しい?

ふと涙がこぼれる

今は休止して仕事から離れて自由に暮らしてる

涙がこぼれるのは、ニノからたまに届くLINEを読むとき

内容はたいしたことないんだけど、

LINEが届くたびにニノの存在を感じるから

今日もいい天気

だけどLINEが運ぶオレの心の中の雨雲が

涙となってニノを思い出させる

ーー
大野智〈暁〉