あく抜きをして、茹でると
香りがいい。
懐かしい香りと共に、幼いころの風景も浮かんできた。
母にツワを冷凍保存しているから楽しみにして。と伝えた。
ニッコリと微笑んでいた。
母が「家に帰る」と言ってから
ずいぶんと時が過ぎてしまった。
病院の不思議な対応が続き
これまでに
母は7回も麻酔を受ける処置などを繰り返した。
母の様子が目に見えて弱ったのは
去年夏の終わり。
9月21日、感染症陽性から。
9月20日、予防接種再開。
前の週から居ても立ってもいられない状態で駆けつけた。
病院に着いたときは、検査の結果がでようとしていたとき。
なぜ接種をなされたのか。
陽性の結果を知らされたとき、よろしくお願いします。と頭を下げたものの
憤りを抑えるのに必死だった。
ナースステーションを出る間際に振り返って
「看護師さんがたも予防接種なさったのですか」
と聞いてみたけれど
返事をなさるかたは、ひとりもおられない。
見つめたままエレベーターへ向かった。
その後、胆石、ペースメーカー入れ替え、肺気胸、胆管ステント取り外し。
年末からハプニングが続いた。
母と私は体質が似ている。
麻酔に弱い。
医師は、部分麻酔だとおっしゃるけれど
80歳を超えた者と同じであるようには考えられない。
高齢者の1日は早い。
ものすごく。
激しい雨が続き、自分の体を動かすことが困難になった。
1日は休んで、次の日から車で移動。いくつかの要件を済ませた。
連休が3日も続くと、役所の仕事も停滞する。
代理人はゴルフらしい。
日本は大丈夫かと思う時。
代理人の尻を叩くように資料を送信しつづけた。
連休明けても動きはなく、母に会いに行こうと決めた。
たくさんの花が咲いていたこと。
立派な水仙が咲いていたこと。
お風呂の燃料を使ったお湯はぬるいこと。
天日(ソーラーシステム)は、水を加えるほど熱くなって気持ちいいことを伝えた。
ヨモギの若芽がでていること
もう少し大きくなったら収穫して保存しておく。
母の体にいいもの、母が好む食材の保存方法を聞いてみる。
梅の花が、とても綺麗だったから
まだ梅の実は成っていないけど
梅のエキスを作りたい。
青いままの梅を保存したいことを伝える。
母は親指と人差し指で丸を作って梅の実の大きさを示した。
種を取らないと痛むでしょ?
母は冷凍しておけばいいと言って
また丸を示した。
そのとき、母の口元に力が入って
大きく息をするかと思っていると
声を上げて泣き出した。
母は家に帰りたい気持ちいっぱいだ。
役所の手続きが進まないことに
不安を持っていたことを見透かされたように思えた。
役所の手続きどうこうではない。
母を家に返すこと。
母を家に連れて帰ればいい。
病院の言うこと、役所の言うこと
それぞれに違う。
母は家に帰りたいだけだ。
ハプニング続きで、わたしが怖気付いていた。
今の状態では、誤嚥性肺炎を起こしやすいことを画像で説明された。
母は強い。
家に帰れば、ケロッと元気になるように思う。きっと。
母の泣き声を聞いていて、再び覚悟を決めた。
梅の実は、母が家に帰ってから実るだろう。
その時、聞くといい。
ナースステーションへ行き
病棟長に、退院の日程を決めたいと申し出た。
1階へ向かうエレベーターの中で面会を終えたであろうかたがたが
「怯えたような表情をしている」と話しをなさっていた。
1階で先に降りてもらい、話されていたかたに話しかけようかと迷っていた。
聞いてどうする。
自分で感じたことは、憶測でも勘ぐりでもない。
直感だと思う。
母が黒っぽい服装のかたを、じっと目で追っている。
その黒い姿が近づいてくると眠ったように反応しなくなる。
人には防御本能がある。
できるだけ白い服装で出掛けていたけれど
今日は、黒に刺繍してある母のお気に入りを着て行った。
穏やかに過ごしていた火曜日。
友人の誕生日。
電話で話している間に
日没です。




