<「部屋に入ったら」の続きです。>

「ゆりちゃん」

彼がわたしの名前を呼ぶ。

ベッドの端に腰掛けていたわたしに
上半身の体重をかけ、
覆いかぶさるように乗って来た。

そのまま押し倒されると
執拗なキスが始まった。


お互いの口の中を貪るように
絡み合うシタ。

唇を塞がれたまま、
上から順番に攻められていく。

「激しいのと優しくされるの、
どっちがいいの?」

聞かれている間も
彼の動きは止まらない。

一瞬答えにためらいながらも

「優しいのがいい…」

かすれた声で答える。

「優しいのがいいの?」

「うん…。優しくして」



もしもここでもうひとつの方を
選択したらどうなったんだろう。

ハ・ゲ・シ・イ・ノ。

考えただけでどうにかなって
しまいそうだった。



彼の手が指が唇が
感じるところを探し当てて行く。

それに合わせて躰中の全ての神経が
気持ちいいことだけに
集中したがっていた。

カイラクの波間で揺れている
わたしに彼が耳元で囁く。

「ゆりちゃん、可愛いね」

「ちっとも昔と変わってないよ」

「どうしてそんなに可愛いの?」

彼の言葉は止まらない。

こんなときにそんなこと聞かないで。

カイカンだけを追求したいのに
言葉が邪魔をする。

お願いだから黙っていて欲しい。

そう思いながら、でも途中からは
もう何を言われてるのかも
わからなくなっていた。

五感も神経も何もかもが
キモチイイことだけに集中していた。



彼の手が少しずつ下へ降りて行く。

その手はわたしが
一番望んでいるところで、
ぴたっと止まった。

このまま焦らされ続けたら、
耐えられない。

お願い、早くして。

「あ」

彼の指が薄い布の中に
滑り込んで来た瞬間、
躰がびくっと反応した。

このときをずっと待っていたの。

心は叫んでいた。

(続く)