久しぶりの息子の中学校
私は約束の時間より
1時間以上早く着いていた
そんな時間なのに
もう親と登校してくる子がけっこういて
ちょっと驚いた
あちこちで記念撮影している
親子で満面の笑み…
もう私には
望めないと思っていた光景…
そんな思いで眺めていたら
ふいに背後から声を掛けられた
「お母さん!」
慌てて振り向くと
夫と息子たちが手を振って近付いてくる
涙が止まらない
「久しぶり!お母さん!」
そう言いながら私にまとわりつく息子たち
決して忘れることのなかった感覚
あぁ… 現実なんだ
私は2人を抱きしめて
号泣してしまった
「2人とも…
大きくなったね…」
息子たちも泣いてしまった
そして 夫も…
「みんなでお母さんを待ってようと思って
すごく早く来たのに先にいるんだもん」
次男が泣き笑いで
私にしがみつく
長男も照れ臭そうに
私の腕を掴んでいる
「ありがとう…
みんなに会えてうれしい…
本当にありがとう…」
そう言いながら
私は何度も息子たちを抱きしめた
夫はそんな私たちを
優しい目で見守っていた
ようやく落ち着いた私は
夫に頭を下げた
「今日は本当にありがとうございます…」
そんな私に夫は微笑みながら
「よく来てくれたね。
こちらこそありがとう」
そう言って私の涙を拭ってくれた
「さぁ時間はいっぱいある!
みんなで記念写真撮ろう!」
え? この声…
いつの間にか義両親が立っていた
「あ… お義父さん、お義母さん…」
慌てて頭を下げようとする私を制して
「今日はそんなことはいいんだよ。
孫の晴れ舞台だ!
さぁいっぱい写真を撮るぞ!」
一番テンションの高いお義父さん
相変わらずだな~と思っていたら
お義母さんが
「さぁ!みんな並んで!」
と私を促してくれた
久しぶりに親子4人で並ぶ
ダメだ… 涙が出る
「さぁ私さん!
そのままでいいから笑って!」
「お父さん、無茶言わないの(笑)」
そうだ、笑わなきゃ
前を向くんだ
「お!いいねぇ~ はいチーズ!」
「もう一枚!」
「お母さんも入って! はいチーズ!」
みんなのおかげで自然と笑顔になれた
卒業式が終わり
最後の記念撮影を終えた
「これから家でお祝いするんだ。
来てくれるかな?」
お言葉に甘えてお邪魔した
義両親も含めて
久しぶりの家族団らん
私が壊してしまったのに
家族が復活させてくれた…
涙をこらえながら
私は貴重な時間をかみしめた
団らんは夜遅くまで続いた
もう帰らなきゃ、と何度も思うけど
なかなかその言葉が言えない
息子たちも
私に色々話しかけてきて
私が帰らないようにしているのが分かった
だけど…
意を決して「そろそろ…」と言ったら
もう私より大きくなった息子たちが
昔のようにまとわりついてきて
「帰っちゃうの… 嫌だよ…」
と泣き出してしまった
「大丈夫だよ。
お母さんはまた来るから」
夫が息子たちに声を掛けた
そして私の方を向いて
「だよね?」
「うん… また来るよ…
必ず来るから待っててね…」
言いながら罪悪感が押し寄せてきた
それを見透かしたように夫が
「また… ゆっくり始めないか?」
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遅過ぎた後悔 本気で好きだった 身体を許す時 歪んだ猜疑心