「じゃぁお前は妻が浮気したのを
 騙されたんだから許せって言うのか?

 

 無理だよ…

 

 浮気したことに変わりないし」

 


「だから、そこはお前の気持ちだから
 許す許さないはお前次第だよ。

 

 ただ今に至った状況について
 弁護士として答えただけだよ。

 

 いや、友人としての方が大きいかな…」

 


「そうだよな…

 色々教えてくれてありがとう」

 

 

 

友人と別れた夫は
今までのことを振り返ってみた

 


友人が言ったように
妻は被害者かもしれない

 

だけど
妻が浮気したのは事実だ

 


あれほど浮気されて傷ついてた妻が
浮気するなんて今でも信じられない…

妻を許せるか?


そんな気持ちは全くわいてこなかった

 

 

そんな気持ちとは別に
激しく沸き上がったのは

彼と奥様、

そして会社への怒りだった

 


女を食い物にする彼のことはもちろん

 

そんな彼を会社が放置しなければ
こんなことは起こらなかった

 

そんな状態にしたのは彼の奥様
 

 

考えれば考えるほど
許せない気持ちが大きくなっていった

 

 

そして一番許せなかったこと

 


奥様は息子たちを傷つけた

息子たちに一生残るであろう
心の傷を植え付けたのだ

自分の復讐心のためだけに…

 


店長の意思を継ぐことを決めた夫は
友人の助言に従い
弁護士事務所を訪れた

 

友人も同席してくれたので
話はスムーズに進み
追加依頼の話はまとまった

 


「ご依頼承りました。

 ところで夫さん、
 私さんからご連絡がありました」

 


「あ、そうですか。妻は何と?」

 


「受け入れるそうです」

 


「そうですか… 分かりました」

 

 

許せない気持ちは確かにある
息子たちも同じ気持ちだ

だけど妻が受け入れると聞いて
寂しい気持ちになっていた

 


やはり彼に騙されて
彼を好きになってしまった妻は

 

もう俺のことなんて…

 


そんなことを考えていると

 


「私さんからお願いを預かってます」

 

 

「お願い?ですか」

 


「はい。2つありまして

 

 1つは夫さんと息子さんたちへの謝罪を
 自分の口からお伝えしたいそうです。

 

 何を言われても、されてもいいと、
 かなりのご覚悟のようです」

 


覚悟…

 

過ちを後悔しての
家族に対する申し訳なさなのか

 

それとも彼を選んでしまい
家族を捨ててしまうことの覚悟なのか…

どっちなんだろう…

 

 

夫が考え込んでいると

 


「すぐにお答えは出ないようですね。

 私さんには回答待ちとお伝えしておきます
 よろしいでしょうか?」

 


「あ、はい…

 すみませんが考えさせてください」

 


「もう1つは夫さんのご両親への謝罪です。

 こちらも同様でよろしいでしょうか?」

 


「はい。よろしくお願いします」

 

 

「では最後に私からお願いです。

 

 訴えるにあたり、
 私さんを原告とする必要があります。

 

 こちらから経緯をお話しして
 私さんに依頼してよろしいでしょうか?」

 


「そうですよね。

 

 お手数をお掛けしますが
 よろしくお願いします。

 

 謝罪の件はそれが終わってから考える、
 とお伝え願えますか?」
 

 

「承知しました。よろしくお願いします」

 

 

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