ベッドの中でも抱きしめてくれる彼くん

 

でも私の頭の中は
緊張と期待でごちゃまぜ

やがて彼くんの手が
私の中に入ってきた

 


…優しい

 


少しずつ
少しずつ

私の身体に彼くんの手がしみ込んでくる

 

 

いつもなら
すぐに声を出す私なんだけど

なんせここは彼くんの実家

必死に声をこらえていた


やがて彼くんが私に覆いかぶさり
私の中に入ってくる体勢に

 


…あぁ

 

やっと1つになれるんだ

 

 

だけど
なかなか彼くんはそこから動かない


…あれ?

どうしたんだろう

 

しばらくすると
彼くんは元の場所に戻り

 

私を抱きしめた

 

…え?

 

しないの?

 

すると彼くんが耳元でささやいた

 

 

 

「ゴメン… やっぱりできないよ…」

 

 

 

え?

どうして?

なんで? 

 

 

 

私を抱けないってこと?

 

 

 

 

彼くんの言葉を聞いた瞬間

 

今までの自分が走馬灯のようによぎった

 


あぁそうか…

私みたいな軽い女

こんな汚い女

抱きたくないよね…

当然だ…

 

 

 

私は両手で顔を覆って泣いてしまった

今までの自分の行いのせいだ…


すると彼くんが私を強く抱きしめ

 


「こんな簡単に抱いちゃいけない気がして…

 

 ゴメンね、これじゃ俺って
 ただ抱きたいだけの最低男だったね…

 

 ホントにゴメンね…」

 

 

なんと彼くんは
そこまで真剣に私のことを考えてくれていた

 


さっきよりも涙が出てきた

私も彼くんに強く抱きついた


「ありがとう…
 嬉しいよ…
 ありがとう…」

 


忘れられない夜になった

 

 

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