彼女が色々話し掛けてくれてたみたいだけど
全く耳に届いていないどころか

そこからの記憶が正直言って無い

 


「ねぇ、聞いてる?」

 


やっと彼女の声が聞こえた時
お店の隣のゲーセンにいた

「あ… ゴメン全く耳に入ってなかった」

「まぁそうだよね~
 で、どうする?」

 

「どうするって…?」

「確かめなきゃいけないじゃん!
 ちゃんとアンタと付き合うのか?って」


そうだ…
 

彼くんの言葉はどうとでもとれるな…


「うん… そうだね…
 でも、やっぱりいいよ…」

 


あれだけ積極的だったくせに
いざ現実になってみると


私はビビってしまっていた

 

 

「ダメだよ。せっかく彼くんが
 あんなこと言ってくれたんだから。
 

 今夜がチャンスなんだよ!」


確かにそうかもしれない

だけど…


「やっぱりいいよ…

 

さっきの言葉は
そんなつもりじゃなかったって
言われるかもしれないし…

 

そうしたら私
もうあのお店に行けないよ…」

 

 

「分かった。じゃぁこういうのはどう?

 

 もうすぐ彼くんの仕事が終わるから
 私が彼くんに
 あの子が待ってるよって伝えるの。

 

 それで来てくれたら
 ちゃんと話ができるでしょ?」

 


同じ気がするけど…

 

でも自分で行く勇気は全く無かったから
彼女の提案に乗っかることにした

 


「ありがとう。
 アンタが友達で本当に良かった」

 

 

 

彼くんの仕事終わりの時間

私はゲーセンで1人
落ち着き無く待っていた

 彼くんは来てくれるかな…

 来てくれたら何話そう…

 来なかったら
 お店に行きづらくなるな…

しばらくしたら
彼女がゲーセンに入ってきた

 

 

 

 

 

彼くんが来てくれた

 

 

 

 

 

慌てて立ち上がる私
でも言葉が出ない

それどころか
彼くんの顔も見れない…

 


俯いたままの私に彼くんが近づくと

何も言わず私の肩を抱き

そのまま歩き出した

 

 

 

 

 

本当だったんだ…

 

 

 

 

 

私は嬉しさで泣き出してしまった

彼くんはそんな私の頭を撫でながら

「行こうか。俺んちでいい?」

私は泣きながら
何度も頷いた

電車に乗り
彼くんの家へ向かった

 

 

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