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薬草歳時記  ボタン(牡丹)

 

 5月初旬頃目をひくのは大輪のボタン、今はちょうど美しい花が咲いている時期です。現在は花を愛でて楽しむ植物ですが、かっては薬用植物としての利用が主でした。

 花が美しく華やかな事から、「百花の王(ひゃっかのおう)」と呼ばれます。王という部分を、薬効と結び付けて記憶する事が出来そうです。

 

王は統治のための情熱を持つべきだが、過ちのないよう『冷静』に対処しなくてはならない。ボタンは、クールダウンさせる薬効(清熱涼血)を持ちます。

王は統治のため、組織間の連携が『滞らない』よう手を尽くさなければならない。ボタンは、身体各部を巡る血流を活性化する薬効(活血)を持ちます。

そして王は失政が続けば、その地位を追われ厳しい仕打ちを受ける。ボタンは、根の芯部分を引抜かれ根皮だけを用います。

 

考え合わせれば「不快な熱感(のぼせ/ストレスや老化過程で起こる)」「痛み(固定性の刺痛)」の際の治療薬、加味逍遙散・桂枝茯苓丸・大黄牡丹皮湯などの漢方薬に配合され活躍します

 

 ボタンは中国西北部原産、8世紀頃(飛鳥~平安)に日本に渡った植物。もとは、薬用植物として渡来しています。種から育てると花が咲くまで5年以上必要(~10年)、株増しの難しさからなかなか見られず高価だったボタンも、戦後に接ぎ木栽培(シャクヤク根に枝刺しする)が成功したため、各地で楽しめる様になりました。

 

写真のボタン園を訪れたのは夕刻。空を見据え毅然とした花姿が、夕照でより赤く浮かびます。戦いの前の静けさの様な、前を向き震える意志の様なものを、そんな事を眺めながら感じました。

 

わたしは田畑で働いた/夜明け前から日暮れまで/わたしを残らず捧げる作業だった/草笛はのっぺりとした丘全体に沁み/夕焼けはアスラの色だった/輝く物はここにはなかった/何ひとつなかった  苗はまっすぐに伸びた/年若い者は甲高い声ではしゃぎながら畑を周った/年配の者は繰り返す日常にうんざりした表情だった  日々成長するものを見るのは嫌だった/迷いなく伸びるものを見るのは嫌だった/教育のない使役人で終わるのは嫌だった/父や祖父やそれに繋がるひとのように/あっけなく死んでいくのは嫌だった  わたしは何に実るのだろう/遠い雷鳴ふたつ/運命は嘲笑う/命は貸したものだから時期が来れば返してもらうよ/お前の骨はこの土に晒されるのだ/疲れ切った農夫の汚れた歯の色で/惨めに晒される  牛たちは臆病に後じさった/不安は誰の胸にでもある  夕焼けはアスラの色に/わたしはあの恐ろしい色に戦いを挑む/間もなく/世界は鈍い血の色に染まる 

         (詩・アスラと夕暮れと私 / 梶久幸)

 
文中の 漢方薬の読み
加味逍遥散 かみしょうようさん  桂枝茯苓丸 けいしぶくりょうがん
大黄牡丹皮湯 だいおうぼたんぴとう 
 
 「血流の悪化(病的な理由、もしくは環境要因から影響を受けた)」について、具体的な病症は『痛み』です。痛みの特徴は、固定性の刺痛。いつも同じ場所が、針で刺すように痛い状態で現れます。生理痛や頭痛などが代表的です。