射精責任     ガブリエル・ブレア   村井理子訳

最近になって、妊娠の事後予防薬、所謂、アフターピルが、処方箋なしで購入できるようになったというニュースを聞いた。これを使うことは、性犯罪による妊娠を防ぎ、望まない妊娠をなかったことにする。
だがしかし、男性の勝手な行動で、女性がなぜ、薬を飲み、生理を無理やり起こしてまで避妊する必要があるのか。あの薬は改良が進んではいるものの 色々と強い痛みや月経困難症など、女性の身体に良いことなんて、何もないのに。と、常日頃腹立たしく思っていた。
それはさておき、

本書にある、例え話から入ろう。

あなたの家の玄関前に毎日毎日生ゴミを捨てる人がいる。同時に1ヶ月に1度だけ気まぐれだが、必ず、生ゴミを玄関前に置いていく人がいる。
さて、あなたが注意しやすいあるいは、通報しやすいのはどちらの犯人か。


アメリカでは、人工妊娠中絶の99パーセントが「望まない妊娠」。政府は人工妊娠中絶の多さを懸念し、全州で、中絶に関して議論がなされています。しかし、その全てが「女性」に向けた議論。つまり、女性が中絶をする権利があるか否か。(つまり胎児の命を、女性が絶たせる権利)

背景と調べ]    そもそもアメリカはキリスト教の国 そしてプロテスタントが多い
プロテスタントの福音派は、中絶禁止 
トランプが最高裁の裁判官の3分の2を福音派から選んだことで、中絶禁止に拍車がかかった。
正に選挙の争点。政治の中心matter。
中絶を認めるか否かで、アメリカを分断する大事になった。

齋藤圭介氏によるあとがき解説に、我々日本人にもわかりやすいように書いてある。以下 要約

  この トランプによる、最高裁新判事の任命によりその、公聴会で中絶についての男性政治家の議論があった。それを聞き、怒り心頭となったブレア女史が、その思いをTwitterに63件の怒涛のツイートを行ったのがきっかけ。このツイートの反響が凄まじく、数時間後には 報道機関から問い合わせが来た。
  そのツイートをブログにまとめ書籍化したものが本作となる。


 著者は、女性ではなく男性に目を向け、望まない妊娠の 原因である男性にもっと責任を強くもち、自分が起こす行動が。女性をどれだけ傷つけることになるか、強く訴えています。
アメリカは、本当に、人工妊娠中絶の制限をかける動きがあるようです。

ごみ捨て犯人の話に戻そう。

女性は1ヶ月に24時間しか卵子を出せない。しかし、精子は事情が違う。1度侵入してしまえば、なんと、その精子は5日間受精可能なのだ。月曜日に仕込んだ?ものが金曜日に受精へと漕ぎつける。なんという生命力だ。
それを男性は死ぬまで いつなんどきでも使い、女性を妊娠させることができるのだ。
著者が計算したら
男性    生殖可能日数   2万4820日
女性                              480日 (1ヶ月48時間として)

さあ、ごみ捨て犯人だ。
望まない妊娠を防ぐために 1ヶ月に24時間しかないその不確定な日時を解明するのに医療がお金をかけるの(今だ正確な排卵日はわかっていない)は、とても偏った考えで、
避妊に関しては、女性側が全てできることはなんでもしないといけないという風潮は、科学的根拠からもナンセンス過ぎる。

若い女性やパートナーのいる女性は、絶対にこの本を読むべき。様々な危険が 知らされないまま、いいように女性に犠牲を背負わせている。
男性はもちろん読むべきです。言うまでもない。そして 知識を取り込んで貰いたい。

全体として、やはり 男性中心の父家長制度を基盤とした世界なのだと思いました。
女性があまりにも虐げられてきた。
危険を冒すのがどうして女性側と決まっているのか。腹立たしい。
男性は、女性が冒し続けてきた危険を この本を読んで 知って欲しい。おそらくあなたのパートナーは、そんなことはあなたに話さないだろうから

読んでいて腹が立ったりイライラが募ったりしますが、目を逸らさずに最後まで、1日も早く読んでいただきたい。
この感想文では、中身の3分の1くらいしか取り上げていません。とても言葉にするのが生々しく、精神的に辛いものがあるからです。ですから、ぜひ全文を読んでください。短いのですぐ読めます。途中で‪💢になって休憩とかしなければ。


最後に、この本で語られる男性は、アメリカ人なので、事情は日本人男性と異なることを、それもおおーーーーきく異なることを期待してやみません。




覚書として 参考に
<アメリカの『中絶をめぐる』の歴史と現状>あとがきをかいつまむ。

1.  プロライフとプロチョイス
アメリカでは、中絶に対する考え方で市民社会が二分している。 中絶に反対は、プロライフ(生命尊重)、賛成は、プロチョイス(女性の選択権の尊重)

2.    1973年のロー判決のインパクト
アメリカでは多くの州で、中絶が禁止されてきた。それに対してロー判決では、妊娠中絶を禁じるテキサス州法を違憲と判断した。
この判決により、中絶の自由化の流れが作られた。

3.  ロー判決後のバックラッシュ  
プロライフ派は、ロー判決に異論を唱え、禁止が違憲なら、厳しくしようと様々な条件をつけ、中絶を施したクリニックに公金がいかないように嫌がらせをするなど、ありとあらゆる手で中絶に反対していった。その結果2022年6月には、連邦最高裁が、ロー判決を覆してしまった。ミシシッピ州の中絶に関する州法で、憲法は中絶の権利をそもそも与えておらずミシシッピ州の州法は違憲ではないと。これにより50年間認められてきた女性の中絶手術を受ける権利は、それぞれの州の判断に委ねられることとなった。
しかし、バイデン大統領は、この判決を強く批判し、「女性の健康と命を危険に晒すものだ」と避難した。中絶手術をするために他州へ向かう女性たちを保護する西海岸の知事も現れた。
アメリカにおいて、女性が中絶をする権利は、かくも脆いものであるかがよく分かる。

<日本の今>
アフターピルに続き、2023年4月 やっと厚生労働省が経口中絶薬を認可した。世界の潮流からすると遅きに失した感。