6月の洋書として Black Box Thinking をご紹介しています。
今回は第9章
Marginal Gains
マージナル・ゲイン
イギリスのプロサイクリングチーム、Team skyの話。
イギリスは、ツール・ド・フランスが1903年に創設されて以来、一度も優勝したことがありませんでした。2009年にチームは5年以内に優勝すると発表し、その発言通り、2012年にはイギリス人ライダーとしてBradley Wigginsが初勝利をおさめました。
これまで一度も優勝できなかったのに、なぜ勝つことができたのか?
それは、勝つという目標のために、小さなことをコツコツ頑張って積み上げていったから。
If you break down a big goal into small parts,and then improve on each of them,
you will deliver a huge increse when you put them all together.
大きな目標を小さな部分に分解して、それぞれの改善をすると、
全てをまとめたときに、大きく増進するだろう。
それはもっと大きな問題に取り組む際でも同じことです。
国際的な問題でも、国内の問題でも。
1つずつのプログラムを見ていくこと。
2つのグループに分けて、結果を比べることが必要です。
ケニアの一部地域で、無料のテキスト配布で生徒の成績が上がるかどうかを実験しました。
無料テキストを受け取った学校と、受け取っていない学校の2つのグループに分けました。
そして結果を比べたところ、生徒の成績はほぼ同じだという結果でした。
テキスト配布が問題ではなく、テキストが書かれている言語が英語だからではないか。
ということで、視覚的情報のテキストに変更して実験を行ないましたが、これも同じ結果。
全く別の観点から、「虫下し」という薬を配布したグループと、配布しなかったグループを比べたところ、驚くべき結果が出ました。子供の身長が伸びたり、再感染が減ったり、学校を欠席する生徒が減ったりしたようです。しかも、この方法はあまりお金がかからないという利点もありました。
このように小さな取り組みで、グループ分けをして、結果を比べるということで分かる情報は貴重なものです。貧困のための大きなプロジェクトをしなくても、本当に必要で、するべき取り組みが分かります。多額のお金をかけても結果が伴わないなら、お金の無駄になってしまいます。
他にFIのマルセデス本社を著者が訪問した話も書かれています。
ケンブリッジ大学卒業のエンジニアで、テクニカルリーダーはこう述べています。
F1 is an unusual environment
because you have incredibly intelligent people driven by the desire to win.
勝ちたいという欲望に動かされるかなり賢い人々がいるので、
F1は稀な環境だ。
ピットストップで、1つ1つの細かい動きを観察して、改善していく。
その積み重ねが、F1への勝利へとつながります。
この動きを見るために、ある病院から医者が訪れたこともあるそうです。
その後、その病院では、手術室からICUへの受け渡しを改善し、エラーの数がかなり減りました。
このよう業界を超えて、良い取り組みを見て、自分の仕事に反映させることもできるなと感じました。この本の素晴らしいところは、そこにあります。例として具体的な企業や刑務所、病院、著名人などが出されていますが、ただの成功物語として読むだけでなく、どの業界でも誰にでも通用する成功への考え方が語られているからです。
次回は第10章をご紹介します。