6月の洋書として Black Box Thinking をご紹介しています。
今回は第8章
Scared Straight
アメリカで、若者の犯罪を減少させるプログラムとして始まったScared Straight。
すでに軽犯罪を犯している若者を刑務所に連れて行って、
刑務所の雰囲気や囚人の暮らしを見せることで、
彼らにショックを与えて、態度を改めさせようというもの。
未成年17人がRahway State 刑務所に行った様子はドキュメンタリーになり放映されました。
彼らは始めは、「これは遠足」ぐらいにしか捉えていませんでした。
囚人から罵声を浴びせられたリ、性的な嫌がらせ発言を受けたりして、
だんだんとおびえるようになり、絶対に刑務所には入りたくないと思いました。
参加後3か月たっても、17人中16人は犯罪を犯さないまま。
このドキュメンタリーは、後に、アカデミー賞を受賞し、プログラムの成功が称えられました。
同じようなプログラムが、カナダ、英国、オーストラリア、ノルウェーにも広まりました。
プログラムは大成功のように思えますが・・・・・
これを成功と言うには、いくつか抜けている部分がありました。
最大の欠点は、プログラムに参加しなかった場合との比較がなかったことです。
Often, failure is clouded in ambiguity.
What looks like success may really be failure and vice versa.
よく失敗は曖昧さの中で不透明になっている。
成功のように見えることが本当は失敗かもしれないし、反対も然り。
医療で言えば、ある薬で病気が治った、良くなったというのは、
薬を飲まなかった場合とを比べないと、本当の薬の効果が分かりません。
Scared Straightプログラムが成功だと多くの人から称賛される一方で、反対意見を述べる教授がいました。教授は、「プログラムに参加する」と、「プログラムに参加しない」に若者を分けて実験を行いました。結果は、プログラムに参加した若者のほうが、もっと多く犯罪を犯したということです。
People were convinced of the success of scared straight
because it seemed so intuitive.
人々がscared straightの成功を確信したのは、それがとても直感的だから。
教授のこの実験結果を聞いても、
scared straightの成功を称えていた人たちは、意見を変えませんでした。
それどころか、もっとそのプログラムの成功を信じるようになりました。
この実験結果が本当だと証明するかのような衝撃的な事実は、始めにこのプログラに参加し、ドキュメンタリーでもインタビューされていた男性が、後に万引きで逮捕された際、プログラム参加の3年後にはレイプと殺害事件を起こしていたことが分かったことです。
このプログラム、今でも続けられているようですが、
この章を読む限り、私はこのプログラムに反対意見を持ちました。
アカデミー賞まで受賞したドキュメンタリーで、大々的にプログラムの成功を称えてしまってから、今さらそのプログラムの欠点や、若者の犯罪をなくすどころか助長しているということなど、認めることができないのでしょう。しかし、プログラムの参加者の一人だった男性が、大きな事件を起こしたこと時点で、軌道修正しないのなら、この先いつ修正するのでしょうか。
このプログラムに限らず、世の中には、成功だと言われているプログラムや取り組みなどがたくさんあるように思えてきました。短期間に少ない情報から集められたデータと元に何かが成功だと言うことの危険性を感じます。
次回は第9章
Marginal Gains
マージナル・ゲイン
差益