- きりこについて (角川文庫)/西 加奈子
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そこには、黒白のブチや、真っ白や、キジトラや茶トラや、ふわふわの毛のや、そして際だって美しい黒猫とともに、きりこが立っていた。
水色のワンピースはふわふわと風のなすがままだったが、きりこの真っ黒い髪の毛は、そよともさやなかった。
あの子。
ちせちゃんは思った。
あの、お饅頭の子。
ちせちゃんは覚えていた。懐かしいな、そう思った途端、白いものがすう、と落ちていった。灰か？ちせちゃんは慌てて煙草を見たが、そうではなかった。
ちせちゃんは泣いていた。