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財政破綻後のデトロイト市の状況を見てみると、人口は2014年時点で約68万人、失業率は約18%、空き家率は約30%、子どもの貧困は約60%、読み書きできない市民の割合は約50%、そして治安に関しては全米でも断トツのワースト1位という状況です。先ほどのRenaissance Centerや、街のMain StreetであるWoodward Avenueから5分も歩けば、街の中心部にも関わらず高層ビルの廃墟がいくつも放置されています。男性でも日没までには宿に戻るよう言われるような環境でしたが、それでも今回デトロイトを訪れたかったのには2つの理由がありました。1つは、博士論文のテーマとして扱ったプレイスメイキングのメインの事例がデトロイト中心部の再生プロジェクトであったこと、そしてもう1つは、今後の日本でも急激に人口が減少し行政の財政も切迫していく中で、行政機能が不全に陥った都市がどのような状況になっているのか、さらにそこからいかにして再生しているのかを自分の肌で感じてみたかったことです。
今回の視察報告では、実際に現地で体感してきた街の雰囲気と、いくつかの再生プロジェクトをご紹介します。
ここは、かつてGrand Trunk Railroad lineという路線の鉄道が走っていました。鉄道の廃線跡は長らく放置され、ゴミが捨てられ浮浪者が俳諧するような場所になってしまっていましたが、連邦政府、デトロイト市、ミシガン南東部コミュニティ基金、デトロイト経済成長協会等によって、市民が安全に利用できる緑道として再生され、2009年5月に一部が一般公開されました。2016年4月には残りの部分もオープンし、約2マイルの緑道は市民ランナーやサイクリストによって利用されています。また、ところどころにあるグラフィティの質が非常に高いのも印象的でした。後述するEastern Marketや街の中心部も含め、デトロイトの街には至る所にグラフィティやミューラルがあり、アートが街の再生の1つの切り口となっていることが実感できました。
今回、デトロイトの街を1人で訪れてみての感想は、まず率直に今のタイミングで現地を体感できてよかったということです。2013年の財政破綻から4年が経ち、少しずつ再生の兆しが見え始め、国内のメディアでも様々な取り組みが取り上げられるようになりました。渡航前にそうしたメディアを通して持っていた印象は、沈没からの復活を図る都市の明るくバイタリティに溢れた空気感であり、治安面で懸念はあるもののポジティブな要素が大きい街であるというものでした。
しかし、到着してすぐ、その印象は180度変わることになりました。降りたった街は、Campus Martius ParkやカジノのあるGreek Townといった中心部のごく一部を除いてほとんど人通りがなく、高層の廃墟が立ち並び、雰囲気の良くない人が俳諧しているような場所でした。期待していたものとは裏腹に街の印象は鬱屈としていて、人通りのない裏道や廃墟の近くを通りかかると昼間でも身の危険を感じるような状況でした(実際に3日間の滞在期間中に市内で2件の殺人事件がありました)。今回ご紹介した内容は、再生の取り組みが実を結んでいるところが中心ですので明るい印象もありますが、市内のほとんどのエリアは下に挙げるような大小様々な廃墟が依然として残り、公共サービスも滞ったままの地域も多くあります。日本は公共サービスの質が元々高く、仮にデフォルトすることがあってもここまで荒廃することはないかもしれません。そういった意味でも、公共サービスや経済活動が機能不全に陥った街というのがどのようなものなのかを実際に体感できたことは非常に貴重な経験となりました。






