学生とカメののんびり小説投稿。 -7ページ目

学生とカメののんびり小説投稿。

将来兼業作家を志すとある学生のブログです。
短編と連作短編集を主に投稿していきます。長編にも挑戦するかもしれません。そして、釣りの話が混ざることがあります。
スローペースな投稿になりますが、良ければよんでください!


「私たちの家に来てから半年くらい経ってからだった。あの子が突然笑い出したの」


 蛍子さんは僕を見ながらも、どこか別の場所を眺めているような顔をした。


「それまで、何にも感情を見せなかったのよ、あの子。その時は嬉しさ半分、怖さ半分で、混乱したのを覚えているわ。でも、それから1日経つと、あの子は元通りになった。何も、感情を見せなくなった」


 蛍子さんは俯く。目を逸らすように。


「それから、一日おきにあの子の様子は変わっていったの。ある日は大笑いして、ある日は怒り続けて。男の子のようになった日もあったわ。それはあの子が中学生になっても治らなかった」


......それで、俺はおかしいと思って、蛍子に病院へと、連れて行って、もらったんだ」


 慎三さんは涙を頬に流したまま、しゃくり上げながらも話す。


「そうしたらな、医者に言われたんだ。あの子は"解離性同一障害"の可能性が高いって」


「解離性同一障害?」


 聴きなれない単語に、僕は思わず口に出す。


 障害って何なんだ? 彼女は何かの病気だったのか? 長い間一緒にいたにも関わらず、僕はそんなことにも気付いてやれなかったのか?


 頭の中で、様々な考えが駆け巡る。罪悪感と混乱が混ざり合い、息が上がってくる。


 そんな僕を知ってか知らずか、慎三さんは話を続けた。


「多分、多重人格と言った方が分かりやすいかな?」


......多重人格って、あのドラマとかアニメとかに出てくる、一人の人の中に何人もの意識がある、あれですか?」


「ああ、そうだよ」


 僕は記憶を辿り、出来る限り彼女のことを思い出した。でも、一向に彼女の真実への伏線は掴めない。


「どうして......なんで彼女は僕にそ!を言ってくれなかったんですか!」


 立ち上がり、机を強く叩きつける。静かな店内に音が響いた。


 頭が真っ黒な何かに浸食されていくのが分かる。

 そうだ、僕は今、混乱しているのだ。


 彼女が思い出せずに、彼女のことが信じられなくなっているんだ。


 蛍子さんが、僕を宥めようと隣まで来て、僕の肩に手を置く。


 それでも、鼓動は速く鳴り続けていた。