長岡弘樹 『時が見下ろす町』 (祥伝社) 1,620円
[作品紹介]
何か大きな見落としを しているように思えて ならなかった
のです――。祖母が祖父を介護する家に居座る孫、唐突に
同棲を快諾した恋人―、 鉢合わせした住人に違和感を抱く
空き巣……。変わりゆく町で繰り広げられる 一筋縄では解
けない事件とは その大きな時計は今日もまた 人々が織
りなす事件を見つめる―― 町のシンボル、大きな時計が目
印の『時世堂百貨店』が見下ろす町で 起こった、さまざまな
出来事を綴る。
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百貨店の隣に立つ一軒の家家で、和江は抗癌剤治療に苦
しむ40年連れ添った夫を介護している。 ある日夫の勧めで
気分転換に 写生教室に出かけることになり、孫娘のさつき
に留守番を頼むことに。 その日だけのつもりだったが、何故
かさつきは、そのまま居座ってしまい……「白い修道士」
和江の家が建つ前は時世堂の物置き、その前は製鞄工場
さらにその前は中古タイヤの倉庫…。それぞれのピースが
時間を超えて、物語を紡ぎ出す アケボノ製鞄の野々村
は 最後の駅伝ランナーとして参加した大会で 会社の敷地
内で起きた事件を、解決することに……「歪んだ走姿」
暴力団組員の五木は、幹部の和久井に中古タイヤの倉庫
に呼び出される。そこには、もう二人の構成員・市谷と寒川
もいて、サイコロを振るゲームをさせられることになる 果
たして、和久井の真意とは……「苦い確率」 その他、全8
編の“切れ味鋭い”物語が揃えられています。
特に、最初と最後の物話が繋がっていて、読後、輪廻転生
みたいな気分になりましたよ