久保田は決して器用な男ではありませんでした。
しかし、彼を一人前の美容師と育てることが第一の課題でもあり、徹底した英才教育をすることになりました。
当初、石坂現人財部長の下でスタートを切りましたが理屈が先に口を出ることもあり、常に議論を重ねていたのです。
それに応えている石坂君も我慢強く、丁寧に指導をしていました。
1年を迎える頃、デビューを迎えるチャンスが巡ってきました。
そのチャンスをものにする為、必死で頑張る彼がいました。
その組織体が、今の研修サロン(カットラボ)に結びついてきているのです。
カット技術はある程度の量をこなさないと、上手くなる事は難しいのです。
今は、カットウィックなる便利なものがありますから、練習をすることに事欠くことはありませんが、実際のお客様を対象に練習を重ねることは至難であるのです。
彼は1ヶ月間、徹底してこの訓練を受けることになり、見事1年でデビューを果たしました。
1度覚えたものは徹底して生かすのが彼のよさでもあり、その後の進化はお客様の信頼が得られ、急激に成長したことは押して知るべしです。
美容師が陥りやすい過ちに、ひとりのお客様に集中する余り、サロン全体にいらっしゃるお客様に注意を払えないことです。
UNIXの仕組みとしてダブル担当を受け持つことは多々あります。
しかし、このような仕事のやり方の為に、時には無視されたと誤解を招くこともあるのです。
しかし、彼が本来持っている能力がマネージメント思考ですから、サロン全体を把握しながら自分の担当のお客様の満足度もあげられる能力を備えていたのです。
そしてグリーンシティー店の主任を皮切りに、大宮店の店長時代には、この業界としては考えられない効率の良いサロンを築くまでになったのです。