私にはもう一つ大事件がありました。

私が生まれた母の実家とはとても親交があり、母の里帰りと共に連れて行かれ、祖母や叔父や叔母にはとても可愛がられました。しかし、そこの長男坊とは余り気が合わずケンカをすることが多々ありました。あるとき上中里にある平塚神社で祖母から買っていただいた、草もちを食べていると、その長男坊がやってきて奪っていったのです。

 頭にきて年長である私は彼をボコボコにしてしまいました。それを見ていた叔母が私に激怒、母に叱られることはいつものことですが、叔母から叱られたことはとてもショックでした。私はこの家にいることは出来ない!決心し、なんと歩いて志村まで脱走を試みたのでした。

 当時よく通っていたのは都電の電車道で、その道は知っていました。その道を小学校3年生が歩いて数時間、その道のりの長さは半端ではありませんでした。途中で休み休みでありながら志村の寮に返ってきたときは日もとっぷり暮れていました。

当然、帰って来て母から激怒「何で黙って返ってきたの!」とこっぴどく叱られましたが、それでも我が家にたどり着いた瞬間、そのときの安堵感はなんともいえませんでした。こんな失踪事件があってからは、彼とは少し距離をとりながら仲の良い友達とはいきませんが、今では彼は立派な仕事をしているいとこ同士として付き合っております。