久しぶりに「風邪の効用」を読み直しております。
是非、みなさんに読んでいただきたい一冊なのでご紹介します。
以下、本文引用
健康な体というのは弾力があるのです。伸び縮みに幅があるのです。 ところが、
その人のいつも使い過ぎている場処、これを偏り疲労部分と言いますが、そうい
う使い過ぎというのは偏り運動ですから、偏り運動のいつも行なわれている処は
偏り疲労が潜在してくる。 自分では感じないけれども、触れると硬くなって、筋肉
の伸び縮みの幅が非常に狭くなっている。 ごく狭くなったのが年を取った状態、
もっと狭くなったのはお墓に入った状態、 つまり死んでしまうともう弾力がなく
なってしまう。人間はだんだん弾力を失って死ぬのです。だから死ぬまでズーッ
と見ていても、たいていの人は順序通りで、特別急に死んだというようなことは
ないのです。 ~「体の鈍り」より~
ところが風邪を引くと、鈍い体が一応弾力を回復するのです。 だから血圧が高
い人は血圧が低くなってくる。 血圧が低くなるというよりは血管が柔らかくなって
くる。 血管にも弾力性というものがあって、 体の中の血管の弾力がなくなって
血管が硬張ってくる、 すると破れやすい。 つまり弾力があるうちは血圧がいくら
高くとも破れないが、血管の弾力がなくなると破れてしまう。 だから血圧という
よりむしろ血管の硬化といいますか、血管の弾力状態の方が問題である。 まぁ、
これは血管だけでなく、人間の体中、或は心も含めて人間全体の弾力性というも
のを失わないように生活すれば、 突然倒れるとかいうようなことはないわけです
が、もし硬張ったとしても風邪を引くと治ってしまう。
だから、 体を使っているうちに、 或る一部分が偏り疲労の潜在状態になって、
そういう部分の弾力性が欠けてくると風邪を引き、風邪を引いた後、回復してく
る。 それで私は風邪は病気というよりも、風邪自体が治療行為ではなかろうかと
考えている。 ただ風邪を完全に経過しないで治してしまうことばかり考えるから、
ふだんの体の弱い処をそのまま残して、また風邪を引く。 風邪を引く原因である
偏り疲労、もっと元をいえば体の偏り運動習性というべきものですが、その偏り
運動習性を正すことをしないで、いつでも或る処にばかり負担をかけているから、
体は風邪を繰り返す必要が出てくる。 それでも繰り返せるうちは保証があるが、
風邪を引かなくなってしまったら、もうバタッと倒れるのを待つばかりである。
~「偏り疲労と風邪」より~
以上、引用終わり
昭和37年に出版された本なのですが、整体で語られることは知識ではなく、観察
と実体験による経験的な結果なので、平成の現在でも、誰もが体験を通じて実感でき
ます。
この「風邪の効用」をまず読んでいただき、ご自分の体を使って 「体は自然に完全に
できている」ということを風邪を通じて感じ学んでいただければと思います。
ちくま文庫 「風邪の効用」 野口晴哉 著