壮絶な夜を越え

朝には、意識が朦朧として
しゃべることも もちろん食べることも出来ず
経口の薬も中止になり

見えているのかいないのか目を半分開けて
苦しい息をするだけの母。


でもその時はまさか
その日に、母が逝ってしまうなんて思いもしてませんでした。


でも看護師さんは、わかっていたのでしょうね。
「今日もお姉さん面会に来られるよね。」と私に確認してきました。
「はい」と私。
いつもお昼過ぎに来るから、今日もそれくらいになれば
来るだろうと思いました。


けど、姉に今日も来るようにと 一応念を押しておこうと
スマホをとると

スマホが壊れていました。

それも本当に突然。
ほんの少し前まで、普通に使えていたのです。


暗証番号を入れても入れても
壁紙のネギが出てくるだけで
他には何も出ないのです。
で、また暗証番号の画面に戻ってしまいます。

なんどやっても
ネギの壁紙と暗証番号の画面を行ったり来たり・・・


スマホが使えないとなると
万一の時に誰にも連絡がとれない!と
ものすごく焦りました。
ウニを入院させている病院からの万一の電話も受けられないし
家で なしゃんにんタマをみてくれているPちゃんAにも
連絡がとれなくなります。


で、
公衆電話から姉に電話をして
「auにいってくるから、お母さんを見てて」と

普段
昼過ぎに来る姉を
朝9時過ぎには病院に来させました。


が・・・・・
姉が来るとほぼ同時に
スマホは
まるで何事もなかったように直ってしまいました。


auに行くこともなくなった私と そして姉は
9時ごろからずっと母のそばに座っていました。


そして、10時34分に母の心拍が0になりました。


姉と私が
「お母さん、お母さん」
「大好きだよ ありがとう お母さん  
 また会おうね お母さん」と
呼びかけると

母の心拍がいったん38になりました。
その間、二人で たくさんたくさん呼びかけました。


しばらくすると、また母の心拍は0になり
そのままもう戻ることはありませんでした。



その時は 無我夢中で気付きませんでしたが

お母さんは、私のスマホで姉を呼んだんだ

と思いました。
すごいね お母さん。



そのスマホは、今日も いつもどおり使えています。
何事もなかったように。