林修の金曜旬語録
蓮實先生は「伯爵夫人」という作品で三島由紀夫賞を受賞しても、
喜ばず、はた迷惑だと仰ったのは、先生はおそらく、
もっと若い方 これからの方が飛躍していくきっかけになるような、
そういう受賞の方が良かったんではないかなと思われたんじゃないでしょうかね。
その受賞作「伯爵夫人」は冒頭から蓮實ワールド全開です。
傾きかけた西日を受けて ホニャララとまわっている………と一文で一気にいくんです。
そして この空欄にはある擬音語が入ります。
回転扉がまわる音なんですけれども、普通考えたらこんな擬音は絶対選ばないです。
さあ お考えください。
ぱっと浮かんだのは…
どうぞ 新井さん。
ぬるり ぬるり
そんな ぬるい作品ではないです これ。
ぐわん ぐわん
ぐわん ぐわん 。 んー 違いますね。
ナレーター 林先生が尊敬してやまない蓮實重彦さんが使った擬音語とは?
なぜ、冒頭にこんな長い文章を用意したのか、これも全部計算ずくですよ。
正解は ばふり ばふり
えー? これ無理だわ。 これは難しいわ。
小説作品の冒頭は、特に一流作家であれば命がけで魂込めて書くんですよ。
へえー 。
このばふり ばふりはね、作品全体をずーっと貫いて響き続ける音なんです。
だからお読みください。そうすると意味がお分かりになると思います。
つ づ く・・・