異文化 でも伝わる!! | テルミドール革命!

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麻布へ出向していた頃、とても気に入ったお店がありました。


いわゆる立ち飲みバーでしたが

ワインが中心で カジュアルでお洒落なお店です。


この日も仕事の帰りに一杯飲みながら

先輩と待ち合わせをしていた時に

カウンターで一人のお客さんと隣になりました。


初老の男性で飲みながら少しお話をしました。



温和そうな紳士でしたがしかし

どうにも会話がはずまない。


言葉は丁寧なのですが、ご自分の思ったことだけを話すんですね。

初めて会った方に薀蓄とか話されてもこちらもどう返事してよいものか。

適当な相槌を打つのが精一杯でした。



飾らないお酒の席ですから、

何を話してもいいといえばいいんですけれどね。


結局20分もしないうちに会話が止まってしまい

気まずい空気のままその紳士は帰って行かれました。






先輩が来ないので2杯目を頼んだところに

また隣にお客様が来ました。


先ほどの方と同じような初老の紳士です。

・・・が今度は外国の方でした。


「何を見ているのですか?」


英語です。


英語です。


私は英会話なんてサッパリです。

文法なんて全く忘れてしまった。


老紳士は私が見ているテレビモニターを指さしながら

ゆっくりもう一度言いました。


「何を見ているのですか?」


老紳士のジェスチャーと簡単な単語で私にも理解はできました。

けれど何て返事をすればいいかわからない!

エートエート アイ ルッキング? てれびじょん?

あ テレビジョンはわかるよね・・・汗汗


焦った私の口から出たのはとても簡単すぎる単語


「ベースボール」


見りゃわかる。

テレビには豪快に三振する巨人軍が写っている。


まともな文章が出来ず内心焦っていると

目の前の紳士はにっこりと笑って言った。


「日本人は野球が好きですね。

私は好きではないな、だってアメリカのスポーツだからね。

私はあっちが好きさ」


ともうひとつのテレビを指した。

大きめのモニターにはサッカーの中継。


老紳士は喋っているのは英語。

日本語を全く挟まないフルイングリッシュだ。

でも分かる単語を拾っていくだけで 彼の言っていることが理解できる。


しかしこの後なんと返せばよいのか。

アメリカのスポーツが嫌いってコトはヨーロッパの方かな?


「Whre did you come from?」


ようやく私の口からマトモな英語が出てきた。

たぶんこれ以上難しい文法は使えそうにない。


しかし文法が合っているかどうかなんて問題ではない。

大事なのは伝えたい気持ちが現せているかどうかだ。


紳士はにっこりと「England」と答える。


私もにっこり「Englaid!」と返す。

サッカーの中継はイギリスの試合だ。


紳士は英語のまま続けました。

「あの試合(野球)は何の試合ですか?」


野球は嫌いだと言っていたのに、私に話を合わそうとしてくれています。

「日本のチャンピオンを決める試合です。ジャパンシリーズ」


私の答えにさらに

「どことどこのチームですか?」

「東京ジャイアンツと仙台イーグルス」

「ああ仙台!仕事で行ったことがあるよ。とても寒かった!」

「イギリスの方がもっと寒いでしょ!」

と 二人で大笑い!






それからそのイギリス紳士とたくさんの話をしました。


紳士は経済学者で大学で教えている。

私はカメラマンで大学のときヨーロッパ史をやっていたこと。

イギリスの話。

日本で困った話。


すべて英語で。



難しい文法も単語も必要ない。

知っている単語だけで十分。


必要なのは 相手に伝えようとする思い。

相手と会話したいという思いなのだ。


さっきは日本人と日本語だったのに

まったく会話が弾まなかったのに。




日本語だろうと英語だろうと

伝えようとする力は何より強いんだなと実感した夜でした。