私はマーケティングをしている仕事柄、人間の理性的な側面だけではなく、本能や直感に興味があり、英国在住時代は、進化論の権威であるリチャードドーキンスの講義を聞きに行くほどのダーウィニストでもあります。

 

人間の購買行動は理性的な側面ではなく、本能や直感で完結しているという認識は思い返すと誰でも持っている認識ではないでしょうか。

私自身の購買行動を思い返しても例えばコンビニでビールを購入する場合、無意識に好きなビールに手が伸びている場合が多いです。

合コンなんかで女の子を見る時も、本能や直感でしょう。

ノーベル経済学賞を受賞したダニエルカーネマンは、その著書、First and Slowで、これを「速い思考」として、人類数100万年の歴史の中で、生きていくための必須の思考としており、現代人も基本的にはこの数100万年で培われたいわゆる癖のようなものに支配されいてると言っています。

さて、そんな中、「すごい進化」は、昆虫の生態を追いながら「一見不合理に見える生物の振る舞いに進化上の合理性があることを」を突き詰めていく、すごい本です。

 

例えば、本には出てきませんが、なぜ「車酔い」が起こるのでしょうか。

これは、現代のサバンナと同じ環境で人類が暮らしていた数100万年の間、神経毒がある植物を食べても生き残るための進化上の機能として必要だったからという説が有力です。神経毒を食べると三半規管が反応し、頭がクラクラします。それを感知し、「吐く」という反応ができる個体が生き残ってきたと言えます。

車酔いは、車に揺られた三半規管の反応を「神経毒」だと判断し、「吐く」行為に繋がるものなのです。

 

さて、本書のハイライトは「有性生殖」はなぜ必要なのか?を新しい理論で説明するところです。有性生殖は「種の保存」という側面からは非常のコストが高く付く(無性生殖であれば、パートナーを見つける必要もないし、オスだけではなくメスも生まないといけないので、2倍のコストがかかると言われている)。

にもかかわらず、地球上のほとんどの種は有性生殖なのです。これはなぜ男が必要なのかという問いにもつながる進化生物学上の大問題と言われています。

 

仮説として「赤の女王仮説」や「遺伝子シャッフル説」などいろいろありますが、どれも2倍のコストを説明できる内容ではありません。

 

本書の仮説では、有性生殖は「求愛のエラー」により生じた結果であると結論付けています。つまり、たまたま生じた有性生殖のオスと無性生殖のメスがいる世界で、無性生殖のメスは当然、コストがかかる有性生殖を嫌がるので、オスから逃げます。しかし、オスがこのバリアを突破してしまえば、少数派のオスはハーレム状態となり、たくさんのメスと交尾することで有性生殖勢力が大きくなります。

 

このようにして結果として有性生殖にロックインされたシステムとして現代の私たちの世界はあるのです。

 

だとすると元々不要だったオスが、現代では資源を不平等に配分する権力を持つことで、社会に君臨している(割合が多い)というのはなんとも不思議で、一方、消費の観点から見ると、女性の強さは説明しやすいと考えました。

 

まとまりがありませんが、本当に面白い本なのでオススメです。