「もっと」 作詞・作曲:桜井和寿


悲しみの場所に灯された裸電球に似た光

それはほら吹きに毛の生えた にわか詩人の蒼い願い


華やぐ季節がそこまで来てるのに

相変わらず心をどこかに置いたまま


暗い目をしてたって

この星のリズムは

君に笑顔を降らすから

きっと きっと きっと


ヘッドフォンで塞いだはずの理由のない孤独な叫び

やわな手足をもぎ取られたバッタみたいにもがく思い


世界は誰にでも門を開いて待っている

平等の名の下に請求書と一緒に


そんな理不尽もコメディに見えてくるまで

大きいハート持てるといいな

もっと もっと もっと

もっと もっと もっと



夜ごとの花火はもう上がらなくていい

心に消えない光が咲いているから


暗い目をしてたって

この星のリズムは

君に笑顔を降らすから

きっと きっと きっと


どんな理不尽もコメディーに見えてくるまで

大きいハート持てるといいな

もっと もっと もっと

もっと もっと もっと



HOME/Mr.Children



「とあるコメディアン」 感・想・文・FRAGILE


これは、とあるコメディアンの話。

コメディアンは人を笑わせるのが仕事。
たとえ、自分がどんな悲しみを抱えていようと人を笑わせなければいけない。

彼は小さいころから人を笑わせることが好きだった。

お調子者でクラスの人気者の彼の周りには、笑いが絶えなかった。

彼が笑いを好きになった理由ははっきりしていた。

それは彼の両親の仲が悪くケンカが絶えないことに原因があった。笑いのない家族だった。

周りからはいい家族って言われていたが、彼は周りの大人なんて何もわかってないことを悟った。

彼の両親は、いつしかケンカもしなくなり、同居している他人になっていった。

父親の帰りは遅く、母親とふたりきりで食事をするのが日常で、暗く沈んだ母親をなんとか笑顔にできないかと幼心に知恵を絞った。

そこで出会ったのがお笑いだった。お笑い番組をたまに見ては母親は笑ったりしていたから。

それからというもの、食卓で母親を笑わせるために彼はいろんなことをした。

母親がお腹を抱えて笑った日、とても嬉しくて、彼はひとり、お風呂場でガッツポーズをした。

小学校の担任から卒業式の日、「いままでみんなを笑顔にしてくれてありがとね。先生も元気をもらったわ」と言って、まだ背が小さかった彼の頭を軽く撫でた。

彼はその言葉を胸に刻んだ。

その年の暮れ、両親は離婚した。

母親に引き取られた。

中学生活も彼は笑いでたくさんの人を笑わせた。

高校のときには、コンビを組み学園祭で漫才やコントを披露して見せた。
高校でも人気者だった。
「絶対、芸人になれるよ」
そんな軽はずみな言葉が、彼に夢を与えた。


お笑いで食べていきたい、そう思った。


高校2年のことだった。

その年の12月、母親が再婚した。

彼は高校を卒業した後、お笑いの養成所に入った。


家に居場所のなかった彼は逃げるように家を出た。


ある日、友人との飲み会で、女の子に一目ぼれした。


彼女は年上で美容師の卵。小柄の割に豪快にお酒を飲む子だった。


彼女はお笑いが好きで、気が合った。


付き合いはじめて、数ヵ月後、彼女のアパートに転がり込んだ。


彼はお笑いでたまに舞台に立ちながら、バイトの日々。


彼女は美容師として働く日々。


あっという間に月日は流れていった。


いつものように部屋で髪を切ってもらっていた。

彼は部屋で彼女に髪を切ってもらう事が好きだった。


その日はなぜだか彼女の口数が少なく、彼はいつも以上に口数が多くなった。


突然、彼女が口を開いた。

「…いつまでお笑い続けるの?」

「え?」

「このままでいいのかな?」

「どうした?」

「…なんだか先が見えないよ」


外はどんよりとした曇り空だった…。


数日後、僕は荷物をまとめて彼女の部屋を出て、以前一緒に暮らしていた相方の家へ久しぶりに行った。


悪いことは続くもので、相方の部屋で飲んでいる時、急に真面目な顔つきになり泣き出し、お笑いをやめようと思うと言われた。


安定した仕事について、普通の生活をしたいと言われ、彼は強く相方を引きとめることができなかった。


家族を失い、彼女を失い、相方を失い、彼はお笑いだけになった。


彼はひとり舞台に立った。


思い切り滑った。


笑わせてるのではなく、笑われていた。


観客の憐れむような目が、彼を叩きのめした。



その日は漫画喫茶に泊まった。


ヘッドフォンをしてTVを見ていた。


ネタで真剣に勝負する番組だった。


いつのまにか彼は笑っていた。


静かな場所だと気付き、口を押さえて笑いをこらえた。


まんまと笑わされていた。


悔しかった。おもしろかった。


こんな風になりたいと強く思った。


お笑いが好きだと強く思った。


彼は漫画喫茶の個室でひとり、いままでのことを思い出していた。


それから数年経った。


彼はいまもピンでお笑い芸人を続けている。


売れているとは言えないが、それなりに仕事ももらえている。


いつも彼はカバンに2通の手紙を入れている。


父親と母親、2人からの手紙。


父も母も新しい家族がいる。子どももいるらしい。


彼の出た番組をたまたま見たらしく、手紙をくれた。


彼の家族は、それぞれにまったく別々の道を歩んでいる。会う事もない。


だけどいま、彼の家族はあの頃にはなかった「笑い」で繋がっていた。



コメディアンは人を笑わせるのが仕事。


たとえ、自分がどんな悲しみを抱えていようと人を笑わせなければいけない。


彼は今日も人を笑わせるために舞台に立つ。



悲しみも笑いに変えて…





↓ランキング参加中!応援よろしくお願いします↓


人気ブログランキングへ 人気ブログランキングへ

にほんブログ村にも参加しました!

↓こちらもクリックお願いします↓

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村



TREviewクチコミblogランキング参加中!評価クリックお願いします!

↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
素晴らしい すごい とても良い 良い