米Pfizer社が開発した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬、「パキロビッドパック」(一般名:ニルマトレルビル錠/リトナビル錠)について、2022年2月10日、厚生労働省が特例承認しました。

 

重症化リスク因子を有する軽症から中等症IのCOVID-19患者のうち、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児を対象としている。1日2回、5日間連続で、ニルマトレルビルを2錠とリトナビルを1錠服用する。ニルマトレルビルは新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のメインプロテアーゼ(3CLプロテアーゼ)を阻害することにより、ウイルスの複製を抑制するとされている。リトナビルはSARS-CoV-2に対する抗ウイルス活性を示さず、ニルマトレルビルの主要代謝酵素であるCYP3Aの阻害作用を有し、ニルマトレルビルの血漿中濃度を維持する。

 

治療薬についても、服用は自己責任でありますので、どの様なお薬なのか一応目を通してみました。気になったところを赤字にしています。青字は感想です。

抜粋して掲載しますが、ダウンロードして一通り目を通すことをお勧めします

 

令 和 4 年 2 月 1 0 日 医薬・生活衛生局医薬品審査管理課

パキロビッドパック 審議結果報告書   

[販 売 名] パキロビッドパック     
[一 般 名] ニルマトレルビル、リトナビル
[申 請 者 名] ファイザー株式会社
[申請年月日] 令和4年1月14日
 

特例承認に係る報告書
令和 4 年 2 月 7 日  独立行政法人医薬品医療機器総合機構
[販 売 名] パキロビッドパック
[一 般 名] ニルマトレルビル、リトナビル
[申 請 者] ファイザー株式会社
[申請年月日] 令和 4 年 1 月 14 日
 

ニルマトレルビル(以下、「本薬」)は、Pfizer Inc.により創製された SARS‑CoV-2 のメインプロテアーゼ(Mpro、3CL プロテアーゼ又は nsp5 とも呼ばれる)阻害剤であり、ポリタンパク質の切断を阻止することにより、ウイルス複製を抑制する。また、リトナビル(以下、「RTV」)は、SARS-CoV-2 に対する抗 ウイルス活性を示さないが、本薬の主要代謝酵素である CYP3A の阻害作用を有するため、本薬の血漿 中濃度を維持する目的で併用される。本邦において、RTV を含有する薬剤として、ノービア錠 100 mg、 カレトラ配合錠及び同配合内用液が承認されている。なお、本品目は本薬及び RTV を併用することで薬 効を期待するものであることから、海外において、本薬及び RTV の錠剤が一つのブリスターシートに同 梱された製剤として流通しており、特例承認に係る承認申請にあたり、海外の流通品を本邦においても 流通させるため、1 品目として承認申請された

 

—--※参考資料 1------
国立研究開発法人理化学研究所
国立研究開発法人日本医療研究開発機構
SARSウイルスの巧みな戦略―プロテアーゼの特殊な基質認識―
理化学研究所(理研)構造生物学研究室の村松知成研究員と横山茂之上席研究員らの研究チーム※は、「重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス[1]」の主要なペプチド結合加水分解酵素「3CLプロテアーゼ[2]」が基質(酵素が作用する物質)を認識する際に示す新たなアミノ酸配列特異性を発見しました。

SARSコロナウイルスはヒトの細胞に感染すると、自己複製のために必要なさまざまなタンパク質を合成します。その中には2種類の巨大なポリタンパク質があり、それぞれ1本のポリペプチド鎖(アミノ酸がペプチド結合でつながったもの)の中に複数のさまざまな酵素類を含んでいます。それら酵素の一つ、プロテアーゼ[2]はペプチド結合(-NH-CO-)の切断を通じて、さまざまなタンパク質のN末端[3]やC末端[3]を正しく形成する重要な働きをしています。この反応に関わる主要な3CLプロテアーゼはポリタンパク質の一部のため、自己の持つ酵素活性により切り出されて成熟型(活性型)となります。この作用を「自己プロセシング」と呼びます。自己プロセシングを機能させるために、3CLプロテアーゼは基質のポリタンパク質の中で自己のN末端側とC末端側の切断点付近のアミノ酸配列を厳密に認識しています。
—--ここまで-----
 

—--※参考資料 2------

ノービア錠100mgの添付文書
商品名:ノービア錠100mg
一般名:リトナビル
略称 :RTV

—--ここまで-----

 

HIV感染症のお薬ですが、この他にもいろいろと注意書きがあり、投与はかなり慎重に行う必要があるようです。

今回の申請では、パキロビッドパックとリトナビルと併用して、1品目となっているとの事なので、投与にあたっては相当制約と言いますか、難しい薬だと思われます。

効果についてはそれなりに有るとは思いますが、安全性についてはどうでしょうか。

 

2.1 国際共同第Ⅱ/Ⅲ相試験(C4671005 試験<2021 年 7 月~継続中(2021 年 10 月データカットオフ)
>)

18 歳以上の SARS-CoV-2 による感染症患者[目標例数 3,100 例(各群 1,550 例)7)]を対象に、本薬及び RTV 併用投与時の有効性及び安全性を検討することを目的として、プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験が、米国、ブルガリア、メキシコ、インド、ウクライナ、日本等の 20 の国又は地域 322施設で実施された。

重篤な有害事象は、本薬及び RTV 併用群 13 例[COVID-19 肺炎 4 例、COVID-19 2 例、動悸、胸部不快感、膿瘍、肺炎、敗血症、腎クレアチニン・クリアランス減少、ヘモグロビン減少、酸素飽和度低下、顔面麻痺及び呼吸困難各 1 例(重複あり)]、プラセボ群 46 例[COVID-19 肺炎 21 例、COVID-19 及び肺炎各 7 例、急性呼吸不全 4 例、低酸素症 3 例、腎クレアチニン・クリアランス減少、呼吸困難、肺臓炎各 2 例、直腸出血、異型肺炎、頭蓋脳損傷、眼外傷、手骨折、交通事故、手首関節骨折、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加、大腸腺腫、急性呼吸窮迫症候群、間質性肺疾患及び呼吸不全各 1 例(重複あり)]に認められた。このうち、本薬及び RTV 併用群 1 例[動悸、胸部不快感及び呼吸困難各 1 例(重複あり)]は治験薬との因果関係が否定されず、転帰はいずれも回復であった。

 

 

3.2 安全性について
国際共同第Ⅱ/Ⅲ相試験(C4671005 試験)における安全性の概要は表 8 のとおりであった。中間解析において、プラセボ群と比較して本薬及び RTV 併用群において、有害事象、重篤な有害事象、死亡に至った有害事象及び投与中止に至った有害事象は発現割合が高い傾向は認められず、副作用は発現割合が高い傾向が認められた。中間解析において、プラセボ群と比較して本薬及び RTV 併用群で発現割合が高い傾向が認められた主な有害事象及び副作用18)は味覚不全、下痢及び嘔吐であり(2.1 参照)、味覚不全及び下痢はいずれも非重篤かつ転帰は回復、嘔吐はいずれも非重篤かつ転帰は軽快又は回復であった。
本薬及び RTV 併用群において死亡に至った有害事象は認められず、重篤な有害事象 1 例(動悸、胸部不快感及び呼吸困難)、投与中止に至った有害事象 7 例[悪心 4 例、嘔吐 3 例、動悸、大腸炎、下痢、胸部不快感、筋肉痛、浮動性めまい、味覚不全、呼吸困難、斑状丘疹状皮疹各 1 例(重複あり)]は治験薬との因果関係は否定されず、転帰は軽快又は回復であった。また、中間解析後に実施された解析において、中間解析と比べて安全性プロファイルが大きく異なる傾向は認められなかった。

日本人における安全性について、国際共同第Ⅱ/Ⅲ相試験(C4671005 試験)における情報(2.1 参照)に加えて、健康成人を対象とした海外第Ⅰ相試験(C4671001 試験)に組み入れられた海外在住日本人19)において、有害事象は本薬及び RTV 併用群 4/4 例[腹部不快感、上腹部痛、下痢、疲労、転倒、血中甲状腺刺激ホルモン増加、味覚不全及び不眠症各 1 例(重複あり)]、プラセボ及び RTV 併用群 2/2 例[疲労、医療機器使用部位刺激感、血中甲状腺刺激ホルモン増加及び四肢痛各 1 例(重複あり)]に認められ、本薬及び RTV 併用群 2 例(血中甲状腺刺激ホルモン増加及び味覚不全各 1 例)、プラセボ及び RTV併用群 1 例(血中甲状腺刺激ホルモン増加)は治験薬との因果関係は否定されず、転帰はいずれも回復であった。死亡に至った有害事象、重篤な有害事象及び投与中止に至った有害事象は認められなかった。

以上を踏まえ、本剤の安全性について、日本人における本剤の投与経験は極めて限られていることから、明確に結論付けることは困難であるものの、米国 Emergency use authorization の FACT SHEET も参考に、添付文書において以下の点等について注意喚起を行うことで本剤の安全性リスクは管理可能と考える。また、本剤の日本人における安全性について、製造販売後も引き続き情報収集し、新たな知見が得られた場合には速やかに医療現場に情報提供する必要がある。

・国際共同第Ⅱ/Ⅲ相試験(C4671005 試験)における有害事象及び副作用の発現状況を踏まえ、味覚不全、下痢、嘔吐等について、添付文書において注意喚起を行う必要がある

・ 本邦において既承認の RTV 含有製剤(カレトラ配合錠及びノービア錠 100 mg)は、本剤と投与対象(HIV 感染症患者)、投与量、配合薬の有無20)や投与期間(長期投与)が異なるものの、RTV 含有製剤の添付文書において共通して重大な副作用とされている事象のうち、中毒性表皮壊死融解症及び皮膚粘膜眼症候群については、投与対象、投与量や投与期間に関わらず発現する可能性が否定できないこと、肝機能障害については、本剤の米国 EUA の FACT SHEET において RTV に関連して記載されていることから21)、本剤の添付文書において注意喚起を行う必要がある。なお、RTV 含有製剤の添付文書において共通して重大な副作用とされているその他の事象(高血糖、糖尿病及び出血傾向)については、HIV 感染症の患者背景や長期投与等とも関連する可能性のある事象であり、SARS-CoV-2 による感染症患者における発現リスクは高くはないと考えられるものの、本剤の重要な潜在的リスクと設定し、製造販売後に引き続き発現状況について確認し、新たな情報が得られた
場合には添付文書を改訂する等、適切に対応する必要がある。

・本剤に含まれる RTV は CYP3A の強い阻害活性を有すること等から、本剤は多くの薬剤と相互作用を生じる可能性があり、既承認の RTV 含有製剤も参考に本剤の添付文書において併用禁忌及び併用注意となる薬剤について注意喚起を行う必要がある。また、本邦において RTV は HIV 感染症の治療薬として承認されているが、本剤が SARS-CoV-2 による感染症に対して承認された場合、より多くの医療機関において投与されることになることから、本剤投与時の相互作用リスクや患者の使用薬剤の確認の重要性について医療現場に周知すると共に本剤の相互作用が容易に理解されるよう適切に情報提供する必要がある。なお、本剤とミダゾラム(CYP3A の基質)等との臨床薬物相互作用試験が実施中であることから、新たな知見が得られた場合には、適切に医療現場に情報提供する必要がある。

 

—--※参考資料 2------
医療用医薬品 : ミダゾラム
効能効果
麻酔前投薬・全身麻酔の導入及び維持・集中治療における人工呼吸中の鎮静
歯科・口腔外科領域における手術及び処置時の鎮静

併用禁忌:13品目 併用注意:24品目 あり

副作用
副作用発現状況の概要
本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していない

重大な副作用及び副作用用語
重大な副作用
(頻度不明) 
アナフィラキシー・心停止・心室頻拍、心室性頻脈・悪性症候群(Syndrome malin)
—--ここまで-----
 

 

事 務 連 絡 令和4年2月 10 日
厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部
医薬・生活衛生局総務課

新型コロナウイルス感染症における経口抗ウイルス薬(パキロビッド®パック)の医療機関及び薬局への配分について(承認直後の試験運用期間)

本剤の有効性・安全性に係る情報は限られていること等を踏まえ、添付文書に記
載の「重症化リスク因子を有する等、本剤の投与が必要と考えられる患者」の考え
方としては、

①日本感染症学会の「COVID-19 に対する薬物治療の考え方 第 13 報」(2022 年2月10 日)の以下の記載
・60 歳以上
・BMI 25kg/m2超
・喫煙者(過去 30 日以内の喫煙があり、かつ生涯に 100 本以上の喫煙がある)
・免疫抑制疾患又は免疫抑制剤の継続投与
・慢性肺疾患(喘息は、処方薬の連日投与を要する場合のみ)
・高血圧の診断を受けている
・心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中、一過性脳虚血発作、心不全、ニトログリセリ
ンが処方された狭心症、冠動脈バイパス術、経皮的冠動脈形成術、頚動脈内膜
剥離術又は大動脈バイパス術の既往を有する)
・1 型又は 2 型糖尿病
・限局性皮膚がんを除く活動性の癌
・慢性腎臓病
・神経発達障害(脳性麻痺、ダウン症候群等)又は医学的複雑性を付与するその
他の疾患(遺伝性疾患、メタボリックシンドローム、重度の先天異常等)
・医療技術への依存(SARS-CoV-2 による感染症と無関係な持続陽圧呼吸療法
等)、等
 

②承認審査における評価資料となった国際共同第Ⅱ/Ⅲ相試験[C4671005(EPIC-HR)試験]の組み入れ基準、新型コロナウイルス感染症に係る国内の主要な診療ガイドラインである「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第 6.2 版」」(令和4年1月 27 日)(下表)が想定されます。
これらのいずれかを有する者であって、医師が必要と判断した者については、本剤
の投与対象になり得ると考えられますので、投与に当たって参考にしてください。

 

Q&Aから抜粋

 

12歳以上かつ体重40Kg以上から服用できるようですが、高齢者で重症化リスク因子がある患者さんは既往症があったりして服薬している事もあるかと思います。効果はそれなりに有るのでしょうが、併用禁忌や併用注意の薬が多いので、既往症のある方などは、相当に注意が必要かと思うと、医師の判断は大変でしょうね。

 

既往症のある人や、服薬している人は、事前に自分の飲んでいる薬を確認しておいた方が良いかもしれません。

 

 

HIVの薬と併用であったり、副作用などについてもまだデータが足りていない状況です。健康であればコロナに感染しても、重症化リスクは小さいと思われますので、処方される場合は慎重に判断したいと思います。特に安全性が確認されていない妊婦さんや、ほぼ重症化しない子供気をつけて欲しいです。

 

 

過去記事もご覧ください