政府の経済政策の失敗と、それを見直すこと無く、失策をさらに推し進めて来たために、30年あまりデフレが続き、経済成長出来ず貧富の差は拡大し続け、国民総貧困化へと進んでいます。今回はその失策のひとつと思われる「生活保護」の制度と、先日行われた岸田総理の「施政方針演説」について、思うことを書いてみました。

 

現行の生活保護制度は給付水準がかなり高めに設定されており、生活保護者たちを「働かせる気がない」といえる。ここでは、どうすれば改善できるのかについて、前日銀副総裁・岩田規久男氏が解説する。※本連載は、書籍『「日本型格差社会」からの脱却』(光文社)より一部を抜粋・再編集したものです。

夫婦2人・子1人(夫33歳、妻28歳、子供4歳)で東京都区部に居住する場合の最低生活保障水準は月額約23万円、年額約276万円(生活扶助に住居扶助を含む)である(厚生労働省資料より)。

しかも、社会保険加入はほぼ免除され(介護保険は生活保護費から保険料を拠出している)、医療費は全額補助される。働かずに、これだけの最低生活保障を受けられるなら、ワーキングプアよりも生活保護世帯になったほうがはるかに生活水準は上昇する。

 

財政(緊縮財政)と税制を含めた経済政策の失敗が主因であることを認識し、連動する全ての制度、仕組みを改善しない限り、この報道のようなおかしな事を解消することは難しいと思われます。

この報道の中で著者は、「生活保護」の在り方についての改善策を提案しています。しかし、それでは真の解決にはなっていないと思います。
なぜ生活保護に陥ってしまうのか。なぜ、保護を受ける方が、働くよりも楽になってしまうのか。という根本的な問題が解決されなければ成りません。

ここで最大の問題は労働者の低賃金化と、企業側の雇用形態が非正規雇用にシフトされ、収入が安定しなくなったことだと思います。
なぜ、そうなったのか? それは1990年代から始まった新自由主義による株主資本主義の導入。それに伴う税制、制度、構造改革がもたらした結果です。
資本家など資産を持つ人が有利になり、富を増やす一方で、労働力=コストと見做された為に、コスト削減=人権費削減となった事が、全ての元凶であると言えます。

消費税の導入、法人税や金融所得税の減税、社会保険料の仕組みなどの歪んだ税制度。働き方改正(悪)による、正規雇用から非正規雇用へのシフトなどが主因であり、それに伴い少子高齢化、外国人労働力流入による低賃金化の固定化。4半期決算と物言う株主によるコスト=人件費削減と設備投資の減少と、M&Aによる企業解体、技術流出、人材流出、等々。
さらに緊縮財政と身を切る改革により、インフラ整備も滞り災害時の対応もおぼつかなくなり。行政機関のサービスも質が低下してしまいました。

さらには、GDPも伸びないため、国防のための費用も増やせず、隣国が武力増強しても、対抗することも難しくなって来ています。実際に尖閣諸島では、中共の大型巡視船に対して、海上保安庁の巡視船は大型化出来ずに、小型船での対応を余儀なくされてます。

他にも、経済が停滞してしまったために、北海道を筆頭に土地=国土が外国人や外国資本に買われ続けています。これも国防上の大きな問題です。

話が生活保護からズレてしまっているかと思われますが、ズレていません。これら全ては繋がっているのです。一つの事象だけ見ていても、本質は理解できません。この報道の書き方と提案では、本質が見えてきません。もっと全体を俯瞰して見なければなりません。


このことを踏まえて、先日の岸田総理の施政方針演説を見てみたいと思います。

 

(経済再生)
新型コロナとの闘いに打ち克ち、経済を再生させるため、令和3年度補正予算の早期執行など、危機に対する必要な財政支出は躊躇なく行い、万全を期します。
経済あっての財政です。経済を立て直し、そして、財政健全化に向けて取り組みます。

(新しい資本主義の実現)
経済再生の要は、「新しい資本主義」の実現です。
市場に依存し過ぎたことで、公平な分配が行われず生じた、格差や貧困の拡大。市場や競争の効率性を重視し過ぎたことによる、中長期的投資の不足、そして持続可能性の喪失。行き過ぎた集中によって生じた、都市と地方の格差。自然に負荷をかけ過ぎたことによって深刻化した、気候変動問題。分厚い中間層の衰退がもたらした、健全な民主主義の危機。
世界でこうした問題への危機感が高まっていることを背景に、市場に任せれば全てがうまくいくという、新自由主義的な考え方が生んだ、さまざまな弊害を乗り越え、持続可能な経済社会の実現に向けた、歴史的スケールでの「経済社会変革」の動きが始まっています

成長戦略では、「デジタル」、「気候変動」、「経済安全保障」、「科学技術・イノベーション」などの社会課題の解決を図るとともに、これまで、日本の弱みとされてきた分野に、官民の投資を集め、成長のエンジンへと転換していきます。

賃上げ税制の拡充、公的価格の引き上げに加え、中小企業が原材料費の高騰で苦しむ中、適正な価格転嫁を行えるよう、環境整備を進めます

(人への投資)
第二に、「人への投資」の抜本強化です。
資本主義は多くの資本で成り立っていますが、モノからコトへと進む時代、付加価値の源泉は、創意工夫や、新しいアイデアを生み出す「人的資本」、「人」です。
しかし、わが国の人への投資は、他国に比して大きく後塵(こうじん)を拝しています
今後、官民の人への投資を、早期に、少なくとも倍増し、さらにその上を目指していくことで、企業の持続的価値創造と、賃上げを両立させていきます。

人的投資が、企業の持続的な価値創造の基盤であるという点について、株主と共通の理解を作っていくため、今年中に非財務情報の開示ルールを策定します。
あわせて、四半期開示の見直しを行います。

今春、新しい資本主義のグランドデザインと、実行計画を取りまとめます。

 

ツッコミどころは満載なのですが、今回は経済政策だけを見てみます。他のところについては後日書くかもしれません。

コロナとか脱炭素などについては、構造的な問題が大きいので無視するとして、気になったところを太字にしました。新自由主義による株主資本主義では駄目なので、新しい資本主義にすると言っていること。官民への人への投資の早期実現、四半期決算見直しなど。方針としては良いのですが、今までの発言を聞いていると、財政再建とPB黒字化目標は堅持するという事や、税制についてもピントがズレていると思われ、どこまで本質を理解しているのか不安要素は多々あります。

かなり懐疑的ではありますが、今春のグランドデザインと実行計画に、ほんの少しだけ期待したいです。
 

 

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