【色彩公演-茶- 『Tea Time Town』】
2013年6月に打たれたお芝居です。
すっごく絵本っぽいお芝居を、何故か英語のタイトルつけて、何故かオフィス街のギャラリーで上演しました。
作品としてのテーマ、暗に伝えたいこと、みたいなのは設定していませんでした。un-callに一貫した、『離別とおぼろげな再会』はあれど、とことん空間のやわらかさを追求した作品です。
元々主宰がカフェ好きで、根本の発想はそこにあったのですが、
一つの席に、今、自分が座っていて、同じ時間に別のカフェで別の人が座っていて、また、別の時間に同じ席に別の人が座ってるのかー、みたいなことをふと考えたのでした。
時間を超えて、同じカフェで、糸電話で繋がった人たち。
一冊の絵本を、そして一人の少女――さゆ――を巡って、互いの意図が交錯します。
描き変えられる絵本。少女の物語。絵本に込められた、父親の想い。
さゆが主役の絵本には、さゆの好きなものが詰め込まれました。
「ゆめのきょうえん。
あったかい毛布。うさぎ。お人形。甘いもの。おひさまの光。すきなひと。」
「紅茶は?」
「あっ、それも。」
元々は、父親が娘のために描いた絵本。
少しの願い――どこかへ行ってしまっても、いつかちゃんと自分の所へ帰って来てくれるように。大切なものが、見つかるように――そんな想いを込めて、絵本はカフェに置かれることになりました。
カウンターの、左から、二番目の、砂糖壺の前の、木目調の椅子の、足元の棚。
そこに置かれていたはずの絵本は、一人の女性によって盗作され、この絵本を介して、過去に生きる人形、未来に生きるうさぎと現在が繋がって行きます。
さゆは、帰る場所を見失い、迷子になってしまいます。
まいご。
合言葉。
「お父さんがいないときは、どうするの?」
「もしそうなったら、大きな声で、『迷子!』と言いなさい。まずは、さゆのところまで飛んでいくから。」
「どこでも?」
「どこでも。」
「絵本の中でも。」
さゆが一番大切にしたかったもの。
それは、何だったのでしょう。
未来に生きるうさぎとは、ミントのことです。
-赤-の世界から飛び出して、このカフェに遊びにきてしまいました。
この物語の中でもまた、頭のおかしい、ふわふわしたキャラクターで生きています。
この、今を、楽しんでいるのです。
このお話は、全て一軒のカフェの中で行われます。
外の世界は、どう想像してもよいのです。
もしかしたら、このカフェの前には、道路を挟んで公園が広がっていて、さらにその向こうには、真っ青な海が、広がっているのかもしれないのです。
『Tea Time Town』
出演
小川美都/さゆ
釜本承子/人形のココ
北澤あや/えほん
田中あかね/うさぎのミント
内藤恭介/ますたー