青い朝の光で、大気に色がついて、ワンルームの白い壁とか、あたしのそんなに白くもない肌とか、黒く影になってる床とか、全部薄青に見える。青い水彩絵の具がついた筆を、水が入ったあの小さい壁みたいなので仕切られてるバケツで洗った時にできる色が、そのまんま大気に流れたのか。お腹が空いた、タバコが吸いたい、コーヒーが飲みたい、あの人の顔、強い眠気、今日は何ゴミの日だっけ、顔の下に置いてる手が痺れて、海から出たあとの足の親指の爪に詰まってる黒い砂、あたしあれの肌色と黒い砂の色が嫌い、色白なのに毛が黒黒としてる男の脚みたいな色の組み合わせでなんか嫌、とめどなくぽつぽつとあれやこれや浮かんでるけど、あたし指の一個も動かせないし、動かしたくないし、目だけ開けてんのか開けてないのかわかんないぐらい開けてる。そしたらあたしが今いちばんやりたいことは、ただこうやってあたしの匂いが染みついてる綿のシーツにうつ伏せになって顔を横に向けて朝の色付きの空気を見てることだと分かって、安心した。妊娠しているかもしれない、べつに忘れてたとかじゃないけど、思考回路の外に追いやられていたみたい、そんなことあるのあたし変になったのかな、この子ども10ヶ月も腹に入れとくのやだな、気持ち悪いし、怖いし、かわいそうだし、もっと他の腹の中がいいんじゃないの、ねえ、珊瑚色の唇とか柔らかい栗色の髪の毛とか、小さくてかわいいんだろうか、栗色はあたしが勝手に想像してみただけ、栗色じゃなきゃ嫌、産みたいか産みたくないのか産めるのか産めないのか、あの男と一緒になるのかならないのか、一緒になれるのかなれないのか、あたしひとりで決められるはずなのに、なんで。噴き出した鍋に慌てて蓋するみたいに思考に蓋、とにかく臭いものには蓋、妊娠って臭いものらしい、そりゃそうだ、動物は漏れなく臭いし、獣の匂いってあたしそんな嫌いじゃない。鳥が鳴いた。鳴いた、というかあたし的には鳥から朝ですよって、知らない言葉で教えてもらった感覚に近い、知らない綺麗な女の人に微笑まれたかんじと似てて、実際綺麗な女の人に微笑まれたことないからこれは嘘なのかな、嘘ってなに、鳥は獣だと思えない。息を吸うのより吐く方に重心が傾いてきて、血管が皮膚に近づいて、耳とか目とかが体の中側に戻っていく、これはあと二、三分もすれば眠りだとわかる、青が流れた空気はほんとうにどこへ行ってしまったんだろう、あたしの目が青かっただけのことか、閃いて終いだ。