土曜日。福岡行きのフライトに乗るのに、16時7分の電車に乗ればいいからと、朝起きてからセブンで紙パックのコーヒーと蒸しチーズパン買って、突撃!カネオくんも途中まで見て、ゆっくり荷造りして、何なら近所に髪の毛も切りに行って、友達へのお土産もみつくろって、やっぱり16時になってしまった。
玄関で慌ててサンダルを履いていると、後ろから「お小遣いあげようか?」と母。1万円を貰い、やったありがとうと言いながら玄関を飛び出す。下手すると電車に間に合わないから、イヤフォンをはめて、早足に追い風がやってくるような曲を選んだ。よっしゃ間に合う、と見通しがついたので、駅のエスカレーターにスーツケースを置てフッと息をついたら、肩を叩かれた。振り返ると母がいた。「もう五千円あげようか?」と。
蒸し暑い町を、私の後ろ姿を追って小走りでやってきたのだろう、疲れた母は小さく見えた。ガラス玉のような母の目を見つめていたら、泣きそうになった。
便利なbluetoothイヤホンを嵌めていたから、母が私の背に何度か呼びかけたであろう声が聞こえなかった。まだ元気だけど、数年前からすっかり物忘れがひどくなってしまった。
だから、思いついたから、そのまま母も私の後を追って飛び出したのだろう。
「五千円あげるね」じゃなくて「あげようか?」って言うのが母らしい。こんな風に胸をしめつけられるような母との思い出は、あと何度私のもとにやってくるのだろうか。
五千円で、福岡で母の好きそうな物をいくつか買って、いつまでも寄りそう娘ではなく、
五千円で、高速バスの片道切符を買って、流れる夜景を見ながら氷結を飲む娘でありた

