医療ネグレクトを視野に入れ、二年間を限度に親権を停止することができる民法改正案が27日、国会で可決成立しました。
※ネグレクトは育児放棄のことです
小さな子供が病気になったとき、子供に代わって手術のについて意思表示をするのは親権者である親ですが、親が宗教上の理由や医療ネグレクトの場合には、親権者の同意がないために手術ができないことがありました。
今までの民法では「親権の喪失(剥奪)」はできましたが、期間の定めがないため、法的な親子関係を一生なくしてしまうことから、裁判所は審理が慎重になっており、若干問題がある法の運用があったのです。
下記のような事例がありました。
子供が患った緊急を要する手術を親が宗教上の理由により承諾せず、このままでは子供は死んでしまうか、重篤な後遺症がのこってしまう事態です。そこで、病院が児童相談所に通報、児童相談所の所長が「ネグレクト」と判断し、権限に基づき家庭裁判所に申立をしたのです。
その緊急性に家庭裁判所が対応した結果、半日で審理を終え、手術は成功し子供が助かった。
親権喪失宣告申立、同保全処分申立、そして親権代行者選任の申立を即日で行なったのです。
※保全処分は簡単に言えば「とりあえずの決定」ということです。
親の親権を喪失させる申立をし、審理には時間がかかるので仮の決定をすることも併せて申立、そして親権を代わりに行使する者を選ぶことを求めたわけです。
なんとかして子供の命を救おうという病院、児童相談所、家庭裁判所の連携で子供の命は助かりましたが、これは法律的には「ウルトラC」といえる保全処分の便宜的用法です。
一時的に親の親権を停止して、手術の承諾を親権代行者が行い、手術の後に申立を取り下げる。おそらく、申立をした児童相談所所長は本当に親権を剥奪しようなんて思っていない、手術を受けさせるためだけだったのでしょう。
こういう法の使い方をしなくてもいいように今回の「親権停止法案」かと思われます。
この保全処分の便宜的用法は、非常にドラマティックな運用ですが、万一、問題が生じたら誰がどう責任を取るのかが疑問点として残ります。
親の立場で考えると、輸血を受けたために子供の魂は安らかになることはありません。親には精神的な苦痛が生じますから、「余計なことを!!」と思うでしょう。
子供は親の所有物ではありませんから、親の都合で命を落とすのは不条理といえます。しかし、宗教という信仰の自由に介入するのは国家のありかたとして問題があるのも事実です。
育児という家庭問題への介入も程度によりますし非常に難しい問題です。
そのような問題を抱合しつつ、今回、成立した法案では、期間を定めて親権を停止することができますので、手術の承諾から、回復期まで親権を停止し、子供に適切な医療を施す事が可能になったわけです。
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